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8ポイント目 あらすじを書こう(必須)

 その日の夜、俺は大喜びで杉山に教えてもらった”俺sugeee.net”を使い、片っ端からチェックしていった。

 正直なところ、予感はあった。

 これはフラグというやつだ。

 いったん諦めかけたことが友人の助けで何とかなりそうになる。それはもう何とかなるのである。そうに決まっている。

 一心不乱に新着をクリックし、開き続けること二時間。

 そして、とうとうクレクレを見つけたのである。


 題名はBrutal Code:BLUEというSFもの。


>僕の初投稿作品をお読みいただき、ありがとうございます!

>続きを読みたいと思う方は、ブックマーク、および評価ポイントを入れてもらいますと大変やる気が出ます

>そして、なんと……!

>ポイントを入れたくれた方には髪の毛が増えるまじないをかけておきます(笑)!

>僕のまじないは効くと評判なんですよ!

>評価欄は下にあります


「うおおお、きたあああああって……なんだよこれ」

 俺はがっかりしてため息をつくと同時に爆笑するという高等テクニックを披露(ひろう)してしまった。誰か見てればよかったのに。俺のファンが一人増えて栄えある会員ナンバー1号になっただろう。

「髪の毛が増えるって、意味ねえ……」

 特定の人にとっては涙が出るほどありがたいのだろうが、俺には無用の見返りである。

 少なくとも、今の俺にとっては……だが。


 俺は親父の頭頂部を思い浮かべて不機嫌になってしまった。

 ハゲは遺伝であり、どういう対策をとってもハゲるときはハゲるらしい。実際、親父はハゲ防止のために様々な対策をとってきたが、戦線は後退するばかりで、まったくの無駄だった。

 俺もあと何十年かたったらああなるのか……。これ、評価入れたら何十年後かに効果あったりするのか? いや、今生えてきたらとんでもないことになりそうだし……。高校生でアフロヘアとか、漫画じゃないんだから。やめとくか。

「いや、待てよ」

 ふとあることを思いついて、俺はニヤリとした。

「これ、親父に評価させればいいんじゃね?」


 俺は一階に下りて、居間でビール片手にテレビのニュースを見ている親父のところに行った。

 テレビでは女性のニュースキャスターが年金問題からアメリカとイランの紛争危機に話題を変えたところだった。

 ──アメリカはイラン革命防衛隊がアメリカの無人偵察機を撃墜した件について強く非難しており、対してイランはアメリカの領空侵犯を主張しています。ワシントンの観測筋によりますと大統領は報復も辞さない考えだと述べるなど、事態はいっそう緊張の度合いを……。

 親父が俺に気がついて、テレビの画面から俺の顔に視線を移した。


「どうした、国際情勢に興味が出てきたか?」

「いや別にそういうわけじゃないけど……。戦争になってもアメリカがフルボッコにするだろうな」

「まあそうだろうが、第一次世界大戦じゃこんな事件で、とみんな思うようなことから一千万だか二千万も死ぬような大戦争になったからな。何がきっかけになるか、分からんぞ」

「ふーん。それはそれとして、話があるんだけどさ」

「なんだ? ビールでも飲みながら話すか?」

「ちょっとやめてよお父さん、宏樹はまだ高校生なんだから」

 母が顔をしかめる。

 まったくどうして男親というのは息子にビールを飲ませたがるんだろう?


 俺はスマホを差し出した。

「ん? 何だ? 評価する?」

「いや、実は俺たちの間で、ポイントを入れたらここに書いてあることが実現するっていう……何ていうの? まじないみたいのが流行っててさ」

「何だそれは。宏樹……変なアダルト系のサイトじゃないだろうな」

「大丈夫だよ、これめちゃくちゃ有名なサイトなんだから。ほら、ここ見てくれよ。評価してくれたら髪の毛が生えるって書いてあるだろ」

「なにぃっ!?」

 親父の目がぎらりと光った。ついでに頭頂部も光った気がするが、これは俺の見間違いだろう。

「ちょっとやめてよ宏樹。お父さん髪のことになると周りが見えなくなるんだから。この間買った新しい育毛剤だって高かったんだからね」

 母が顔をしかめる。


「まぁまぁ母さん。その話はいいじゃないか。 髪は自ら助くる者を助くだよ。どれ、ここを押せばいいんだな?」

 髪……もとい、(わら)にもすがる心境なのだろう。これが違う件なら馬鹿なこと言うなと一笑に付していたはずだ。髪は親父のクリティカルポイントなのである。

 親父はすでに人差し指をスマホに向かって突き出していた。

「そうそう、ここ。……よし、評価完了。親父の髪の毛、きっと生えてくるぜ」

「うははっ、そうかそうか!」

 親父は機嫌よく頭を撫でた。

 その様子を見ていると何だか親孝行した気になって俺も嬉しくなる。

「まったくもう、親子で何をやってるのやら……」

 対照的に母は呆れ顔だった。


「それより宏樹。あんたこの間の中間テスト、何なのあの点数」

「なにぃっ! 宏樹、こんなことで誤魔化そうとするつもりなのか?」

「さ、さ~て、勉強しなきゃ! 勉強勉強! 期末テストは頑張るぞ~」

 俺は大慌てで二階に上がっていった。

 あんまり悪い点数ばっかり取ってると、岡本みたいにお小遣いを減らされそうだ。

 少しは勉強したほうがいいかもな……。そうだ、彼女ができたら二人で勉強しよう。

 黙々とペンを走らせる俺たち。そのうち勉強に飽きたのか、彼女が視線を上げて、

 ──宏樹君、私もっと違うことが勉強したいな……なんつったりして。

 ウヒヒ。

 その時、何か引っかかるものを感じ、俺は階段の途中で立ち止まった。

「?」

 しかし俺にはそれが何なのか分からず、すぐに忘れて新着チェックの続きを開始した。


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