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ウォルム、及び、昔の仲間

「地上は相変わらずですよねー。昔は平和な場所だったなんて、私には信じられませんよー」


 元〈探索者〉のハクアは、手慣れた様子で地上を進む。のんびり歩いているようにも見えるが。警戒は怠っていない。向かう先に、凶暴化した動物〈魔物〉を発見したが、こういう時は居なくなるまで身を隠すのがセオリーである。近くの草むらに身を隠し、バックから消臭剤を取り出そうとしたところで、先客に気づいた。


「消臭剤は撒いておいたっスよ。久しぶりっスね、ハクア先輩」


「おやー、ルム君ではありませんかー。私はもう〈解放組合〉から脱却してますので、先輩では無いですぞー」


「俺にとっては、先輩は先輩っスよ」


 ウォルム・トウーシス。通称ルムと呼ばれている金髪の男は、頻繁に地上に出ているせいか、肌が焼けている。因みにハクアは日焼け対策をしているので色白のままである。元は探索者仲間として、一緒に行動していた事もあり〈解放組合〉を抜けた今でも、地上で会えば情報交換をする程度には仲がいいと言える。


「最近の〈解放組合〉はどんな感じですかねー」


「相変わらずっスよ。地上を住める場所にするって言いつつ、何かこそこそやってるみたいっス」


 ハクアは変わらぬ〈解放組合〉の様子に安心する。本当の目的は〈遺物〉を見つける事でも、地上を正常化する事でもない。その辺は、イニシエンとエンシェントだけが知っていれば良いのかもしれない。そんな訳だから、あえて距離を取っているのだ。


「相変わらずですな―。でも、余計なことに手を出してはいかんですぞー」


「わかってるっスよ。俺にはそんな力は無いっスから」


 ウォルムは解っているとばかりに返事する。探索者ならば気づいているであろう違和感も飲み込んで。何しろ、地上は既に浄化されている。その事実は〈解放組合〉と〈法誓議会〉だけが独占している。積極的に魔物を狩らないのは危険だからと言う理由だけでは無い、地上が未だ危険であるという体が必要だからだ。


「大きな変化は、良い事ばかりではありませんからねー。その辺は、組長に丸投げで良いですぞー」


「俺にはよく解らないけど、了解っス! でも、レイトアさんって目つき悪すぎて、なんか怒られてるような気分になるんスよね」


 〈解放組合〉を束ねる嫉妬の悪魔レイトア。特徴的なのは白髪で緑眼で、兎に角近寄りがたい雰囲気をまとっているのだ。悪魔には姿を変える力があるのだから、少しはどうにか出来そうなものだが、それは上に立つものとしての圧を保とうとしての事だと考えると、何となく微笑ましさを感じてしまう。最も、本人にそんな事は言えないが。


「それは本人の前で言ってはいけませんぞー」


「俺はそんな命知らずじゃ無いっスよ。それにしても、ホント何してるんスかね? 測定器とか、顕微鏡とか、あーいうのって運ぶの気を使って疲れるんスよね」


 ウォルムはそう言うと、背負っているリュックを軽く揺らす。何らかの機器を運んでいるらしい。そうなると〈解放組合〉の本当の目的、世界の観測は順調に進んでいるのだろう。今の所は、まだ形にはなっていないが、時が来た時。大きな変化が待っている筈だ。


「ルム君は何が起きてるか解りますかねー?」


「うーん、解放組合の拠点とか、地上に作ろうとしてるんじゃ無いっスかね? 俺は運んで、担当者に渡すだけだから、よく解らないっスよ」


 ウォルムはまだ何も感づいていないみたいである。気づいたら気づいたで、観測班に取り込まれるか、もしくは、共に行動しても良いかも知れないと、ハクアは考え、形になるその時まで、何も知らないのが一番平穏だろうと思いなおす。何かあれば、レイトアが判断するだろう。


「さてー、そろそろ魔物はどこかに行ったみたいですねー。油断しないように、気を付けるのですぞー」


「先輩解ってるっスよ。どうにもならなくなったら、荷物を捨ててでも逃げるっス。そんなヘマはしないっスけどね。さっさと荷物届けて、遺物探索でもするっスよ」


 ウィルムは草むらから身を出すと、目的地に向かって歩いて行った。それを見届けると、ハクアは鉤縄を取り出した。そして、かつては住居であったであろう建物まで、歩いていき、手慣れた様子でその屋根に鉤を引っ掛け、その上まで登っていく。


「人は心故に死に至る。貴方は、どう思いますか?」


 ハクアは屋根の上で誰かを待つようにじっとしていると、白い翼を背中にもつ、天使のような人物が二人、やって来た。片方は、力誓天使と呼ばれる存在の内の一人、サリエラ・レイガード、黒髪の威圧的な女性。もう片方は、法誓天使と呼ばれる存在の内の一人、ハニエス・グレイリム、白髪の生真面目そうな男性である。


「関係無いな。弱い奴は死ぬ、それだけだろ」


「サリエラさん。過激な発言は控えてください。私達は制御する存在なのですから」


 力誓天使は、節制の天使コマズナロウルから、法誓天使は、正義の天使アウトークシアから力を譲渡された人間である。最も、その力は人の括りでは測れない〈法誓議会〉の最高戦力。サリエラは剣を取り出し、ハニエスは分厚い本を取り出した。


「うーん。これは困りましたねー。今回はどうやって逃げましょうかー」

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