第115話 お邪魔のお邪魔
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頭上から大勢の騒がしい声が聞こえてきた。声色しかわからないけど、戸惑う声とか喜ぶ声とか、嬉しそうな声の方が多い。
サスニエル隊がいる川の底に立って、川面を見上げてから隣にいるイヴァさんを振り返ればにっこり笑われた。
少し前、水神さんにお願いしてユーシターナがいるエリアの悪い魔力を浄化してもらった。その上でイヴァさんも水中で呼吸できるようにしてもらって、イヴァさんには持ってきてたマジックアイテム“一時の凪”っていう器を使ってもらった。
魔力を注ぐことで時間制限つきの結界を張れる物らしく、イヴァさんの魔力をあちらさんに悟られなくできるんだとか。イヴァさんの魔力量だと1週間は張り続けられるらしい。それがどれぐらい凄いことなのかはよくわからないけど。
「ニャオ、おじさんたちよろこんでる?」
近くをゆらゆら揺れてた緑織が聞いてきた。
「喜んどるよー。これで仕事がはかどるわぁ」
緑織が肩に乗ってきた。水中だからいいけど、これを地上でやられたら肩が死ぬな。大きくなったもんだ。そういやちょっとだけ飛べたって言ってたな。成長したもんだ。
『◎○△○~、□□◎~』
「イバねえちゃんがね、ありがとって言ってるよ」
「どういたしましてって返してくれる?」
「はーい。イバねえちゃん、ニャオがどーいたしましてってさー」
「◎~」
サスニエル隊の様子を近くで確認したかったから、においで獣人族に気づかれないよう風下から川に入ってここまで来たのはいいけど、当然ニャルクさん達はついてこなかった。アースレイさん達も地上で何かあった時の為に待機してくれてる。前にブルードラゴンに襲われた場所だから、余計に警戒してるみたい。
『▽~』
緑織が乗ってるのと反対側の肩をちょんちょんとイヴァさんにつつかれて、指差す方に目を向けた。
『○✕□▽~、△□~。○◎~?』
「イバねえちゃんがね、あれもらってってもいい? って言ってるよ?」
あれ? ああー、まだあったんだ。
指差された先にあったのは、いつぞやのブルードラゴンの亡骸だった。大きいのに気づかなかったよ。
「そりゃいいけど、腐っとるかもしれんよ? それでもいいか聞いてみて?」
「はーい」
あのブルードラゴン、死んでそこそこ経つから腐敗が始まってると思うんだけど、それでもいいのかね? やっぱり貴重な素材なのかな。解体屋に持ってくべきだったのかもしれない。レドナさん喜んだかも。
結局、ブルードラゴンの亡骸は今回のことが片づいたらイヴァさんが持って帰ることになった。どうやって運ぶんだろう。マジックアイテムかな。
「とりあえず、花粉については問題なさそうやから、ニャルクさん達のところに戻ろう」
そう言えば、緑織に翻訳してもらったイヴァさんは頷いてくれた。
サスニエル隊に悟られないよう、風下である川上に向かって歩き出す。イヴァさんの後についていきながら、ちらっと川面を見上げた。
ユーシターナの花粉が順調に集まり始めたら、悪い魔力を流してる奴は、イヴァさんに呪詛を放った奴は慌てるはず。こっちがあぶり出しに行かなくても尻尾を出すと思う。
クァーディーニアさんは奴って言ってたから、敵は1人だ。怪しい動きをする1人を見つければ済む。うまく行けばいいけど。
▷▷▷▷▷▷
「では、今後の作戦を確認しますね?」
家に戻ってみんなでテーブルにつくと、ニャルクさんが森の地図を広げた。
「僕とイニャトはサスニエル隊に差し入れのシュテムを持って合流します。シシュティさんは同行してください。アースレイさんは別行動で、僕達が話してる間に川の向こうの動物達に怪しい人物がいにゃいか確認してください。もし声をかけられたら、コウメさんを捜してるって言えばにゃんとかにゃるでしょう」
「お前さん、ブルードラゴンはもういいのか?」
「そんにゃこと言ってる場合じゃにゃくにゃりましたからね。我慢します。で、イヴァさんは呪詛をかけられたのを利用して、体調を崩したという理由でここに残ってノヅキといてください。ついてきたら駄目ですよ? 敵が一番警戒してるのはイヴァさんでしょうから」
『◎~』
「あの、私は?」
「ニャオさんは川を渡らず、川越しに僕達を見ててください。仔ドラゴン達と遊びにゃがら。そうすればただの呑気にゃ人に見えるでしょうから、敵は警戒しにゃくにゃるかもしれません」
なるほど。私だけアホになれと。
「儂らはさりげにゃ~く、レンゲ殿達がいにゃいと言っておくよ。ユルクルクスとベアディハングが不在とわかれば、敵は多少大胆に動くかもしれん」
「サスニエル隊の隊長にも報告せずに動くんですから、充分注意してくださいね。気づかれたら説明しにゃいといけにゃくにゃりますから」
はあ、とニャルクさんがため息をついた。その言い方だとヴァルグ隊長がめんどくさいみたいに聞こえるんだけど?
「セキレイ。きょうだい達をちゃんと見ててくださいね?」
「わかった。がんばる」
名指しされた赤嶺が胸を張った。誇らしげだなぁ。
「では、クァーディーニアさんからのお願いを解決する為に、みんにゃで頑張りましょう!」
「ほどほどにのう」
おー! と右の前足を挙げたニャルクさんの隣で、イニャトさんは林檎ジュースを一口飲んだ。この温度差よ。




