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第148話 ちょい待ち

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 いやいやいやいやいやいやいやいや、ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って。

 え? 何? 私今なんて思った? 美影さんが魔力を込めた? 神宝石に? なんで?

 いや、美影さんがそうすることはなんらおかしくはないけど、なんで私それがわかったの? 赤ちゃんレベルの魔力しか持ってない私が? 自分のなけなしの魔力の動きにもなかなか気づけない私がなんで他人の魔力の流れがわかるの? テントを張る時とか、ジアーナちゃんのところでイニャトさんに魔力を流し込まれた時ぐらいしかわからなかったのに? なんでなんで?

 ……そういえば、初めて獅子獣人の姿になった時、体の中で渦巻く気配を感じたな。あれが魔力か? でも今は普通の人間に戻ってるし、危険な状況でもないから身構えることもないし。というか寝る直前のめっちゃ脱力してる状態だし。

 ウォーターベッドの上で寝返りを打って美影さんを見ると、もう寝息を立て始めていた。魔力の流れは感じない。仔ドラゴン達もぐっすりだ。音を立てないようにかぶってた毛布から両手を出して掌を見ても、いつもと何も変わらない。

 これは水神さんの力だから魔力は関係ない。だとしたらこの前の魔力の暴走か? 魔物化は抑えられたけど、体のどこかが変化してる?

 ……考えても仕方がない。私じゃどう頑張っても答えは出せない。明日漣華さんか福丸さんに聞いてみよう。




 ▷▷▷▷▷▷




「ミカゲが魔力を込めていた?」


 翌朝、収穫作業に入ったニャルクさん達に断りを入れて、腹這いの姿勢で尻尾を猫じゃらし代わりに芒月を遊ばせてる漣華さんに昨日のことを聞きに行ったら、そう聞き返された。


「はい。なんか、今までは誰かの魔力とか感じなかったんですけど、昨日ははっきり感じ取れたんです。思えば獅子獣人に初めてなった時も似たような感覚があって……。なんでかわかります?」


 赤嶺達がそのさんを連れてきてくれたおかげで、完全な魔物化とか魔力の暴走っていう最悪の事態は免れたけど、自分の体が変わっていってる気がしてならない。不安だ。

 ふむ、と考え込んだ漣華さんが、座れって言って前脚を伸ばしてきた。軽く頭を下げてからお邪魔する。顔が近い。


「そなたらに持たせた神宝石は、妾とフクマルがそなたらを守る為の装飾じゃ。ミカゲにも持たせたのも、母であるあやつを守る為。故に、魔力の込め方をミカゲに教えてはおらん。しかしあやつはそれをした。離れて過ごすセキレイ達を守ろうと、妾達のやっていることを見て学んだことを真似たのじゃろうな」

「なんと、才能ありますね」

「そうじゃな。やろうと思ってやれることではない。そしてそなたはそれに気づいた。傍にいたニャルクやシシュティでさえ気づかなかったことに」


 あ、そういえばそうか。ニャルクさん達爆睡してたもんね。私しか気づかなかったのか。


「ソノの毒を元にマサオミが作った薬のおかげでそなたは魔物化せずに済みはしたが……。ふむ、ちと見てみるか」

「見てみるって?」


 難しい顔をした漣華さんが鼻をおでこにくっつけてきた。動かなくなった尻尾に飽きた芒月が膝に前足を乗せてくる。顎を撫でてやってたら、目の前にステータスが出た。


「なんて書いてます?」


 読めないから増えてるのかわからないんだよね。でも漣華さんの表情を見るになんかありそう。


「……そなた、称号が増えておるぞ?」


 え? マジで?


