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余話第23話 危険がいっぱい

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 洞窟を10分ほど進むと分かれ道に行き当たった。前足を口に当てて、どちらに行くべきかニャルクは悩んだが、仔ドラゴン達はあっさり左の道を選んだ。


「ニャルク、こっちだよ」

「早く行こう」


 先頭を歩いていたダイチとセイライがニャルクを呼んだ。


「こっちの道にいるんですか? もう1つの道じゃにゃくて?」

「さっきの道もこっちの道も、同じところに繋がってるんだ。でもこっちの方が近道なんだよ」

「いつもは冒険しながらだけど、今日は急ぐからこっちなの。早く早く」


 2人に急かされて、ニャルクは小走りで後を追った。




 ▷▷▷▷▷▷




 ニャルクは過去に何度か洞窟を訪れたことがあったが、ここは記憶にあるどこよりも静かだった。

 人間や動物が立ち入らないほどの深部と言えど、小型の生き物は少なからず存在し、音を立てる。洞窟を寝床にするコウモリですら、ニャルク達が今いる場所には1匹もいない。


「なんにもいないね」


 ニャルクが気にしていたことを、ミオリが口に出した。


「コウモリもいないね。あたしよく脅かして遊んでたけど、こんな奥までは来なかったなぁ」


 低い天井を見回しながらランリが言った。


「フクマルおじさんのユニークスキルの境が近いからだと思う。もう少し行ったら森の中じゃ見かけない魔物と会えるよ」

「ダイチ、セイライ。そんにゃところまで2人だけで行ったら駄目でしょう? 次からは誰かを誘いにゃさい」

「うん、みんなと一緒に行く!」

「大人を誘えと言ってるんです!」


 もう、とニャルクが叱ると、ごめんなさーい、とダイチとセイライは謝った。


「ねえ、これ何?」


 キイナが足元を前足で掻いた。


「それはヤミゴケですね。光が射さない暗がりに生える苔ですよ。日光に当たれば数時間で枯れてしまうんです」

「へぇ~。ねえ、持って帰っていい?」

「何に使うんです?」

「ニャオに見せる!」


 ふんす! と鼻を鳴らしたキイナに、きょうだい達が俺も、あたしもとヤミゴケを集め始めた。ニャルクはいそいそとマジックリュックを下ろして麻袋を取り出し、口を広げる。


「ほら、この中に入れてください。ニャオさんが元気ににゃったら、夜に見てもらいましょうね」

「「「「「「「はーい!」」」」」」」


 元気に返事をした仔ドラゴン達が、ニャルクが広げている麻袋にドサドサとヤミゴケがついた石を落とすように入れた。少しよろけたニャルクが、ヤミゴケ集めの2周目に入ろうとしているセキレイ達を慌てて止めて、麻袋の口を縛って強制終了させた。

 その後はこれといって珍しい物もなく、ニャルク達は歩き続けた。そして、パタパタという羽音に誰からともなく足を止める。


「鳥?」

「いや、コウモリだよ。フクマルおじさんのユニークスキルから出たんだ」


 にゃるほど、とニャルクは頷いた。ユニークスキルの範囲外ならば、どんな生き物がいてもおかしくはない。魔物でも、動物でも、ここからは彼らの領域なのだ。


「皆さん、気をつけてください。どんにゃ魔物がいるかも知れにゃいんですから、注意して進みましょう」

「ねーニャルクー、あれ何?」


 先ほどよりも高くなった天井を見上げたシキのセリフに、視線を追ったニャルクは目を見張った。

 天井を埋め尽くすほどのコウモリがいる。ただのコウモリならば問題はないが、ニャルクは口の端から覗く赤い牙に見覚えがあった。


「みんにゃ戻って! 逃げにゃさい!」


 ニャルクは大声を上げて、仔ドラゴン達にフクマルのユニークスキルの範囲内に戻るよう指示を出した。セキレイ達は、猫に見つかった鼠のように跳び跳ねて、元来た道を駆け戻った。


「何何、なんなのニャルク?!」

「あれはただのコウモリじゃありません! 吸血種の魔物です! 噛まれれば麻痺性のある毒を流し込まれて動けにゃくにゃり、群れで血を吸われて干からびてしまう!」

「干からびるって、どうなるの?!」

「ニャオさんが川魚を干して作ってたヒモノ! あんにゃ感じです!」

「やだ! あんなのなりたくない!」

「ちょ、ちょっと! 何してるんですか?!」


 我先にと駆けていく仔ドラゴン達のしんがりをつとめていたニャルクは、急に立ち止まって吸血コウモリの群れを睨みつけたダイチとセイライの尻尾を掴んだ。


「早く来にゃさい! 急いで!」

「ニャルク、耳塞いでて」

「みんなもだよ」


 落ち着いた様子で、ダイチとセイライは言った。魔物達から仔どもらを引き離さないと、と慌てていたニャルクは、なぜかなんの疑いも持たずに指示に従い、三角の耳を前足で畳んでふさいだ。

 ダイチとセイライが、ぱかっと口を大きく開けた。2人を中心に、魔力が渦を巻き始める。吸血コウモリの群れが、すぐそこまで迫っていた。


「「 わ っ ! ! 」」


 声を揃えて、ダイチとセイライが叫んだ。ミカゲの咆哮とも、レンゲの啼き声とも違う、幼さが残る可愛らしい声だったが、その威力は凄まじかった。

 耳をふさいでいたニャルクは、ふさぎ切れていなかった隙間から入り込んだそれに脳天を突かれた。翼で頭を覆っていた仔ドラゴン達が悲鳴を上げ、覆うのが遅れたキイナが卒倒する。

 2人の仔ドラゴンから放たれた衝撃波を、真正面からもろに受けた吸血コウモリ達がボトボトと落ちる。暗闇に身を潜める為に強化させた聴力が仇となった。


「こいつら、いっつもおいら達を襲ってくるからこうやって片づけてるんだ」

「こうしたら30分は起きてこないから噛まれないよ」

「もうすぐバジリスクの寝床だから、早く行こうぜ」


 な! と振り返ったダイチとセイライは、地面に突っ伏しているニャルクと、言葉にならないうめき声を上げるきょうだい達と、仰向けに倒れて目をパチパチさせているキイナを見て、ん? と首を傾げた。

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