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第149話 報告

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 警備を始めて4日目、緑織達と交代させる為に赤嶺達のところに行ったら報告があった。


「町の北側にさ、なんか変な奴らがいるよ」


 真っ先に駆け寄ってきたのは紫輝だった。


「変な奴ら?」

「うん。そいつらは一度も町に入ってこないんだ。で、町に来る奴らが買った物を運んでるみたい」

「4人ぐらいいると思う」

「おいら達が住んでる森に流れてる川の側にテントを張ってるぞ」


 川の側……。それってまずいかな?


「そのさん、川を陣取られたらやばいですよね?」


 声をかければ、スルスルとそのさんが襟元から這い出てきた。くすぐったい。


「そうだねぇ。あの川はあんた達が飲み水にも使ってるから、普通に考えれば危険だねぇ」


 そうそう、百子だって川の水飲んでるし、果樹への水やりにも使ってるから、毒なんか流されたらたまったもんじゃないよ。……普通に考えればって?


「あんた、あの森を守ってるのが誰だと思ってるんだい?」

「誰って、福丸さんですよね? ユニークスキルで」

「そうさ。で、あいつのユニークスキルが生半可なもんを通すとでも思ってんのかい?」


 全くもってその通りでございますはい。


「というか、あたしにゃあそいつらがそういう目的で来てるとは思えないんだけどねぇ」

「どういう意味です?」

「あの森は何百年も前からフクマルが住み着いてるんだ。もちろん人間なら大抵知ってる。そんな森に続く川に悪さをする馬鹿はそういないよ」


 そっか。つーか福丸さん、100年単位であの森に住んでるんだ。気に入ってるんだね。住みやすいけどさ。


「まあ、そいつらの狙いがあんた達とは限らないだろう? 単にいい品を探しに来てるだけかも知れないしねぇ」

「それならそれでいいんですけどねぇ」

「なあなあニャオ、俺達が空から見張っていようか?」


 あら赤嶺ちゃん、やる気だね。


「僕も行く! まだ飛んでいられるもん!」

「おいらも飛べるけど、行く前にご飯食べたい……」


 紫輝と橙地まで、丸1日警備してたのに元気過ぎない?


「ちょっと、セキレイ達は今日はお休みの日でしょう? だったらあたし達に任せてよ」

「そうそう。ママも会いたがってるんだから、1回家に帰りなよ」


 お、黄菜と藍里が出てきた。


「あたし達は4人いるし、2人ずつ交代で見に行けるからさ。ゆっくり寝ておいでよ」

「モモコとキヨちゃんがシキ達を捜してたよ。遊んできなって」


 うんうん。そうだね、緑織と青蕾の言う通りだね。休める時に休まないと。でもそんな言い方しちゃうとさぁ……。


「おい! そんなこと言って、手柄横取りする気だろ!」

「そうだぞ! あの変な奴らは僕達が見つけたんだからな!」

「おいら達が捕まえるんだから、ミオリ達は邪魔すんなよ!」


 ああ、予想通りの反応だ……。


「横取りだなんて、人聞きの悪いこと言わないでよ」

「効率っていうものを考えてよね」

「ダイチ達だって頑張ってるじゃん。 次があたし達の番なだけだよ」

「ママに会いたくないの?」


 女の仔組は落ち着いてるねぇ。


「ほら、そこまでにしとかんな」

「けどニャオ!」

「赤嶺。ママは昨日グアンナを捕まえてきてくれたよ」

「グアンナを?」

「そう。頑張りよるお前達に食べてもらおうと思って、ちと遠出してくれたみたいよ。最近こっちまで群れが来んけなぁ」

「そっかぁ……」

「そう。で、緑織達が解体してくれて、芒月も手伝ったんよ?」

「ノヅキも?」

「うん。みーんな、お前達を待っちょるけぇ、今日は黄菜達に任せてお帰り。明日からまた頑張ればいいけぇな」


 そう言えば、赤嶺は橙地と紫輝と顔を見合わせて、頷いてくれた。


「わかった。俺帰る。で、グアンナ食べて、モモコとキヨちゃんとノヅキと遊んで、ママと一緒に寝て、明日また来る」

「僕も」

「おいらも」

「そうしておくれ」


 いい仔らだね。男の仔だし、格好いいことしたいんだろうけど、寝不足で怪我なんかしたら駄目だからね。ニャオ許さんからね。


「終わったかの?」


 後ろからイニャトさんが声をかけてきた。


「はい、大丈夫です。お待たせしてすみません」

「いや、待つのはいいんじゃが……」


 イニャトさんが言い淀む。なんぞ?


「お前さんら、ちっとうは場所を考ええよ?」

「……ああー、はい……」


 周りに顔を向けると、ちょっと遠巻きにこっちを見る町民達の目、目、目。

 朝の往来だってことすっかり忘れてたよ。失敗失敗。でも赤嶺達も町民達とだいぶ仲よしになってきてるんだし、そんなに見なくてもよくない?


「なんか、みんな遠いですね」

「そりゃそうだよ」


 アースレイさんが近づいてきた。呆れ顔で。解せぬ。


「ニャオさん、君の言葉は周りには聞こえなくても、セキレイ達の言葉は通じるんだよ?」

「ええ、存じてますが?」

「だったら、町の外に変や奴がいるとか、見張るとか、川に悪さとか言わない方がいいよ。全部、みんなに、聞こえてるんだからさ」


 ああー、そういうこと。なるほどなるほど。そりゃ自分達が住んでる町の近くにそんなのがいて仔ドラゴン達が捕まえるーだのなんだの話してたら気になるし怖いよねーごめんね気づかなくてー。

 あ、斧のギルマスが走ってくるのが見える。こりゃまた怒られるな。

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