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第134話 最終日に向けて

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

「おじさーん、この丸いの何? 遊ぶやつ?」

『○、△□▽。✕○?』

「こっちの赤いのは? ここってお菓子は置いてないの?」

『✕、□△✕✕』

「そっかー、あ、あれは? 近くで見ていい?」

『! ✕✕! □△!』

「えー、駄目なの? おじさんのケチんぼ」


 祭5日目。トーナ町の商人達の出店で気ままに品定めする緑織を眺めながらの時間潰し。あ、緑織もっと食い込んで聞いておいで。そいつらに情け容赦は無用、もっとやれもっと困らせてやれ。……普通の店じゃ怒るんだけど、今はあのずけずけ行くところに助かってるなぁ。


『◎○、□○?』

『◎! ▽△!』

『◎◎◎、△△♪』


 買い物に誘ったナーヤちゃん、ステアちゃん、ジアーナちゃんも楽しそうに異国の品を見比べてる。せっかくの祭なんだから楽しまないと。マイス君達とは7日目の出店を休む日に一緒に出店巡りする予定だから、今日はお土産だけ買って帰ろうね。


「緑織、ナーヤちゃん達に自分の分を1つと、ダッドさん達の分も1つずつ選んでいいよって伝えておくれ。買ってあげるって」

「あたしのは? セキレイ達のは?」

「もちろん選んでいいぞ」

「やった! ありがとうニャオ!」


 にっこり笑った緑織がナーヤちゃん達に伝えてくれると、子ども達は満面の笑みで抱きついてきた。はいはい、早う選びなさいな。


「ばっふばっふ!」


 一緒についてきたバウジオが吠えたからそっちを見たら、これまたついてきてたブラックドッグが商品が入った木箱をペロペロ舐めてた。何してんのさ。


『!!』

『!!』

『!!』

『!!』

「こらこら、やめんかお前。すみません、すぐやめさせますんで。ほらおいで、困っとるやろ?」

「わっふ!」


 身内ってことを示すために、家紋である違い鷹羽を刺繍してある首輪を引っ張れば、ブラックドッグはすんなり木箱から離れた。ばっふ、とバウジオが叱る。しょんぼり項垂れたブラックドッグの口に親指を突っ込んで、腹で拭う。

 横目で商人達を盗み見れば、ブラックドッグが舐めた木箱をいそいそと隠してる。布で覆われて、たくさんある木箱の中に紛れ込ませたそれは違和感が全くない。意識して見ないと気づかないな。


「ほーら、さっさと選んでおくれ。ここにいいのがなかったら違う出店に行こう」

「ニャオはイニャト達のところに戻らなくていいの?」

「昨日、イニャトさんが売る苗木を育てるのをかなり手伝ったけぇな。今日は午前中は遊んできていいって言われとるけぇ、お昼ご飯食べたらナーヤちゃん達を送って出店に戻ろう」

「そっか、じゃああたしあれがほしい!」

「ん? どれ?」

「あそこにぶら下がってるやつ! みんなと引っ張りっこして遊びたい!」

「わーお、でっかい藁人形……」


 いいチョイスだね。




 ▷▷▷▷▷▷




「儂らはまだ納得しとらんぞ」


 出店の片づけを終えて、家に帰って最初の一言がこれだもんなぁ。


「そんなこと言ったって、今のところ他に打つ手がないんだから仕方がないじゃないですか。漣華さんだってやってみろって言ってくれたんだし」

「レンゲさんが頷かにゃければそもそも許してませんよそんにゃ作戦」


 ぶすくれたニャルクさんに睨まれた。あんたそんな目できるんか。


「でももう準備はできましたよ。あとはトーナ町の連中が動くかどうかです。動かなければ動かなかったで済むんですから」


 ジト目で見上げてくる兄弟猫の向こうに、おんなじ目をした姉弟兎。不満げなアーガスさんと心配そうなライドさん。

 許しはするけど納得はしないってか。じゃあ代案を出しなさいよ代案を。

 はあ、とため息をついて、親指の腹を見る。ブラックドッグの舌を拭った親指は、パッと見は何も変化はないんだけど、皮膚の内側に術が施されている感覚がある。これ、普通の人なら気づかないよな。


「今現在、私の体にはトーナ町の商人が持ち込んだ術がかけられています。奴らが動くとしたら、たぶん祭の最終日。賑わいに紛れて術を発動させて、私を拐うなり意識を乗っ取るなりしてくると思います」

「囮ににゃるにしても、他にやり方はにゃかったもんか……」

「どういった類いの術かわからない以上、かかってみるしかないと思いますよ。私には水神さんの加護があるから、他の誰かが囮になるよりは安全ですって。もし水神さんにとって未知の術だったとしても、きちんと乗り切ってみせますから」

「ですが、木箱に触れるだけで術にかかるにゃんて、よくわかりましたね」

「ああ、私を見た商人の1人が、やたらと木箱に乗せた商品をお勧めしてきたんですよ。さりげなく木箱そのものに触るように促してきたからのらりくらりと躱してたら苛つかれちゃって。触るべきか悩んでたらこの仔が舐めちゃったから、私が拭ったんです」


 隣でお座りしてるブラックドッグの頭をぽんぽんと撫でるみたいに叩けば、わっふ! と元気な返事が返ってきた。


「はあ。ま、レンゲ殿もフクマル殿もお前さんの作戦とやらを聞いて止めんかったし、エルゲ隊長殿も反対せにゃんだから受け入れはするが、充分に注意せいよ」

「わかってますって」


 どんな効果のある術なのか、本当に手出ししてくるのかわからないけど、今はやれることをやるしかない。

 せっかくのカルカナの祭なんだもの。私のせいで台無しになんかさせないよ。

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