第137話 お知り合い?
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少し短めとなっております。
「さて、これからについてなのだが。先ほどの君の口振りからして、ベアディハングやドラゴンと親しいと感じたのだが、名前はなんというのかね?」
「はい。ベアディハングが福丸で、ドラゴンが漣華と美影です。漣華さんはユルクルクスで、ブラックドラゴンの美影さんには仔どもが7人います」
赤嶺達の名前は省かせてもらおう。多いし、色とかの説明もしてたら長くなるしね。
「ユルクルクス……。もしや、ビャクレンか?」
お、知り合い?
「昔はビャクレンって呼ばれてたみたいです。福丸さんは確か……、ダイゴロウですね」
「……」
そう言えば、政臣さんは黙り込んでしまった。もしかして、いい知り合いじゃなかったか?
「あの、どうしました?」
「……ああ、いや、すまない。あまりにも懐かしくて、当時を思い出してしまったよ。ありがとう」
いやいや、お礼を言われるようなことではないよ?
「お知り合いなんですか?」
「そうだね。共に戦ったんだよ。まあ、彼らは私達など眼中になかったが」
「そうなんですか?」
「ああ。ベアディハングもユルクルクスも、シヅしか見ていなかった。彼女が参戦しなければ、アシュラン王国は戦争に勝てなかったかもしれない。私達は全員彼女に感謝したが、恩を返すことはついぞ叶わなかった」
そう言って、政臣さんはまた黙ってしまった。辛い記憶なんだろうな。戦争だもの。
「ニャオ君。ベアディハング達がついているということは、異世界人である君には加護があるのかい?」
「はい、水神さんの加護を授かってます。あとこれ、〈水神の掌紋〉も」
掌を見せれば、政臣さんはぐいっと身を乗り出すみたいに掌紋を覗き込んできた。近い近い。
「〈水神の掌紋〉……。まさか再び目にする日が来ようとは……」
政臣さんは、掌を上向きにしてる私の手の甲を両手で包み込んだ。俯いてるから顔は見えない。涙ぐんでるのかも。
「私はシヅさんを知りません。だけど漣華さん達からどんな人だったかは聞いてます。だから、同じユニークスキルを持つ以上、シヅさんに恥じない生き方をしたいと思ってます」
これは本音。仙人みたいに人知れず暮らしたいのは本当だけど、誰かと関わる以上堂々と胸を張っていたい。
「君ならばきっと大丈夫だ。ありがとう。ありがとう……」
掌に、掌紋に額を擦りつけながら政臣さんが言った。前髪がくすぐったい。
しばらくして、政臣さんは顔を上げた。涙は見えない。でも目元が少し赤い。照れくさそうに笑う顔も渋いわ。
「すまなかったね、長々と。辛かっただろう?」
「いえいえ、お気になさらず。あの、そろそろここを出たいんですけど……」
体感時間は、なんとなく夜明けぐらいかな。みんなが目を覚ます前に戻りたい。起きたことを話はするけど、なるべく怒られないで済む方がいいに決まってる。
「そうだね。私も出たいと思っていたんだ。だが私達が今かけられている術は異世界のもので、方法を見つけられずにいたんだよ」
お? そういう言い方するってことは?
「出る方法がわかったんですか?」
食い気味に聞いてみたら笑われてしまった。だって出たいんだもん。しょうがないじゃん。
「私達がここから出る方法は、君だよ」
「……私?」
「そうだ。君ならこの厄介な術を斬り払える。〈水神の掌紋〉と、“バンパイアシーフの短剣”を持つ君ならば」
あ、刀の正体ばれてる。いつ気づかれた?
「でも、どうしたらいいか……」
「ここでは駄目だね。術の切れ目を探そう。大丈夫、君ならできる」
政臣さんに手を引かれて歩き出す。どこに行くんだろう。




