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第139話 おーっと?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

明日は余話を更新予定です。

 右のほっぺがあったかい。鼓動が聞こえる。何も見えない。

 ぼんやりする頭がはっきりし始めると、俯せになって寝転んでいるのがわかった。起き上がろうとしたら後ろ頭を押さえられて、元の位置に戻された。


『✕、▽……』


 聞き覚えのある声がした。政臣さんだ。何て言ってるかはわからないけど。


『○』


 政臣さんが短く言うと、顔の近くがほんのり明るくなった。魔法で照らしてくれたみたい。ありがたやありがたや。

 木箱に寝そべってるもんだと思ってたんだけど、仰向けで寝てる政臣さんに覆い被さってたらしい。あったかいはずだよ。てかこの体勢際どいな。


「す、すみません、今どきますね」


 もう一度起き上がろうとしたけど、今度は肩に腕を回されて引き寄せられた。なんで? あ、すぐ上が天井っていうか蓋なのか。こりゃ頭打つわ。

 動きづらい中政臣さんの顔を見たら、なんかびっくりされた。今度はどしたの? 首を傾げてたらにっこり微笑まれて、左手を握られた。

 掌が小さい。炭坑にいる時は同じぐらいの大きさだったのに、政臣さんの手にすっぽり隠れてる。


「体、戻ってる?」


 なんとまあ、このタイミングで獅子獣人から人間に戻るのか。でもまああの体躯でこんな木箱に閉じ込められてたら窮屈で仕方がないから丁度よかったかも。


(ようやっと起きたか)


 ん? この声って……?


(これ、まさか妾がわからんとは言わんじゃろうな)


 あ、漣華さん。おはようございます。


(何がおはようじゃ)


 そんなに怒らないでくださいよ。好きで家からいなくなったわけじゃないんだから。てゆうかこれ念話ですか?


(左様。今までそなたが眠っておったから語りかけられなんだ。で、そっちはどんな様子じゃ?)


 どんな、と言われても……。例の木箱に閉じ込められてます。エルフのおじ様と一緒に。


(エルフ? ちと待て……。……貴様、なぜそこにおる?)


 おーっと? 貴様呼びとは穏やかじゃないね。漣華さん、そんな荒っぽい言い方しないでくださいよ。私の恩人ですよ?


(そなたは黙っておれ。今からそやつと話す)


 えー、私にも聞かせてくださいよ。


(ならぬ。ともかく黙れ)


 はーい。




 ▷▷▷▷▷▷




(待たせたのう)


 んあ? あ、おはようございます。


(そなた、また寝ておったのか……)


 だって寝心地半端なくいいんですもん。なんか大自然の匂いがするし。


(エルフじゃからのう。まあするじゃろうて)


 で、なんの話してたんですか?


(昔話よ。気にせんでよい)


 はあ、了解です。


(昔話の途中でマサオミに確認したのじゃが、その木箱にかけられた術はそなたの掌紋の力で突破できそうじゃ)


 お、そうなんですね。じゃあ早速出てもいいですか?


(まあ待て。今はまずい)


 なんでです?


(そなたらが閉じ込められておる木箱はトーナ町の商人達の出店に置かれておって、見張りが両隣に立っておる。怪しい動きをすれば違う術を使われるかもしれん。それも異世界の術であれば、どうなるかわからん)


 なるほど。じゃあどうしたらいいでしょう?


(今日は妾もフクマルも町に来ておるからのう。いざという時は無理矢理奪い取ることもできるが、そうなれば戦闘は免れんじゃろう)


 いや、それはやめてください。町の人達は祭を楽しんでるんですから、水を差したくないです。


(わかっておる。しかし、ニャルク達もアースレイ達ももう限界じゃ。エルドレッド隊の連中もトーナ町の者共を問い詰めようと策を練り始めておる。あまり時間がない)


 時間がないって、まだ昼過ぎぐらいじゃないんですか? みんなに落ち着いてっ言ってください。必ず戻りますから。


(……言っておくが、今日は祭の最終日じゃぞ?)


 …………はい?


(今日でカルカナの祭は終わる。終われば異国から来た商人達は帰る。それまでにどうにかせねば、そなたとそやつはロスネル帝国に運ばれてしまうぞ)


 そりゃまずい。本当にまずい。


(そなたが消えてから、エルゲ達は何度かトーナ町の商人共に話を聞きに行ったのじゃが、仕事の邪魔だと追い返されたんじゃ。明確な証拠がない以上、あやつらも強くは言えんかったらしい)


 ああー、異世界の術だとエルゲさん達もわかりづらいんですよね。なんか、迷惑かけてすみません。


(謝罪は直接言え。まずはこちらに帰ることを考えよ)


 はい、頑張って考えます。でもどうやって出ればいいんでしょう? 私今獅子獣人から人間に戻っちゃってるんですよね。


(ほう、そうなのか?)


 はい。なんで、いつもみたいに派手に動いたり反応したりとかはできないです。ただの人間です。


(ふむ……)


 あらら、考え込んじゃった。でも本当にどうしよう。祭が開かれてる間にみんなのところに戻る方法。祭を台無しにしない方法……。


「……あ」


 漣華さん、ちょっといいですか?


(なんじゃ?)


 赤嶺達って祭に来てます?


(ああ、来ておるよ。そなたを恋しがっておる)


 ちょっとぉ~今そんなこと言わんでくれますぅ~? 私だって会いたいんですけどぉ~?


(妙な喋り方をするな)


 はい、すんません。で、みんなのところに帰るのに赤嶺達の力を借りたいんですけど。


(ほう、どういう風に?)


 えーっとですねぇ……。

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