「〔神託を浴びし者〕という称号がついておる。いつついたんじゃろうか……」

「あ、それですか。なんか、クァーディーニアさんがいた時にはついてましたよ」


 びっくりした、また変なのが増えたのかと思った。


「そうじゃったのか。そういうことは先に言わんか」

「すみません、気をつけます」


 全く、と漣華さんがステータスに目を戻した。


「称号は今言ったものが増えただけで変わりないが……。スキルも増えておる」

「スキル、ですか?」


 何それ初耳なんだけど。


「〈水神の掌紋〉の他に、〈獅子の心臓〉が追加されておる。魔力を感じ取れたのはこれのせいじゃな」


 わーお、物騒な名前。


「なんなんです? 〈獅子の心臓〉って」

「獅子獣人や獅子人の中でも限られた者にしか現れんレアスキルじゃ。獣人族は獣や魔物を祖とする種族じゃが、こういう名のレアスキルを持つ者はより祖に近いとされておる。生まれながらに持つのか普通じゃが、そなたは後天的にこれを得た。はっきりとはわからんが、そなたは純粋な獅子獣人よりも優れている、と言えるじゃろう」


 なんとまあ、そんなレアスキルが。


「獅子獣人になってた時、確かに身体能力が跳ね上がってはいましたけど……。でも、あれ? って思うことは前々からありましたよ?」

「ほう、例えば?」

「えーっと……。危ない人とか、危険な魔物が近くにいたら首筋がざわついたりとか、トールレン町では真夜中に走ることがあったんですけど、全力疾走してるバウジオと並走してアーガスさん置いてったりとか。息も切れなかったし」


 考えてみればいろいろあったけど、それは獅子獣人になる前だからなぁ。〈獅子の心臓〉は関係ないか。


「推測の域を出んが、それはそなたに与えられた水神の加護によるものではないか? 加護を持つ者は持たぬ者よりも悪意や危険に気づきやすいと聞く。アーガスを引き離したのも、加護の恩恵を受けたが為ではないかと妾は思うぞ」

「そうですか……」

「実際、シヅも元いた世界よりも疲れにくいと驚いていたからな。作業が捗ると言っていた」


 おお、シヅさんか。


「作業って、何をしてたんです?」

「戦時中は、敵国の術や目論見を見抜いたり頓挫させたり、戦後は趣味であった木彫りを寝ずにやっていた」

「木彫り?」

「飼っていた犬や、両親や弟の姿をフクマルが倒した木からいくつも作っては寝床に置いていた。今は朽ちてしまって土に還ったが、一時期は踏み場もないほどじゃったぞ」


 それは作り過ぎでは? でも、シヅさん、懐かしかったんだろうなぁ。会いたかっただろうに。


「いつまでも作り続けられる、と言って半狂乱になりながら木を彫るあやつは、さすがの妾でも怖かったぞ」

「……まあ、たぶん、私もその場にいたら怖かったと思います、はい」

「結局、何体作れるか試してみる、と寝ずに彫り続けた結果、6日目で倒れて3日間眠り続け、2日間はまともに立ち上がれんかったがな」

「いやいや、相当体力消耗してるじゃないですか」

「……その後、クラオカミ様からお声をかけられてな。また同じことをすれば1週間寝た切りにさせてやるから覚えておけ、と」


 耳元で漣華さんが小声で言った。


「もしかして、無理をするシヅさんに怒った水神様が一時的に加護の力を弱めた、とか?」

「その通りじゃ。察しがいいのう」


 漣華さんに感心された。あんま嬉しくない。


「まあ、それからはほどほどに木彫りを楽しんでおった。なぜか魚を咥えたフクマルを大量に彫っていたが」

「おお、木彫りのベア……」


 シヅさん、もしや北国出身ですか? いやまあ、私が生まれた世界とは違う日本かも知れないけどさ。

 漣華さんにお礼を言って収穫作業に戻ると、香梅さんが戻ってきた。最近長く家を離れることが多いんだよね。まあ森の中にはいるみたいだから、危ないことはしてないみたいだからいいんだけど。


「ブルルッ!」

「お土産ありがとうね、香梅さん。でも採り過ぎでない?」


 どこから採ってくるのか、アースレイさんがあげた容量が小さめのマジックバッグからは大量のトリューフが毎回ゴロゴロ出てくるんだよね。これも売りに行こうかしら?

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