#出会った日から
2009年、4月6日。
春、麗かな暖かい日。
宮城の桜はまだ開花したばかりのこの季節。
私は高校生になる。
#出会った日から
クラス表をじっと見つめる。
「1-A、1-A…、…あった。」
教室の中から声が聞こえる。
そっと中を覗き込むと既にクラスメイトたちが話し込んでいる。しかも、女子たちはグループが出来ており、仲良く話している。
完全に出遅れた。
友人が1人もいないのに、この中でやっていける自信ないよ…。
少し落ちた気分になりながら自分の席に着く。どの子か仲良くなれそうな子がいないかな…。そう見渡していると…
ガラッ
扉が開く音。音がする方を見るとそこには長身のスラッとした黒髪の甘いマスクの爽やかな青年がいた。
かっこいい。
今まで見てきた男の子の誰よりも。
彼に見惚れてると、バチと目が合う。恥ずかしくなって直ぐに目を逸らす。
どきどきという胸の音。
こんなこと始めてだ。
早見咲子、15の春。
◇◇◇◇
高校入学から1週間。
既にクラスの中ではグループが出来ており、私はなかなか馴染めずにいた。私が一目惚れした男の子は、北村幸大といい、クラスの中心人物、いわゆる一軍と呼ばれるメンバーの1人だ。一軍のみんなは男女で仲良くしている。二軍の子たちはスポーツをやっている元気っ子や、いわゆる普通と呼ばれる子たちだ。三軍の子たちはオタクと呼ばれる子たちだったり、大人しい子たちだ。私はそのどれにも属さない、その他の部類。そして…
「咲子、一緒にご飯食べよ」
宮田響ちゃん。
スラッと細く綺麗な顔立ちのしている、クールビューティーと呼べる子だ。アニメ好きのオタクではあるが1匹狼ではあるが、同じく1人で過ごす私と仲良くしてくれている。
「響ちゃん、今日も菓子パンなの?」
「まーね。そんなにご飯食べられないし」
「少食だよね。まあ、私もそんなに食べれる方じゃないけど。」
「そーだよ、そんなちっちゃい弁当箱じゃん」
「いやいや、響ちゃんなんか、菓子パン一個でしょ?」
他愛もない話をしながら、チラッと一軍の子たちの方を見る。北村くんの姿が1番に目に入る。明るく周りと話している姿を遠くから見つめてるだけで幸せ。…なんて、ちょっとだけ健気な女の子を演じてみる。
遠くから見る、片想い。
この恋はまだ始まったばかり。