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第145話 人手ならぬ……

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

「用心棒?」


 昼間の自分と同じ質問に頷く羽目になるとは……。面白いねぇ人生って。

 帰宅して、夕ご飯に照り焼きピザを堪能した後、ニャルクさんが買ったハーブティーをみんなで飲みながら杖のギルマスの依頼について話せば、揃って首を傾げられた。変な連中の変な行動。うん、改めて考えても妙ちくりんだ。


「にゃんにゃんでしょうねぇ。ただ単に買い物に来てるにしては変ですし……」

「まさか、またロスネル帝国の回し者かの?」

「いやぁ、それはないんじゃないかい? 王都はトーナ町の一件からロスネル帝国に関わる人間の出入りをかなり制限してるし。向こうは商人達のデタラメだって言ってるみたいだけど」


 アースレイさんがハーブティーのおかわりを淹れた。


「じゃあどんにゃ理由があるんでしょう?」

「取引契約を結びたくて通ってるとか?」

「それも変じゃわい。宿に泊まらん理由ににゃらん」

「この2週間、僕達は何度か町に出てますから、そういう目的があるにゃら声をかけるにゃり、ギルドに伝言を残すにゃりするでしょうしねぇ」


 うーん、と、ニャルクさん達が悩み込んでしまった。会話に参加してなかったシシュティさんが不安げな表情で耳を弄ってる。


「考えたところで仕方あるまい。そもそも、そやつらの目的が我らとも限らぬではないか」


 ぐでんと寝そべってた漣華さんが頭を上げた。体には仔ドラゴン達と芒月が群がってる。まるでアスレチックだな。


「そりゃまあ、そうですけど……。なんか最近いろいろあり過ぎて、いろんな矢印が自分に向いてるように感じるんですよね……」


 精霊なりロスネル帝国なり、ほんと、びっくりするぐらいあり過ぎた。自意識過剰って言われても否定していいレベルだよね。


「とりあえず、この依頼は受けようと思います。で、何人かでペリアッド町の周りを交代で警備しようと思うんですけど、手伝ってもらえますか?」


 私1人じゃ当然無理だし、昼の内は収穫もしないといけない。養蜂は政臣さんに任せてるけど、やることはいっぱいあるからなぁ。


「もちろん手伝うよ。姉さんにもちゃんと伝えるから」

「儂もやるぞ。樹木魔法が得意とはいえ、ちと木に向き合い過ぎた。丁度いい息抜きににゃるわい」

「蒼い林檎は予約されてた分は配達し終えましたからね。僕もお手伝いします」


 おお、ありがたやありがたや。


「助かります、じゃあ明日から早速」

「ちょーっと待ちな若造共」


 あれ、そのさんどこから出てきたの?


「おかえりなさい。清ちゃん寝てませんでした?」


 そのさん、家に帰ってからすぐ清ちゃんのとこに行っちゃったんだよね。お腹が空かないから朝ご飯しかいらないって言って、それ以外の時間は自由に動き回ってさ。1日1食で足りるのは羨ましいね。


「うとうとしてたね。あたしが行ったら顔出してきたけど、すぐに引っ込んじまったよ」

「そうですか」

「それよりなんだいあんた達。バジリスクが足元に近づいてきてるってのに、みんな気づかないんだから。フクマルの森の中だからって、気を抜き過ぎだよ」


 まあまあ、そんなこと言わずに。あらら、アースレイさん達目を逸らしちゃってまあ。


「いいじゃないですか。みんなにとってここはそれぐらい気を抜ける場所なんだから」

「全く、そんなんでいいのかい? いざって時に寝首かかれたんじゃ笑い話にもならないよ?」

「ごもっともです……」

『……○✕』

「シシュティ。アースレイ。ばばあの話なんぞ聞かんでいい。どうせこの後自分の若い頃は、などと話が続くんじゃ。1度捕まれば一晩は寝かせてもらえんぞ?」

「お黙り小娘! あんたみたいな若造にあたしの一生がわかってたまるかい! あんまりなめた口聞くと、卵から孵ったばかりのあんたが頭に乗っかった殻を脱げずにピーピー鳴いてたことばらしちまうよ!」

「いつの話をしておるんじゃ! 第一もう言ってしまっておるじゃろうに!」


 なんと、漣華さんにもそんな可愛い時代があったのか。ていうか、2人は漣華さんが生まれた時からの知り合いなの?


「ニャオさん、町の警備につくといっても、何人ずつで行くつもりですか? 僕達あんまり人数いにゃいし、一気に抜けて人手が足りにゃくにゃって、納品に影響が出たらダッドさん達に悪いですし」


 そうなんだよねぇ。警備に当たれる面子といえば、私と兄弟猫とアースレイさん姉弟ぐらいだもんなぁ。仔ドラゴン達も出れるっちゃあ出れるけど、大人と一緒じゃなきゃ不安だし。バウジオは町の人達に慣れてるとはいえ、意思の疎通ができないからなぁ。……あれ?


「バウジオどこに行きました? さっきまでご飯食べてましたよね?」

「にゃ? あやつにゃらブラックドッグ達を迎えに行ったぞ。フクマル殿のユニークスキルの外側に魔物の気配を感じ取ったらしく、11頭総出で狩りに行ったんじゃ」


 なんと、そんなことが起こってたんですか。


「じきに帰ると思うが……。お、噂をすれば」


 イニャトさんが顔を向けた方を見れば、ばっふばっふ、ウォンウォン、わっふわっふ、キャンキャンとやかましい。


「バウジオー、みんなー、おか、え……り……」


 椅子から立って出迎えようとしたけど無理だった。ニャルクさん達も硬直してる。視界の端で漣華さんが目を見開いて、くはは! って笑った。


「そなたら、ずいぶん立派な魔物を獲ってきたな。これはいい金になるじゃろうて」

「ばっふばっふ!」

「……あのー、漣華さん? そちらさんはどちらさんで?」


 めっちゃ見覚えあるーゲームの敵キャラでよく戦う奴だこいつー。


「これはグリフォン。空を飛び群れで攻撃を仕かけてくる厄介な魔物じゃ。妾の敵ではないが」


 やっぱりー。


「すごーい! ウェアウルフ達こんなの獲ってきたの?!」

「おいら達も戦おうとしたんだけど、ママに止められたんだよなぁ。まだ早いって」

「ミャヴヴゥゥゥ……」

「ノヅキ、もう死んでるから大丈夫だよ」


 漣華さんから降りてきたおチビ達がわらわらとグリフォンに群がった。まあ珍しいだろうな。橙地、その話は後で詳しく聞かせてもらうから。


「しかしまあ、よく倒しましたねこんなの」

「あやつらは思いの外連携が取れておるからのう。バウジオが手伝ったんじゃろうが、大したものだ」


 つまり、ウェアウルフとブラックドッグがグリフォンと戦闘中にバウジオが合流して、わんわん達が頑張ったってこと? 凄いな。


「……あ」


 いいこと思いついた。


「どうしました?」

「ニャルクさん、足りますよ、人手」


 そう言えば、ニャルクさんも他のみんなも不思議そうな顔をした。シシュティさん以外。まあ人手っていうより犬手? だけどね。

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