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第130話 再会と招待

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

「はぁ~っはっはっは、怒られた怒られた」


 ため息をついた自分につい笑ってしまった。隣にいたアースレイさんが呆れ顔をする。


「だからもう少し大人しくした方がいいって言ったじゃないか。ロスネル帝国の人間が来てるって、斧のギルマスはわざわざ教えてくれてたのに」

「わざととは言え、騒ぎ過ぎましたねぇ」


 祭の初日を終えて、ギルマス達からのお説教をたっぷり喰らってからようやく家に帰ってきた。もうかなり遅い時間だな。代わりばんこに晩ご飯を食べててよかった。


「あれだけ騒げばトーナ町の連中にも気づかれたじゃろうにゃあ」


 イニャトさんがもいだ林檎を齧りながら近づいてきた。向こうでは福丸さんが木に抱きつく勢いで林檎を食べ続けてる。祭の間は我慢してくれてたもんなぁ。思う存分食べておくれ。


「トーナ町の商人が見に来ていたのをエルゲ隊長殿が確認しておった。まさかエルドレッド隊がおったとは思わにゃんだが、あの者達が町を守ってくれるのであれば安心じゃのう」


 にゃほほ、と笑いながら、イニャトさんが物置木に向かって手を振った。アーガスさんとライドさんがテントを組み立てるのをやめて手を振り返してくる。

 明日から、私達の出店の近くをアーガスさんとライドさんペア、エルゲさんとオードさんペアが交互に見張ってくれることになった。お金を払って正式に雇おうとしたんだけど、アシュラン王からの命令で来てるからいらないって言われちゃったんだよなぁ。でもお礼がしたいから、何かないかみんなで話して、朝ご飯をご馳走することになった。せっかくだから、イヴァさんの時みたいに泊まってもらおうって話になって、福丸さんに許可をもらって招待したんだよね。


「それで、明日からはどうするつもりじゃ?」


 疲れた様子の漣華さんが聞いてきた。背中の毛並みをニャルクさんとシシュティさんが頑張って梳かしてる。空の旅に連れてった男の子が興奮して思いっ切り掴んだり引っ張ったりしたらしいから、絡んじゃったんだよね。


「漣華さんも福丸さんも、ついてきてくれてありがとうございました。明日は私達だけで行ってみます。2人がいなくなって、向こうが動くかどうか見てみたいです」


 そう返したら、漣華さん達は頷いてくれた。

 ロスネル帝国にある国の商人が祭に店を出すって聞いた時、ドレイファガスとは関わりたくないって心底思った。でも祭には参加したい。だから私自身を囮に使って、トーナ町の連中が何かしてくるか試してみるって言ったら、みんな凄い勢いで反対したんだよなぁ。まあ逆の立場だったら私も反対するけどさ。


「トーナ町の商人は見に来ただけでしたっけ?」

「うむ。建物の陰から顔だけ覗かせておった。何やら必死に書き記しておったよ」


 書き記す……。こっち側のメンバーは知られてるだろうから、それ以外の何かかな。腹積もりがあるのかどうか知らないけど、手を出すつもりなら容赦はしないよ?


「祭は10日間やるんですよね? 向こうが何かしてくるとしたら、何日目ぐらいとか予測できます?」

「さあのう。こればっかりは儂らにもわからん。じゃから常に警戒を忘れんことだ」

「私のこの姿を見ても悪さってしてきますかね?」


 両耳をぴんと引っ張って見せれは、イニャトさんがなんとも言えない顔をした。


「まともにゃ奴にゃらば獣人、しかも獅子獣人に手出しにゃどせんわ」


 ん? 獅子獣人に?


「ライオンの獣人って、そんなに怖がられてるんですか?」

「百獣の王だから当然だよ。しかも最近は獅子獣人の数が減ってきてるから、余計に目立つし恐怖が増すんだ」

「マジですか」


 そりゃ悪かった。いや私のせいではないんだけど。


「でも、今日ジアーナちゃんはすぐに慣れてくれましたよ? マイス君達も最初は来なかったけど、その日の内には尻尾にじゃれてきましたし」

「あやつらは生まれにゃがらに獣としての本能を持っておる。じゃから獅子とにゃったお前さんを怖がりもするし、慣れるのも早い。種族としては怖くとも、お前さんじゃとわかっておるからのう」


 そっか。本能で危険がないって感じ取ってくれたわけね。嬉しいね。


「あの、獅子獣人の数が減ってるっていうのは?」

「一番の原因は神々が見守った戦争だよ。わかってるとは思うけど、獅子獣人は様々な種族の中で圧倒的強者。戦時中は常に前線で戦って、大勢が死んだんだ」

「戦後、国中に散っていた獅子獣人達は故郷に戻ったんじゃが、数が目に見えて減ったせいで意気消沈してしまったんじゃ。無理もにゃいのう。そして国を建て直しつつ過ごしておったらしいんじゃが、子が生まれにくいことに数年後に気づいたそうじゃ」

「アシュラン王が術師に調べさせたところ、ある獅子獣人が立ち入った場所が禁忌の土地だったみたいで、そこの呪いを受けてしまってたんだ。わざと入ったんじゃなかったとしても、言い訳は聞いてくれないからね」

「じゃあ、獅子獣人はその呪いのせいで出生率が低くなったと?」

「そうじゃにゃあ。今では戦前の4分の1にまで減ったらしい。呪いを解く方法は今も調べておるようじゃが、にゃかにゃかうまく行っとらんと聞くぞ」


 なるほど。大変だなぁ。


「そなたら、明日の準備はせんでいいのか? 売る物はあるのか?」

「「「あ」」」


 忘れてた。作ってた在庫ほとんど持って売っちゃったんだった。


「え? やばくないですか? 明日の分あります?」

「詰める前のドライフルーツならあるよ。詰める前の。ジュースは樽の中だ」

「詰めなきゃ」


 急げ急げ、このままじゃ間に合わないよ。




 ▷▷▷▷▷▷




 私とアースレイさん達姉弟がドライフルーツとジュースの準備を、イニャトさん達兄弟猫が苗木を急いで準備してたら、アーガスさんとライドさんも手伝ってくれた。なんとなく不器用そうなイメージがあったんだけど、なかなかどうして、器用だった。

 2人が手伝ってくれたおかげで、思ってたより早く準備は終わった。みんなでお礼を言えば、アーガスさん達はまた手伝うって言ってくれた。ありがたい。

 おやすみって挨拶して、アーガスさん達はテントに入っていった。ハンモックを勧めたんだけど、苦手だって断られた。イヴァさんの時みたいに、真冬でも風邪を引かないように、漣華さんの魔法を使ってもらおうと思ってたんだけどな。

 だからバウジオに添い寝をお願いした。バウジオがいれば温かいから寒くないよね。私達には芒月がいるし。

 さて、明日は祭2日目。どうなることやら。

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