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第123話 怖くないの?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 くぐった瞬間阿鼻叫喚の地獄絵図になった。サスニエル隊のせいで。

 ニャルクさん達とヴァルグさん、ルシナさんは私を見て目を丸くしただけだったけど、隊員達に揃って悲鳴を上げられた。特に獣人族。毛を逆立てる人とか木に登る人とか、硬直して耳をぺたんと倒す人までいた。


「二、ニャオさん? その姿は?」


 あれ、アースレイさん〈万能言語〉使っていいの?


「ユニークスキル使って大丈夫ですか?」

「そんなこと気にしてる場合じゃないよ。どうしてそんな姿になってるんだい?」


 どうしてと言われても……。あ、アースレイさんが私よりちっちゃい。ほんの少しだけど。


「よくわからないんですけど、たぶん芒月のお父さんの魔力が私の中に流れ込んで、混ざったんだと思います。だからこんな姿になっちゃったのかと」

「うーむ、まさしく獅子獣人じゃのう。まっすぐじゃった髪もうねり上がって、まるで獅子のたてがみではにゃいか」


 ああ、そんなことになってんのね。凄く見てみたいんだけど、誰か鏡持ってないかな。


「ニャオさん、どうやったら元の姿に戻るんですか?」


 ニャルクさんが聞いてきた。なんか遠くない?


「漣華さんが来てくれたんですけど、その内戻るだろうって言ってましたよ」

「そうですか……。僕はまだいいんですけど、隊員の方達が……、ねぇ……?」


 まあ、確かにね。もう一度そっちに目をやれば、隊員達が猿団子みたいに集まってた。でも目線はこっち。ヴァルグさんとルシナさん、みんなを並ばせようとしてるのかな? 動かないけど。

 猿団子のすぐ傍にイヴァさんがいた。肩に乗ったカフクルの喉をくすぐってる。でも目線はやっぱりこっち。すんごい笑顔。あの人、私の耳とか尻尾狙ってそうだな。


「私がここにいたら邪魔になりそうだったら、家に戻っときましょうか? 事の顛末はシシュティさんが知ってるんで、皆さんに説明していただけると助かるんですけど」


 こちとら百獣の王だもんね。獣人族のあの反応は仕方がないと諦めよう。


「ちょっと待っておれ……。……ニャオよ、ヴァルグ隊長殿が、申し訳にゃいがそうしてほしい、と言っておるよ。後日正式に謝罪させてほしいらしい」

「いやいや、謝罪はいらないですよ。じゃあシシュティさん、お願いしますね」


 ユーシターナの花粉を集めないといけないし、その上隊員の後始末をしないといけないもんね。謝らなくていいから頑張っておくれ。

 シシュティさんの手を離せば、残念そうな顔をされたけど、ニャルクさんが説明してほしいと言えば頷いてくれた。


「じゃあお先に帰らせてもらいますね。おチビ達、誰か一緒に帰る?」

「あたしかえるー!」

「ぼくも!」


 声をかけたら緑織と橙地が駆け寄ってきた。はいはい、帰りましょうね。


「気をつけて帰るんじゃよ~」


 イニャトさん達が手を振ってくる。私も振り返して、緑織と橙地と一緒に川面を渡った。




 ▷▷▷▷▷▷




「ただいまー」


 ようやっと家に帰りついて一息つく。緑織達は早速百子のところに駆けていった。


「おや、おかえりなさい。お疲れ様です」


 返事はないと思ってたけど、福丸さんがいた。珍しく林檎を食べてない。


「福丸さんも、おかえりなさい。どこに行ってたんです?」

「野暮用ですよ。それよりニャオさん、ずいぶん逞しい姿になりましたね」

「ええ、いろいろありまして」


 あはは、と頬を掻けば、ふふふ、と福丸さんは笑った。


「ブルルッ」


 ん? なんの音? あ、香梅さんだ。久しぶりだねぇ。


「香梅さん、おかえりなさい。香梅さんも、今までどこに行ってたんですか?」

「フシュッ!」


 鼻を鳴らしながら、香梅さんが鼻先で何かを転がしてきた。黒い塊。ちょっと歪。バスケットボールぐらいあるけど、何あれ?


「トリューフですよ。かなり高額で取引されている食材です」


 トリューフ? トリュフのこと?


「マジですか。香梅さん、凄いの見つけてきてくれたんですね。ありがとうございます」


 頭を撫でれば、香梅さんはもっともっとと擦りつけてきた。いつもの姿ならよろめくんだけど、今なら大丈夫だな。いいねこの体。


「今晩のご飯に出しましょう。みんな疲れてるから、元気が出ますよ」


 トリューフを持ち上げて匂いを嗅いでみる。うん、大自然の匂い。

 調理方法はトリュフと同じでいいのかな? だとしたらパスタか。トリュフソースにして豚肉と食べても美味しいんじゃない? でもニャルクさん達に聞いてから作ろう。せっかくの高級食材なんだし、失敗したくないからね。


「モ~」


 家の木に繋いでた百子が鳴いた。私のこと呼んでる? 怖くないの?

 怖がらせないように近づいてみれば、長い舌で手を舐められた。相変わらずのザラザラ感。嫌いじゃないよこれ。


「ただいま百子。芒月も、ただいまって言いな?」

「グルルルゥ……。みゃう」


 借りてきた猫みたいに大人しくしてた芒月も、ちゃんと挨拶した。百子も鳴いて返す。いい仔らだね、本当に。

 さ、ニャルクさん達が帰ってくる前に、やれる仕事はやっとこうかね。

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