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第116話 そんなんあるの?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

 寒天とはこのことか。そう思えるような冬の空を大の字になって見上げてる。雪の上に。何も敷かずに。

 ニャルクさん達がサスニエル隊のところから帰ってきてすぐに家に帰ったのはいいんだけど、役目とはいえ遊び過ぎた。脚がパンパンだ。筋肉痛が怖い。


『○✕、△□▽?』


 ああ、アースレイさん。そんな心配そうな顔しないで。帰って早々地べたに寝っ転がるなんて行儀の悪いことしてるけど基本元気だから。ちょっと立ち上がれないだけだから。むしろごめんね? 魔力使い過ぎてるところにまた〈万能言語〉使わせちゃって。


「アースレイよ。割り込んできたということは、何かわかったのかの?」


 イニャトさん、あんたはちょっとは気にしてくれんかね?


『◎、△□□○、□◎○▽』

「ふむ。そうか。ニャオよ、お前さんが水神様に頼んで悪い魔力を消してもらった結果、半鳥人の娘が焦っているのをリスが見たらしい」


 半鳥人ってなんぞや。


「なんですか、その半鳥人って」

「鳥類を先祖に持つ人間です。顔立ちは人間そのものですが、体の各部位に羽が生えています。翼は退化しているのでありません」

「鳥人という種族もおるぞ。そっちはくちばしや鳥の目を持つ、より鳥に近い人間のことじゃ。手が翼と一体化しておるからこっちは飛べるぞ」


 なるほど、そういう差があるのか。


「その半鳥人が犯人ですか?」

「まだわからんが、何か知っておるとは思う。で、サスニエル隊にどう持ちかけるつもりじゃ?」


 うーん、それが問題。


「真正面から行ってもこの前みたいに追い返されるだろうから、他の方向から行った方がいいですかね?」

「それはどうじゃろうか。ヴァルグ隊長殿はお前さんに謝っておったよ。この間はすまなゃいと」

「あら、そうなんですか?」

「うむ。何やらしおらしかったぞ。この前のようにゃつっけんどんにゃ男ではにゃかった。あの態度の変わりようはちと気ににゃるのう」


 前脚を組んだイニャトさんが首を傾げた。家の方から、毛布にくるんだ芒月を抱えたイヴァさんが小走りに駆けてくる。


『◎○~、○△□~』

「ただいまイヴァさん。芒月どうかしました?」


 なんかあったか? 寝転んでる場合じゃないな。

 急いで立ち上がって芒月を受け取れば、毛布の中からにょきっと前足が出てきた。おチビが服に爪を引っ掻けて、みゃう、と鳴く。お目目うるんでない?


「にゃんじゃ、寂しかったんか?」

「みゃうぅぅぅ」


 え? そうなの?


「目覚めたら出会ったばかりの人と2人きりだったら不安にもにゃりますよね。置いていってすみません」

「みゃう!」

「これ、怒るでにゃいわ。ここしばらく家から出らんかったもんが偉そうにするでにゃい」

「みゃううぅぅ!」

「怒るにゃと言うとろうに」


 やれやれ、とイニャトさんが呆れ顔をする。そういえば、もう1人の引き籠りはどうなった?

 芒月を抱いたまま物置木の根元に近づいて、置いてあった木桶の蓋を取った。

 木桶の中にいる清ちゃんは、初雪が降った日から竹筒に籠ったままだ。冬は水温が下がるから大人しくなるだけで問題ないって福丸さんは言ってたけど、本当に大丈夫かこれ。

 バウジオもまだ戻ってきてないな。百子のご飯についていってってお願いしてたけど、まだ食べてんのかね。

 木桶の蓋を戻すとニャルクさんに呼ばれた。みんなのところに戻る。


「今晩イヴァさんが〈星詠み〉でサスニエル隊を探ってくれるそうです。早ければ明日あちらに向かうことににゃりそうですよ」

「いつまでもうだうだしとっても終わらんからのう。クァーディーニア殿も待っとるじゃろうし、ちゃっちゃと終わらせてしまおうぞ」

「そうですね。こっちは神託を受けてるんですから、いざという時はそう言いましょう。そうすればさすがに言うことを聞くでしょうし」


 ……ん? ちょい待ち。


「あの、神託って? かなり前に下ってたって聞いてましたけど? てゆうか、受けてるって?」


 どゆことどゆこと? その言い方だと私達が神託を受けたみたいに聞こえるんだけど。


「神託は教会に下ることが多いんですが、稀に人間が受けることもあるんです。そして神託を届けるのも精霊の役目にゃんですよ」

「お前さん、トールレン町でラタニャ殿から頼まれ事をされたじゃろう? あれが神託として国に認められたんじゃ。今回のクァーディーニア殿の頼み事も同じ扱いににゃるじゃろうよ」


 初耳なんですが??


「ちょっと待ってください。神託って予言みたいなものじゃないんですか? こういうことが起こるとか、尊い者が生まれるとか、そういうのだと思ってたんですけど?」

「そういうのもあったらしいが、神からの頼まれ事も神託の一種にゃんじゃよ。こういうことが起こるからこうしろ、という感じでのう」


 うっわ、マジで? 私神託受けちゃってたの? 無意識に? そんな大事なもんこんな授かり方でいいのかな?


『◎○~』


 私達の話を聞いてたイヴァさんが、杖を取り出して私の頭の上にかざした。ぽわん、と四角い板が浮かぶ。ステータスか。懐かしいな。

 私のステータスをニャルクさん達が覗き込む。読めない私は待て状態。私のなのに。


「……あー、ニャオよ。にゃんと……、にゃんとまあ……」

「これは……、うん……。えっと……、はい……」

「なんです? 教えてくださいよ」


 言い淀むニャルクさん達を急かす。とっとと教えんかい。アースレイさん達も同じような顔をしてる。楽しそうなのはイヴァさんだけだ。朝日を浴びた樹氷みたいにキラッキラしてる。


「えーっと、こほん。諸々は飛ばしますが、称号のところに〔神託を浴びし者〕が追加されてますね」


 なんか増えてるー。え、神託って浴びるもんなの?


「授かるや賜るでもにゃく、浴びるとは……。お前さん、今後も精霊達から頼られそうじゃにゃ」

「……目立ちたくないのに。引き籠っていたいのに……」

「無理じゃろうにゃあ。諦めよ」


 ちくしょうめ。

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