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第113話 合流

「で、どうやって犯人を捕まえるんです? 捜し方は?」


 ニャルクさんに聞かれて、うーんと唸ってしまった。考えてなんかなかったし、いい方法見つかるかな。


「とりあえず、イヴァさんと合流しましょう。もう一度川を渡って、怪しまれないようにサスニエル隊から引き離して……」

「その必要はない」


 え? とみんなで振り返れば、漣華さんが大きな魔法陣を描き上げていた。福丸さんがいなくなってる。


「なんでですか?」


 聞いたけど、漣華さんが答えてくれる前に魔法陣からイヴァさんが出てきた。私達を見て目を丸くしてる。その後ろから福丸さんが四つん這いでのっそのっそと歩いてきた。林檎は加えたままだ。


「お待たせしました。呼んできましたよ」

「え? どうやって?」

「トールレン町でわたくしの仲間がお世話になったのでお礼がしたいと言ったら快く送り出してくれましたよ」


 あ、そゆこと。もしかして、厄介者は私達だけじゃなかったの?


『◎○~、◎△□◎~』


 イヴァさんが物凄い笑顔で両手を振ってきた。仔ドラゴン達が嬉しそうに駆け寄っていく。

 うん、ひとまず第一関門突破ってことでいいかな?




 ▷▷▷▷▷▷




 ニャルクさんに頼んで、クァーディーニアさんと出会ったこと、クァーディーニアさんから聞いた話を全てイヴァさんに話してもらったら、イヴァさんは困ったように首を傾げてしまった。国に忠誠を誓うはずの騎士団からそんな輩が出ればそうなるよね。

 その後、不届き者をどうやって割り出すか話し合ってたら暗くなってきたからとりあえず腹拵えをすることにした。

 夕ご飯には簡単に食べられるサンドイッチとスープを用意した。カツサンドが一番多くて、他にタマゴサンドとハムサンド、ジャムサンドも少々。

 アースレイさん達はいつものことだけど、イヴァさんもかなり食べてる。一緒に来たコウモリのカフクルは桃の木に止まって花を齧ってる。あれでいいのか。


「では、エルドレッド隊の方達は今別の任務についてるんですね?」

『○~、○△◎、□◎~』

「うーむ。イヴァンニャ殿が協力者である以上、サスニエル隊への過度な詮索はできんのう。あのアーガスという男がおれば、適度に強引に入り込んでいきそうではあるが……」

『◎○◎~、✕▽□✕~』

「にゃぬ? 既に喧嘩済みとにゃ? 見た目通り、血の気の多い男じゃにゃあ」


 話がはずんでるなぁ。アースレイさん達も頬張りながら聞き入ってるし。……いや、それどころじゃないな。あれは放っといていいんかね?

 ここに来た時は普通だったのに、夕ご飯の支度をしてる間にイヴァさんの顔がどんどん見えなくなっていった。見たことのない黒いもやが少しずつ覆い始めて、今は毛玉の被り物をしてるように見える。

 ニャルクさん達はもやに気づかずに話し続けてる。ちらっと横に目をやれば、もやが見えてるのは漣華さんと福丸さんだけみたい。

 あれって絶対いいものじゃないよね。なんか、首のところのもやが形を紐みたいに変えて少しずつ絞めていってるし。どうしたらいいんだろう。

 林檎を飾り切りしてた手を洗う。この隙に水神さんに聞いてみよう。

 水神さん水神さん。あの黒いもやが悪いものなら、どうすべきか教えてください。

 ばれないように合掌してそう尋ねれば、急にピアスが思い浮かんだ。私のバンクルと同じ神宝石で作られた、つける人がいないあのピアスだ。

 手を拭いて、マジックバッグの中から木箱を取り出す。イニャトさんが気づいて声をかけてきたけど、ちょっと待ってもらおう。

 木箱を片手にイヴァさんの隣に立つ。もやのせいで見えないけど、たぶんこっちを向いてる。木箱の蓋を開けてピアスを取り出せば、イヴァさんが息を飲む音が聞こえた。


「ニャオさん?」


 アースレイさんが椅子から立ち上がった。シシュティさんの鼻がピクピク動いてる。両手でピアスを片方ずつ持って、イヴァさんの耳辺りに持っていけば、黒いもやが晴れて驚いている美人が見えた。


「おお、正解だ」


 つい呟けば、くはは、と漣華さんが笑った


「ニャオよ、よく気づいたのう。見えておるとは思ったが、まさか祓うまでやるとは思わなんだ」

「漣華さん、あのもやが何か知ってるんですか?」

「もちろん知っておる。それに、イヴァンナも気づいておったぞ?」

「え? あれ、もしかして邪魔しちゃいました?」


 あれま。そうだとしたら申し訳ないことをしたな。


「待っておくれ。話が見えんぞ。ニャオ、お前さん何をしたんじゃ? もやとはにゃんのことじゃ?」


 イニャトさんが食べかけてたジャムサンドを皿に置いて聞いてきた。アースレイさん達も身を乗り出してきたから、もやが見えたこと、水神さんに尋ねたらピアスを使えって感じの返事があったことを教えた。


「あのもやは呪詛の一種でな。悟られぬように対象を少しずつ弱らせる類いのものじゃ。弱った者はいずれへまをし怪我をする。最悪命を落とすことにも繋がる厄介な術よ」


 こっわ。何それ。てゆーか、そこまで知ってて放っといたの? なんで?


「神宝石はあらゆる不幸を祓う力を持つ故、あの手のものに使うのが最適と言える。イヴァンナが自力で祓わなんだのは、探りを入れて術者を特定する為よ」

「え゛。じゃあ私、とんでもない邪魔しちゃったってことですよね?」


 うっわ、最悪じゃん。

 イヴァさんを見れば、ピアスを見つめたままぴくりとも動かない。それこそテーブルの下でサンドイッチの肉のみを食べてた仔ドラゴン達が心配するほどに。

 微動だにしなかったイヴァさんが、ガタンッ! と椅子を倒しながら立ち上がる。やばい、怒った?


『~~~~~◎◎◎◎~!!』

「ぬぉおっ?!」


 怒られるかと思って身構えてたら、異様なほどにキラッキラした笑顔で抱き締められた。苦しい。シシュティさん達の怒鳴り声が聞こえてくる。こんな場面でやきもちはやめて。

 結局ピアスはイヴァさんにあげることになった。小躍りしながら喜んでたから結構嬉しい。そのかわり、不機嫌になったシシュティさんとアースレイさん姉弟と今夜一緒に寝ることになった。ご機嫌取りも大変だね。

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