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第111話 厄介者?

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

「イヴァさんは、ユーシターニャの鱗粉が思うように集まらにゃいから力を貸してほしくてニャオさんを呼んだみたいにゃんですけど……」


 なんとも言えない表情でニャルクさんが言った。隣にいるイニャトさんは尻尾をぶんぶん振ってる。バウジオに当たってるんだけど。


「まあ、はい、えーっと……。あちらさんにとってはお呼びでなかった、と……?」

「にゃぅ……、そうみたいです」


 ニャルクさんの耳がぺたんと垂れてしまった。悪くないのに、可哀想。

 少し離れたところにいるのはトールレン町で出会ったイヴァさんだ。隣の森に来てるなんてびっくり。挨拶もそこそこに、イヴァさんは若い男女と睨み合ってる。誰? って聞いたら、イニャトさんがサスニエル隊の隊長と副隊長って教えてくれた。

 イヴァさんはエルドレッド隊の所属かと思ってたけど、実際は協力者ってやつらしい。アシュラン王国の中で、優秀な人材はガルネ騎士団員じゃなくても有事の際はお呼びがかかることがあるみたいで、イヴァさんもその1人なんだとか。凄いね。

 その凄いイヴァさんがサスニエル隊のツートップと険悪になってる。ニャルクさんが言うには、イヴァさんは私の掌紋の力を借りたくて、サスニエル隊の2人は借りたくないみたい。

 遊びに行ってた藍里に、イヴァさんが待ってるって言われて急いで来てみればこのあり様だ。もう帰りたい。


「呼びつけておいて無礼な奴らじゃな。焼き払ってくれようか」

「待って待って待って」


 最近よく見る漣華さんチンアナゴバージョンに待ったをかけた。焼き払っちゃ駄目だって。向こうは国の所属なんだから喧嘩売っちゃ駄目。あっちにいる隊員達がビクビクしてんじゃん。


「ほれ、もう戻ろうぞ。家ではノヅキが凍えておるんじゃぞ? ランリも、こやつらの邪魔をしてはいかん」

「えー……」


 私の足元にいた藍里が不満そうに口を尖らせた。抱き上げて頭を撫でてやる。重い。


「藍里、ニャオ達と帰ろう。イヴァさん達はお仕事があるけぇ、また遊んでもらおうな」

「ぶー……。わかったよぉ……」


 ぶうたれながらも、藍里は頷いてくれた。よしよし、いい仔だね。


『◎○、△□○?』


 漣華さんにお願いして帰ろうとしたら、イヴァさんが近づいてきた。申し訳なさそうな顔してる。私がそっちの立場ならおんなじ顔しただろうな。


「せっかく来てくれたのにすまんと言っておるよ」

「気にしてないって言ってくださいな」


 イニャトさんに伝えてもらったら、イヴァさんはほっと安心したみたいに微笑んだ。肩にくっついてるでっかいコウモリも笑ってるみたいに見える。で、そいつ誰?


「イヴァンナよ。妾達は帰る。鱗粉を集めるのはいいが、川を渡るではないぞ」

『◎、○△』


 手を振るイヴァさんに手を振り返して、私達は漣華さんの魔法陣をくぐって家に帰った。


「おかえり。どうだった?」

「どう、ねぇ……?」


 青々しい牧草を百子に食べさせてたアースレイさんに声をかけられた。さっきまでの雰囲気とは全く違うほのぼのする光景に、つい疲れた顔で返してしまった。


「何かあったのかい?」


 あ、怪しまれた。


「呼ばれたから行ったものの、サスニエル隊の奴らから厄介払いされてしもうた。ニャオのことは掌紋保有者として当然知っておるが、イヴァンニャ殿からの紹介というのが気に入らんかったようじゃ」

「なんだいそれは。まるで子どもじゃないか」

〖全くだよ。せっかく話ができる人間が来たと思ったのに追い返すなんてありえないよ〗

「確かサスニエル隊は隊長と副隊長がほぼ同時期に変わったんですよね。今の2人は優秀だけど、前隊長達に追いつこうと必死ににゃってるって聞いたことがあります」

〖だからって加護持ちをあしらうなんてあっていいのかい? 下手したら神罰ものだよ?〗

「儂らにそんにゃことを言われても困るわい。ああいう態度を取るんにゃら何が起こっても自分達で責任を取るじゃろうて。……誰の声じゃ?」


 うん、聞き慣れない声が会話に混ざってるね。幻聴じゃなくてよかった。

 周りを見てみれば、夕ご飯を食べるテーブルの縁に男の子が座ってた。二対の透明な翅が生えてる。だけど身長は私の掌ぐらいしかない。


「どちら様?」


 びっくりして固まってるニャルクさん達はほっといて、とりあえず尋ねてみる。私から名乗るべきだったかな?


〖僕はクァーディーニア。はじめまして、スィグ・ツァリドナ。君のことはラタナから聞いたよ〗

「ああ、ラタナさんのお友達でしたか。じゃあ精霊さんですか?」

〖そうさ。風の精霊だよ。ラタナとは違って大陸中を吹き渡ってるんだ〗


 そう言って、クァーディーニアさんは空中をくるりと一回転した。お見事。


「また妙なのが来たのう……」


 のっしのっしと漣華さんが歩いてきた。チンアナゴは卒業してる。


〖あ! ビャクレン! 久しぶりだね。髭伸びた?〗

「伸びとらんわ。それよりそなた、どうやって入った? ここはフクマルの結界の中じゃぞ?」

〖フクマルって誰だい?〗

「シヅがダイゴロウと呼んでおったベアディハングじゃ。知っておるじゃろう?」


 え? 福丸さんダイゴロウさんだったの? そんな名前あったんだ。……なかなかいい名前だね。


〖ああ、ダイゴロウね。入ーれーてーって念話で言ったら入れてくれたよ。今は寝床で林檎食べてるんじゃないかな〗

「……あやつ、一冬中食い続ける気か?」


 漣華さんが呆れた顔で言った。確かに冬場は魔物の動きが鈍るからってパトロールの頻度が下がってるし、その時間を食べることに使ってるもんなぁ。メタボにならないかな。


〖食いしん坊ダイゴロウのことは置いといてさ、僕の話を聞いておくれよ〗


 舞い上がったクァーディーニアさんが目の前に来る。物置木の向こうから仔ドラゴン達のはしゃぐ声が聞こえてきた。藍里の奴、教えに行ったな?


〖このままじゃあユーシターナが還れない。手を貸してほしいんだ、スィグ・ツァリドナ〗


 還る? どこに?

 え、私また巻き込まれるの? 静かに細々暮らしたいだけなのに、なんでこうなるかな。

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