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第126話 聞いてない聞いてない

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 雪解けまであと少しという頃に、何度目になるかわからない差し入れをサスニエル隊のところに持っていった時、そろそろ王都に帰還する、とヴァルグさんに言われた。


「王都に伝わる神託の中に、ユーシターニャの最期を見届けてはいけにゃい、というものがあるようで、鱗粉集めに来た騎士団はいつも適度にゃところで引き上げるそうです。もう充分集まったから、2日後を目安に森を出るそうです」

「そうですか。問題ないでしょうけど、道中お気をつけてと伝えてください」

「わかりました」


 ニャルクさんがヴァルグさんに伝えてくれると、ヴァルグさんは豪快に笑って肩をバンバン叩いてきた。痛い。


「王都の近くまで来ることがあったら是非寄ってくれ。いつににゃるかわからんが、その頃には元の姿に戻れてるといいにゃ、と言っておるぞ」

「あははー、余計なお世話です」


 本当に困ってんだよこっちは。便利っちゃ便利だけどさ。


『◎○、△』


 叩かれた肩を押さえていると、ルシナさんが苦笑いしながら声をかけてきた。最初に会った時より少しやせてる。というかやつれてる。

 王都に連れていかれたマニさんは徹底的に調べられたらしい。私が斬り離したチビコウモリも一緒に。結果、いくつかの異国の術が確認されたって、何回か前に差し入れに来た時に教えてもらった。本来なら部外者の私達に知らされることはないんだろうけど、今回はガレンおじ様から当事者扱いされたみたい。

 アシュラン王国からロネンタ王国に鎌をかける手紙を送ったらしいんだけど、尻尾は掴めなかったみたい。マニさんが仲よくしてた女の人にも確認を取ったっぽいけど、知らん顔だったとか。

 ルシナさんは従姉妹っていう関係から、責任を感じてサスニエル隊を離れようとしたらしいんだけど、ヴァルグさん含め他の隊員達が止めたらしい。そこら辺に関しては詳しくは聞いてないけど、どうにか思いとどまってくれたみたい。よかったよかった。


『◎~、△○◎~』


 にこにこしながらイヴァさんが近づいてきた。肩にはカフクルがいて、キョロキョロと私達の周りを見てる。赤嶺達を捜してるんかね?


「おチビ達は今日はおらんのよ。ごめんな?」

「キュイ」


 あちゃー、残念そうな顔されちゃった。1人だけでも連れてきた方がよかったかな。


「ニャオさん、イヴァさんがありがとうって言ってます」

「いえいえ」


 イヴァさんとルシナさんがにっこり笑い合ってる。前までのピリピリした空気はどこへやら、だ。

 ユーシターナの花粉も集められたし、イヴァさんはサスニエル隊と仲直りしたし。マニさんは、まあ残念だったけど、異国の術をかけられてたのは明白だから、奴隷落ちにはならないだろうってヴァルグさんが言ってたって、ニャルクさんから聞いた。


「ニャオ、そろそろ帰ろうぞ。ヴァルグ隊長殿達は撤退の準備もあるでの。これ以上は邪魔ににゃってしまう」

「そうですね。じゃあお暇しましょう」


 邪魔しちゃ駄目だもんね。あ、そういえば。


「イニャトさん、イヴァさんに確認してもらいたいことがあるんですけど」

「うにゃ? にゃんじゃ?」

「ブルードラゴンの亡骸を回収しましたか? って」

「ブ、ブルードラゴンとにゃ?」


 ブルードラゴンの亡骸を確認してからだいぶ経つけど、もう王都に持ってったのかな? 腐ってなけりゃいいけど。


「ちと待てよ。……どうやら、お前さんから許可をもらった次の日に転送魔法で王都に送ったらしいぞ。サスニエル隊が持つ“伝書小箱”をちょちょいといじってブルードラゴンのことを教えたらすぐに送れと返事があったんじゃと。内臓や牙にゃどは貴族やら研究機関やらに売られ、本体は剥製ににゃって王都の博物館に展示されとるようじゃ」


 ……マジっすか。


「内臓はわかるけど、牙もですか? 牙がないと迫力出ないんじゃ……」

「魔物を剥製にする時、牙や眼といった、外から見えるけど装飾品として価値のある部位は、宝石や魔石を代用することが多いんです。ドラゴンのようにゃ巨体にゃらにゃおのこと。あんにゃ魔物の剥製を飾れる豪邸にゃんてそうそうにゃいですからね」


 なるほど。ドラゴンなら牙だけでも存在感半端ないもんね。


「その内行くこともあろう。そうにゃれば見に行くといい。で、これが代金だそうじゃ」


 は? 代金? え、イニャトさんイヴァさんから何もらってるの? なんか小切手っぽく見えるんだけど? この世界にも小切手あるの?


「ふむ。王都の研究機関、魔法薬製造所が買い取った内臓と、貴族達が買った装飾部位。それと、危険にゃ魔物の討伐報酬の全部を引っくるめて、4億7000万エルじゃにゃ」

「……よんおく……」

「お、逆鱗はアシュラン王に献上されたらしいぞ。大層喜んでおったようじゃ。よかったのう、ニャオよ」

「ソーデスネ」


 献上するとか買い取りだとか、そんな話はしてなかったはずなんだけどな。こんなことならよく話しておけばよかった。

 新しく金庫用の木を植えるべきかな。もう物置木手狭なんだけど。


「イニャトさん、今までの貯金とかもほとんど残ってますけど、どうしたらいいんです? またそんな大金入っちゃって、どこにしまえばいいんでしょう?」

「買う物があれば買えばいい。にゃければ置いておけばいいだけの話よ。とりあえず、クァーディーニア殿とシルフェイア殿からもらったシスレンの蜜を集める用の蜜蜂を買おうではにゃいか。養蜂箱もいるのう」

「その蜜蜂って高いんですか?」

「さほど」


 減らないじゃん。まあいいか。


「次の納品の時に、ダッドに蜜蜂を買うにはどこに頼めばいいか聞いておこう。寒い内に買ってこれれば、春ににゃればすぐに働き始めるじゃろうからのう」

「そうですね。お願いします」


 もう無理に減らそうとしなくてもいいか。その内なんとかなるっしょ。

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