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第119話 ほんとよ?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 勝負はこっち側の完全勝利、とは言えなかった。頑張って集めたユーシターナの花粉の瓶は粉々。怪我人多数で、あちこちからうめき声が聞こえてくる。


「お前さんら、無事じゃったか」


 芒月を引きずるように抱えたイニャトさんが、えっちらおっちら近づいてきた。ぐずるおチビをよいしょと抱き上げて背中をさする。仔ドラゴン達もだけど、こいつも大きくなったからなぁ。


「私達は大丈夫です。ウェアウルフが2体来ましたけど、赤嶺とルシナさんが倒してくれましたから」

「そうか。セキレイや、よくやった。ルシニャ副隊長殿、ありがとう」


 イニャトさんがお礼を言うと、ルシナさんも頭を下げた。

 ニャルクさん達の方を見れば、アースレイさんの治療が終わったところだった。近づけば2人が顔を上げる。


「ニャオさん、おかえりにゃさい。無事でよかったです。あんまり無茶したら駄目ですよ」

「すみません。でも赤嶺達のおかげでなんとかなったんで」


 結果オーライじゃない? 私達の方には怪我人出なかったしさ。


「マニさんが逃げたって聞きましたけど、追いかけたのはシシュティさんだけですか? サスニエル隊の人は何人か行きました?」

「サスニエル隊の方達が数人追いかけました。マニさんは人間だからすぐに捕まると思いますけど、ワイバーン達以外の魔物を控えさせてる可能性もあるから油断はできません」

「そうですか……」


 周囲を見渡せば、サスニエル隊の隊員達はまだ治療中だった。ヴァルグさんも顔を怪我してて、イヴァさんが治療に当たってる。ルシナさんが傷を確認してるけど、凄く痛そう。

 離れたところでは事切れたワイバーンが3体落ちてて、1体は美影さんが頭をあぐあぐ噛んでた。頭蓋骨がバリバリ鳴ってる。あとの2体は仔ドラゴン達が競うように解体してて、ずるいー! って叫びながら赤嶺が急いで混ざりに行った。

 別の方に顔を向ければ、バウジオが綺麗におすわりしてばっふばっふ吠えてた。その正面にはブラックドッグが6頭おすわり状態で、ウェアウルフが5体正座してる。何あれ?


「あれは何をしてるんですか?」

「悪さをした奴らを怒ってるんですよ。困らせちゃ駄目って」

「なんでそれで魔物達が言うことを聞くんです?」

「バウジオの〈七聲〉の1つですね。同種や近縁種が相手の時、自分より魔力の低い者の言うことを聞かせることができるんです。ニャオさんに出会う前に、僕達も何度かお世話ににゃりました」


 そんな能力もあるのか。凄いなバウジオ。魔物達ヒュンヒュン鳴いちゃってるよ。


「ニャオさん、マジックバッグにポーションが入ってましたよね? サスニエル隊の方達に使いたいんですが、いいですか?」

「ええ、それはもちろんいいですけど。足りないんですか?」


 王都から派遣されてきてるのに、そんな不充分な装備だったの?


「テントに保管してあったそうですけど、マニさんがワイバーンとブラックドッグ達をけしかけてる間に盗んでいったみたいです。残ったのは隊員の方達がマジックバッグに入れていた十数本だけで、全然足りにゃくて」


 なるほど、そういうことか。

 マジックバッグからポーションを取り出して並べたら、全部で20本あった。予備を買っといてよかった。隊員を1人呼んで持っていってもらおう。

 受け取りに来たのはリラさんだった。疑ってしまって申し訳なくて頭を下げたら、リラさんは笑ってポーションを受け取ってくれた。

 リラさんがポーションを持ってヴァルグさんのところに駆けていく。誰に使うのか確認しに行ったのかね? 渡した数を合わせても、怪我人の方が断然多い。

 風が吹いて雪が強くなった。いっそこの雪が全部ポーションだったらいいのに。


「ニャオさん、こっちが片づいたらシシュティさんを追いかけましょう。ミカゲさんに乗せてもらえばすぐに追いつけるでしょうから」

「わかりました。じゃあポーションが行き渡らなかった人達の手当てをしましょう」


 そう言えば、ニャルクさんがアースレイさんに伝えてくれて、2人とも立ち上がった。


「イニャトさん、ルシナさん達の手伝いに行きましょう。……イニャトさん?」


 隣にいたイニャトさんに声をかけるけど返事がない。見下ろして見れば、ぽかんとした顔でサスニエル隊の方を見てた。


「のう、ニャオや」


 こっちを向かないまま呼ばれた。どしたの?


「なんですか? 何かありました?」

「お前さん、水神様に頼み事をしたか?」


 頼み事とな?


「いえ、してませんけど……」

「ふむ……。ではあれはにゃんじゃ?」


 前足で示された先は怪我人が集められてる一角だった。目をやれば、うめき声を上げていた隊員達が戸惑いと喜びに満ちていた。

 目を擦ってよく見ると、腕がざっくり切れた人とか毒にやられたっぽい隊員達が見る間に癒えていた。背中を袈裟斬りにされて脂汗を流していた隊員も、かすかに光りながら塞がっていく傷に表情を和らげてる。それを見た他の隊員達が戸惑いながら笑ってる。泣いてる人までいるよ。


「ニャオよ。もう一度聞くぞ?」

「……はい」

「お前さん、水神様に頼み事をしたか?」

「……この雪が全部ポーションだったらな~、なんて考えました。お願いはしてないですけど……」

「……はあ」


 イニャトさんにため息をつかれた。ニャルクさんが隊員達と私を目を真ん丸にして交互に見てる。しょげる魔物達をガン無視して寄ってきたバウジオが尻尾を振る。こっちの様子に何かを察したのか、イヴァさんとヴァルグさんとルシナさんに凝視された。

 そんなつもりじゃなかったのよ。ほんとよ? 嘘じゃないよ? 信じてよ。

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