第1話 断固拒否って言ったじゃん?!
初投稿です。
執筆から投稿まで全て手探り状態ですが、頑張ります!
誤字脱字は気づき次第訂正していきます。
友達に勧められて、異世界物の小説や漫画を読んだことがある。
伝説級の魔物のお間抜け具合に笑ったり、最弱なはずのスライムがとんでもない力を持ってて驚いたり。最近は定番になりつつある設定でも結構面白いことが多い。
こんな世界行ってみたいなー、こんな景色見てみたいなーって思いながら頭の中で想像できるのは、歴史物しか読んでこなかった私にとって新鮮で、慣れない都会で生活する中で丁度いい息抜きになった。
ファンタジーに抵抗がなかったわけじゃない。想像の世界の何が面白いの? こんな設定ありえないって感じで。でも押しつけられる形で読み始めたらそこそこよかった。書き手が上手いってのも当然だけど、頭の中で旅ができるのが一番いい。お金もかからないし長期休暇もいらない。なんて素晴らしいんでしょう。
だから読みたい小説がない時とか、出退勤で電車に乗る時とかに読むことが多かった。歴史物は難しい漢字やら表現やらがあるから考えながら読まないとわからなくなるし、家でがっつり読みたい派だからね。
まあ人魚と一緒に海中を泳ぐ想像した後に中ボスみたいな上司と顔会わせなきゃいけないから気分の落差がしんどいんだけどさ。
異世界転生とか召喚物で、今の自分のままでいろんな世界に行って、いろんな役職、地位、種族になって活躍するのを想像すると結構楽しい。
やっぱりチート物がいいよね。自分が一番強くて悪い奴らを千切っては投げ千切っては投げして周りから称賛されて、美女に懐かれるわイケメンに慕われるわでうっはうっはな生活想像するの楽しいわ~。
……実際にそんな美男美女に囲まれたらしどろもどろだろうけどさ。だって日本人だもの。標準装備スキルがシャイだもの。両脇に美女はべらせてイケメンに頭を垂れさせながら高笑いなんか絶対似合わないしできないし。そんなん似合うの顔面SSS級の俳優ぐらいだし。
『○✕▽□~!?!?』
勧めてきた知り合いに、異世界に行ってみたい? って聞かれたことがある。答えはノーだ。絶対嫌。だって怖いもん。
『✕□○△!!』
そりゃあ想像するのは好きよ? 頭ん中に浮かぶ私はいつだって主人公で、誰にだって優しくするしお金に困ることないし人間獣人天使魔物なんでもござれのハーレム状態だし。だけど無理。嫌いな人には冷たくしちゃうもん。貧乏だもん。
『○~✕□~?』
どうしても異世界に行けってんなら初めからその世界に生まれるまっさらな私がいい。転生じゃなくて生誕。今の記憶だっていらない。人生の邪魔。
お金持ちの貴族の家に生まれて一生安泰で誰もが振り返るようなパートナーと結婚して幸せに暮らすんだ~、て言ったらあいつ笑ってたっけ。
『☓☓! ☓◯?!』
あ、でもドラゴンとは仲よくしたい。最強竜とか憧れるよねぇ。やっぱり黒が格好いいよな。でも真っ白も捨てがたい。うーん、悩む。
『◯△◯?!』
『◯△◯?!』
『◯△◯?!』
……うるさいなぁもう。
目の前で騒ぐのはわたくし神官ですみたいな格好をしたおじさん達で、その向こうには我こそ神だと言わんばかりに恍惚の表情で両手を広げて斜め上を仰ぎ見る立派な像。はいその顔キモい。
てかここって異世界だよね? この状況私が断固拒否した異世界召喚だよね? なんで私なわけ? 異世界に行けたら巨乳美女の膝枕であーんしてもらうんだ~って言ってたあいつなら咽び泣いて喜んだだろうに。
仕事が終わって軽くジョギングした後に、よく会うボス猫に挨拶して、あくびを返された瞬間これだもんなぁ……。
はあ、どうやって帰ろう。……あ、あのおじさんボス猫と同じ柄の猫耳生えてる。萌えんわ。