第114話 犯人捜し
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「騎士団への入団を希望する者は事前に素性を調べられるんじゃよ。敵国の生まれであったり、過去に罪を犯しておったりする者を簡単に引き入れるわけにはいかんからのう」
「まあ、だからと言って頭ごにゃしに拒絶するわけじゃにゃいんですけどね。個人としてちゃんと見て、その上で判断して入団させるかどうかを決めるんです。にゃので問題を起こす者はそうそう現れにゃいんですが……」
「今回はそうは行かなかった……、ってことですね」
翌朝、牧草地で百子の朝ご飯につき合ってる間に、ニャルクさん達から騎士団について教えてもらった。
「イヴァさん、犯人見つけられますかね?」
「アースレイ達も頑張ってくれておるが、どうじゃろうにゃあ……」
昨日はアースレイさん達の家に泊まったから、イヴァさんには私が普段寝てる敷布団で寝てもらった。暖かい時期ならハンモックでもいいけど、冬は風邪引くし寝られないだろうからね。そのイヴァさんは今〈星詠み〉のスキルでサスニエル隊の人達を探ってくれてる。大小様々な魔法陣が浮かび上がって凄く綺麗。
アースレイさんは〈万能言語〉を使っていろんな動物や虫達から情報を集めてくれてるけど、怪しい動きをする人はいないみたい。隊長達の目を盗んで動くぐらいだから、かなり慎重になってるんだろうな。
「このまま犯人見つからなかったらどうします?」
ちょっと不安になって聞いてみたら、イニャトさんがにゃほほって笑った。
「そうにゃったら仕方のにゃいことよ。儂らの手に負えんかった。そういうことじゃ」
「全ての事柄を滞りにゃくこにゃせる方はいませんよ。それに、もしユーシターニャの鱗粉、花粉が充分にゃ量手に入らにゃかったら輸入すればいいんです」
え? 輸入できるの?
「他国にもユーシターナがいるんですか?」
「他国は他国じゃが、隣の大陸からじゃよ。ユーシターニャそのものはおらんが、それに似た効果を持つ素材があるらしく、過去に何度か輸入して代用したと聞いたことがある。しかし輸入費にゃどもかかる故、価格が上がるのは避けられん」
そっか。まあ作れなくなるよりはマシだよね。
「輸入はあくまで最終手段です。まずは邪魔してる奴を頑張って捜して捕まえにゃいといけません。クァーディーニアさんからの頼みでもありますし、できる限りのことはしましょう」
そう言いながら、ニャルクさんは牧草を食べる百子の鼻を撫でた。顔を上げた百子がニャルクさんの顔面をべろりと舐める。ああ、びっちょりだ。
「モモコや。腹が膨れたにゃらそろそろ戻ろうぞ。アースレイ達が何か見つけたかもしれん」
イニャトさんや。その前にお兄ちゃんが顔を拭く時間くらいおくれよ。必死こいて顔拭ってんの見えてるでしょ?
▷▷▷▷▷▷
『◎○~、△▽○~』
家に戻るとイヴァさんが笑顔で手を振ってくれた。おかえりって言ってくれてると思うから、ただいまって返しながら手を振り返す。イヴァさんの向こう側にあるテーブルにはアースレイさんとシシュティさんが突っ伏してた。何があった。
「戻ったぞ~。にゃんじゃあお前さんら、そんにゃに疲れた顔して」
『◎○、✕▽□▽……』
あ、アースレイさん〈万能言語〉使えてないな。結構魔力使っちゃったのかな。
「ふむふむ。そうか。ニャオよ、アースレイは収穫にゃし、だそうじゃ」
いやいや、そんなはっきり言わんでも……。
「えーっと、シシュティさんは何をしてくれてたんですか?」
「サスニエル隊を直接見張ってくれてたそうですよ。隠密行動に長けた種族ですから」
あら、そうなのね。
『✕✕✕△✕……。□✕……、△✕▽……』
「にゃるほど……。はい、ありがとうございます。ニャオさん、サスニエル隊は今のところ、例年の半分の半分以下の花粉しか集められていにゃいそうです。ヴァルグ隊長の機嫌が急降下してるんだとか」
半分のさらに半分以下……。うーん、酷い。邪魔をされてることに気づいてないなら、余計に焦るだろうね。
「誰が犯人かわからない以上、サスニエル隊に直に言いに行くわけにはいかないし……。どうしましょうか」
〈星詠み〉をしてるイヴァさん以外の全員で考え込む。誰かから何かいい案が出ないものか。
仔ドラゴン達は美影さんが連れていってるから誰も残ってない。そろそろ飛ぶ練習を始めたいって言ってたから、森の斜面辺りに行ってるのかな。
芒月は相変わらず家の中で毛布にくるまってる。香梅さんは最近どこかにお出かけ気味。鼻を泥だらけにして帰ってくることが多い。漣華さんと福丸さんも姿がない。喚べば来てくれるんだろうけど、今はその必要はないかな。
『✕▽✕△~、□……』
たくさん浮かんでた魔法陣を消して、イヴァさんが輪に加わってきた。疲れた顔の耳元にはあげたピアスが光ってる。元々つけてたのとつけ替えてくれたみたい。嬉しいね。
「〈星詠み〉を使っても犯人は見つからにゃかったそうです」
「そうですか……」
〈星詠み〉は探知スキルの上位互換みたいなレアスキルだって聞いたけど、それでも特定できないとはね。こっち側ができることはあらかたやってみたけど、やっぱり駄目か。水神さんに頼んで特定してもらうしかない? ……いや。
「じゃあもう、あれですね」
「うん? どうした?」
イニャトさんが首を傾げる。
「やめましょう。犯人捜すの」
「……は? え? どうしてですか?」
ニャルクさんが目を丸くした。私のセリフをイニャトさんが翻訳すれば、他のみんながバッと私を見た。
「犯人捜しをやめて、違う方向から攻めるんですよ」
「違う方向から?」
「はい」
ニヤリ、と笑って見せる。
「仕事の邪魔をする奴の邪魔をしてやりましょう」




