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第147話 静かな夜

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 警備を始めて最初の夜。いつもは賑やかな夕ご飯の時間も、ほんの何人かいないだけで静かだった。まあいないのが一番騒がしい赤嶺達だからっていうのが最大の理由だけど。

 いつも一緒にいる兄弟と離れたのが寂しかったのか、いつもはすんなり寝てくれる緑織達がぐずったからドラゴン一家の寝床にお泊まりすることになった。メンバーは私とニャルクさんとシシュティさん。明日は私とイニャトさんとアースレイさんの予定。


「ニャオさん、シシュティさん、ここで眠れます?」


 本日のベッドを前に、ニャルクさんが小声で聞いてきた。


『▽、□▽……』


 シシュティさんがなんとも言えない顔をする。うん、気持ちはわかるよ。


「ここの葉っぱ、一昨日変えたばっかりなんだよ」

「まだふかふかだよ」

「みんなで一緒に寝ようねー」

「もう眠い~」


 目の前にあるのは小山みたいに集められた葉っぱ。枝も小石も混ざってる。緑織達みたいな鱗ならなんともないんだろうけど、私達じゃあ寝にくいなぁ……。


「あー……、あれだ、ああしよう」


 断言できる。これは眠れない。仮に寝つけたとしても起きたら体中バッキバキだ。擦り傷だらけだ。そんな目覚めやだ。


「何かいい案がありますか?」

「はい。ウォーターベッドっていうのがありまして、寝る部分が水なんですよ」

「寝る部分が水? 濡れません?」

「いやいや、水は大きな袋に入ってるんですよ。水が入った袋の上に寝るんです」


 うまく伝わったかな? ……無理っぽいな。シシュティさんに伝えてくれたけど、なんか変な顔されてる。これは見せた方が早いな。


「ちょっとやってみますね」


 みんなから少し離れて、掌を合わせる。なんか久しぶりだな。

 水神さん水神さん、私達が一晩寝る為の場所を作っていただけますか? ええっと……、水まんじゅうみたいなやつです。

 そうお願いしたら、空気中から水が一気に集まってきて、私の胸と同じぐらいの高さの水まんじゅう、もといウォーターベッドが出来上がった。


「おおー! これこれ! ありがとうございます水神さん!」


 テンション上がるよね~ウォーターベッドって。元の世界の同僚に買ったって自慢されて羨ましかったんだよなぁ。


「これが、ウォーターベッド?」

「そうですよ。見た目からして面白いでしょう?」


 本当のはちゃんとしたベッドの形になってるんだけどね。これはまんま水まんじゅうだけど。


「にゃんか、大きにゃスライムみたいですね……」


 おっと、そう来たか。


「まあまあ、乗ってみればわかりますって。気持ちいいですから」

「ほ、本当にこれに乗るんですか? 寝れるんですか?」

「さあ」

「さあ?!」


 だって寝たことないんだもん。でも気持ちいいって。水神さん作なんだし。


「ほら、一番乗りどうぞ!」

「ちょちょちょ! ちょっと待ってぇぇ!」


 ニャルクさんを持ち上げて放り上げれば、ぷにゃん、とウォーターベッドに落ちた。


「ぅにゃにゃ?! た、立てにゃい、助けてニャオさん!」


 感触にびっくりしたニャルクさんが必死に水まんじゅうから降りようとするけど、前足を置いたところが沈んでうまく動けないでいる。これ、あのクッションみたいだな。名前は言わないけど。


『◎△□○!(*゜∀゜)』

「ちょっと! 楽しそうってにゃんですか?! そんにゃこと言ってにゃいで手伝ってください! 降りたいんです!」

「ニャルクさん、そのままウォーターベッドに頬をつけてみてもらっていいですか?」

「え、頬を? にゃんで……」

「で、目を瞑って、深呼吸してください。草木の匂いを胸の奥まで吸い込む感じで」

「深呼吸、草木の匂い……」

「そのままゆーっくり、呼吸してください。なーんにも考えないで」


 マジックバッグに入れてた毛布を取り出して、ニャルクさんにかけて背中をぽんぽんと撫でれば、くうくうと寝息が聞こえてきた。勝った。


「ニャオ、それあたしもほしい」


 ニャルクさんが寝たのを見て、青蕾がねだってきた。緑織と黄菜と藍里も期待の眼差しで見上げてくる。はいはい、了解ですよ。

 それから7つのウォーターベッドを水神さんに作ってもらった。女の仔達の分と私とシシュティさんの分と、物欲しそうに見つめてきた美影さんの分も。美影さんのは全身を乗せる大きさの物はさすがに危ないから、顎を預けるぐらいのサイズにとどめさせてもらった。寝返りを打った拍子に私らがぺしゃんこになったら大変だからね。最初はみんな不安定なウォーターベッドにあたふたしてたけど、慣れたら気に入ってくれた。


「これ気持ちいいね」

「ひんやりしてる。ふわぁ~」

「くー……、くー……」

「おやすみぃ……」

「ニャオさん、シシュティさん、おやすみなさい」

「おやすみなさい、美影さん。シシュティさんも」

『……zzz』

「早いな」


 毛布にくるまったシシュティさんはもう夢の中だ。私も寝よう。明日は午前中に収穫して、午後から町に行って、赤嶺達と緑織達をバトンタッチさせて、異常がないか一回りしなきゃいけないからね。あー忙しい忙しい。

 ……寝入り端に美影さんが神宝石に結構な量の魔力を込めてたけど、気にしないでおこう。

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