第10話 イケメンだって犯罪です
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『○○△~♪』
『▽○□▽!』
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地図に載っていた村にたどり着いて早2時間。本通りみたいなところの花壇近くのベンチに座って30分。
「元気な村だなぁ」
目の前を行き交う村人達の元気のよさに圧倒される。
食べ物を買いに来た人、売る人。悪戯をして怒られるやんちゃ坊主。走り回る子ども達。
「住んでた都会より故郷に似てる」
あ、やんちゃ坊主が逃げた。
「あの屋台焼き鳥? 美味しそう」
お母さん足早っ! もう掴まえた。
「本屋いいなぁ。あー、でも読めないか……」
引きずられていくやんちゃ坊主を子ども達が指差して笑ってる。
にこにこにこにこ
……見ないようにしてたのに。
やんちゃ坊主を眺めていたら、目を合わせないようにしていた真横に座るイケメンの眩し過ぎる笑顔を見てしまった。
どうしてこうなった……。
村の入口の門を通るのに身分証明が必要とは正直思いつかなかった。異世界物の小説でよく読んだというのに、不覚。ならず者対策なんだろうけど、もちろん持ってない。
どれだけ説明しても、言葉が通じないから伝わるわけがない。門番達から不審者を見る目で見られて寄るのを諦めようとした時、どこからか現れたイケメンが一番偉そうな門番のおじさんと二言三言話した後手を掴んできて、引っ張られるままに村に入ってしまった。
保存食や服を買う為にふらふら歩く私の後ろをついてくるイケメンを、どうにも撒けない。
目的がわからない……。でもこいつがいなかったら入れなかったしなぁ……。
素性がわからなくても、恩がある相手を無下にはできない。でも怪しい。置いていくのは気が引ける。1人で歩きたい。
うーんと唸っていると、心配そうな顔でイケメンが覗き込んできたから、軽く笑ってやり過ごす。あんまり近づかれたくないんだなぁ。
『○✕~!』
通りの向こう側を歩いていた数人の男女の内の1人がこっちに向かって手を振ってくる。イケメンの知り合いらしい。
『○✕♪』
『△□○!』
他の男女もイケメンに気づいて笑顔になる。イケメンはにこにこしていた顔をもっと眩しくして立ち上がった。
よかった、もう行くらしい。
ほっと胸を撫で下ろした直後、さく、と耳元で音がした。
「えっ……?」
髪を引っ張られた感じがして頭に手をやる。感触がおかしい。
イケメンを見ると、凄くいい笑顔でこちらを見てるんだけど、その手元には小振りのナイフと、黒い髪が1房。
どう見ても私の髪の毛だよね。
ポケットから出した紙で黒髪を丁寧に包んだイケメンは、今まで以上の笑顔で手を振って去っていった。
「えぇ~? 目的それ~?」
立派な傷害罪だよあんた。
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場所を移して気持ちを切り替えよう。切られたものはしょうがない。首じゃなかっただけよしとする。
奥まった小道を進んだところにある休憩所に腰を下ろして、マジックバッグを開いて買った物を確認する。
まずは地図。今まで持っていた物は狭い範囲しか描かれていなかったから、もっと大きな物を買った。
ギルドとか本屋でしか取り扱ってないかと思ったけど、通りにあった屋台に普通に売ってたから助かった。旅人向けだったらしく、役立ちそうな物が他にもいっぱいあったものの、あんまりお金は使えないから我慢した。
屋台は年配の女性が店番をしていて、イケメンと始終和やかに話していたけど、言葉が通じない私を見てA5ぐらいの正方形のノートを1冊とペンを1本くれた。
あったら便利だと思ってお金を払おうとしたら断られて、机に置いたら痛いぐらいの力で手を掴まれて返されたから、素直に受け取った。
次はツルハシ。山を登る時とか、ちょっとした物をどけたい時に重宝することは政叔父さんから教わった。
そして塩と胡椒。粒の大きさ的にそのままでは使えないからミルも同時購入。これで肉がもっと美味しくなる。
一通り確認して、マジックバッグに戻してから短剣を取り出す。
でっかいカモシカの一件以降毎朝鳴き続けた短剣だったけど、村に着く2日前に鳴きやんだ。心底ほっとした。
短剣をしまい、金具を閉じる。あとほしいのはテントだ。
道中一晩過ごせそうな木はどこにもなかったから地面に寝ることになったけど、虫の羽音や草が顔に擦れて度々起こされた。村には宿もあるけど高い。今後のことを考えるとテントがほしい。
ぐぅぅぅ
お腹が空いた。とりあえず、屋台で何か買って食べよう。




