第95話 町へ
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漣華さんのところに戻ると、既にみんな集まっていた。私がラタナさんと話してるのを見て、急いで合流したみたい。ラタナさんから聞いた話を伝えると、ニャルクさん達は目を見開いた。
「それはまずいのう。にゃんとしてでも食い止めねば」
不安げな紫輝の頭を撫でながらイニャトさんが唸る。ニャルクさんから話を聞いたエルドレッド隊の人達は険しい顔をした。
「蛹になってしまったアタナヤをどう処理すればいいんでしょうか? もう時間がないですよ?」
空は山側が赤くなり始めていた。すぐ夜になってしまう。何人の子どもが水を飲んで、何個の蛹があるのかもわかってないのに。
「ひとまず町に戻ろうではないか。エルドレッド隊よ、そなたらはギルマス達と合流し夜に備えよ。こちらはこちらで動く」
そう言って、漣華さんは魔法陣を描き上げた。鼻で背中を押してくる。魔法陣をくぐろうとして、あっ、と思い出した。
「ちょっと待ってください、赤嶺達が帰ってきてません!」
水路に残る卵退治を任せたままだ。呼び戻さないと!
「安心せい。妾が連れ戻す。ほれ入れ」
「ちょっと?!」
ぽいっと、魔法陣に放り込まれてしまった。出たのはギルド前。冒険者やら商人やらに驚かれるかと思ったけど、逆に驚かされた。
ギルドにはたくさんの人々が詰め寄せていた。怯えたように、怒ってるみたいに口々に何か叫んでる。対応に追われるギルド職員が右往左往しているのが見える。
「なんなんこれ……?」
誰もこっちに気づかない。完全にパニックになってる。何があった?
「ああ、まずいですね」
青蕾と一緒に出てきたニャルクさんが言った。
「これ、なんの騒ぎです?」
「ギルドから御触れが出たんですよ。湖から引いた水に魔虫の卵が混ざってるから家畜に飲ませにゃいようにって。そうしたら水を飲んだと子ども達が親に泣きついて、こんにゃ騒ぎににゃったんでしょう」
そっか、そりゃあ騒ぐよね。よく見れば泣いている子どもが何人かいる。人間の子と獣人族の子、全部で6人ぐらいか。
イニャトさん達とアーガスさん達も魔法陣から出てきて、最後に漣華さん。今度は体ごと。ちっちゃな魔法陣が3つ浮かび上がって、びしょ濡れの赤嶺達が転がり出てきた。
「なんなのー?」
「もうちょっとだったのにー」
「あたしがいちばんだよー?」
「それどころではない。いい仔じゃから大人しくしておれ」
ピシャリ、と漣華さんがいうと、仔ドラゴン達はむーっと口を尖らせた。マジックバッグから布を取り出して、ニャルクさん達にも手伝ってもらって拭いていく。鱗の隙間に卵ついてないかな?
『✕○□、△▽?』
『□、✕✕○』
『△……、□○……』
アーガスさん達が小声で話し合ってる。ギルマスのところに行こうにも、あれじゃ入れないな。
「どうしたもんか……」
「全く、騒がしくて敵わん」
漣華さんが唸り声を上げる。この声を初めて聞いた仔ドラゴン達が、ピャッと鳴いて私達の影に隠れた。
「ほぉーーーーーーーーーおおおおおおおおん」
漣華さんの啼き声に、騒いでいた全員がこっちを振り返った。
「静まれ、愚か者共よ。そやつらを責めたところで何が変わるというんじゃ」
漣華さんを初めて見るトールレン町の人達が黙った。恐怖から来る沈黙かしら?
「騒ぎの元は魔虫の卵であろう? そこにいる者達は事態を終息させるべく動こうとしておるのではないのか? それを町民であるそなたらが邪魔をしてどうする。散れ。家へ戻り続報を待つのじゃ。騒ぐほどに解決が遠退くことに気づけ馬鹿共」
「そーだよー、じゃましないで!」
ふん、と鼻を鳴らした漣華さんに続けて、赤嶺が文句を言った。冒険者達がギョッとして赤嶺を見る。青蕾達が喋ってるとこ見たことなかったのかな。
『○○✕、□△▽□✕。○◎、✕□?』
エルゲさんが何か言うと、人混みが2つに割れた。その間をエルドレッド隊のみんなが抜けてギルドに入っていく。アーガスさんとオードさんだけが私達のところに残った。
「そなたらはどうする?」
漣華さんが首を下げて聞いてきた。アーガスさん達が少しのけ反る。噛まないって。
「水を飲んだ子ども達に会いたいです。実際に会って見てみれば、蛹相手でも何か手を打てるかも」
「ふむ。では一所に集めよう」
漣華さんが入り口近くにいたギルド職員に声をかけると、一区画隣にある教会に協力してもらえることになった。




