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俺は今、小説投稿サイト「小説家になれば?」の新着を目を皿のようにしてチェックしている。
「更新された連載小説」や「新着の短編小説」をクリック。本文は読まずに後書きを見て、「ポイントクレクレ」文があるかどうか見る。
「明日への希望」
普段の俺なら絶対に開きもしないカテゴリー純文学の短編だ。あとがきはない。
次。
「零れ落ちる私」
カテゴリー・ヒューマンドラマ。
あとがきはあるが私生活のことだ。
しかも妻子のある男性と不倫してどうこうとか、おいおい、ヘビーすぎるだろ。
たまーにこういう風に後書きに私生活を書く作家がいる(さすがにここまではないが)が、何を考えてるのだろう。
読者は作品に興味があるのであって、作家の私生活などはどうでもいいのに。
と言いながらしっかり読んでしまった自分にもげんなりしつつ、次。
「異世界に転生した俺はまずお掃除スキルで神に喧嘩を売ることにしました。」
え、お掃除スキルで喧嘩売るの? 神に? マ○イ棒で戦ったりするのか?
ちょっと気になったが今はそれどころではない。
連載五十二回目だから可能性は少ないが、取りあえず見てみる。
スクロールして……。
おっ、あとがきがあるぞ。少し期待する。
>お読みいただきありがとうございます!
>待望の累計ランキング入りまであともう少し、8万ポイント……!
>『面白い!』
>『続きが気になる!』
>『更新頑張れ!』
>と少しでも思われた方は、下から評価をお願いします!
>更新を続けるための大きなモチベーションになります!
>ブックマークはもちろんですが、評価の10ポイントは目玉が飛び出すほど大きいです!
>どうか、未評価の方は評価をお願いいたします……!
>↓広告の下あたりにポイント評価欄があります
かあ~っ。
確かにクレクレだが、違うんだよなぁ。俺が求めてるのはこういうクレクレじゃないんだ。
俺が読みたいクレクレは、ちゃんとポイントを入れた見返りがあるクレクレなんだ。
気を落としつつ、次の新着をクリック。
ない。
次の新着をクリック……。
なし。
次の新着をクリック……。
俺は賽の河原の石を積むように、一心不乱に新着の後書きをチェックし続ける……。
どうしてこんなことをしているのか?
当然、その疑問が湧いてくるだろう。
後書きマニア? いや、違う。
クレクレを許さない正義のユーザー? それも違う。
それもこれも、オタ仲間の杉山に彼女ができたからだ。
俺も評価ポイントを入れて、絶対に彼女を作ると固く決意したのだ。
──あなたは、ん? と疑問に思ったことだろう。
は? と不審に感じたことだろう。
いや、よく分かる。
「こいつは頭がおかしいのか?」
俺の正気を疑ってしかるべきだ。
評価ポイントを入れるのと、彼女ができることに何の関係があるのか。
その事情を、これから書いていこうと思う。