イケメンとでんせつのけん
あるひのことです。
イケメンは、ようちえんでともだちとかくれんぼをしていました。
そして、いつもしまっているきょうしつのカギがあいていることにきづきました。
「よし、ここにかくれよう!」
イケメンはとびらをあけました。
ガラガラガラ
すると、そこはしらないまちでした。
まちのひとたちがはなしています。
「よるになると、あのやまのうえのいえから、モンスターのなきごえが聞こえるらしいよ。」
「わたしは、そのなきごえをきいたわ。とてもおそろしかった。」
「あのいえのもちぬしが、モンスターをたおしたひとに、きんぎんざいほうをくれるらしいぞ?」
「…。」
イケメンは、きんぎんざいほうにはきょうみがありません。
「あのいえには、まだちいさなおんなのこがいてな。モンスターのせいでいえをおいだされたんだ。まいにちかえりたいとないているんだよ。」
「!!おじさん、それほんとう?」
イケメンは、はなしをしていたおじさんをつかまえていいました。
「あ、ああ。わたしはあのかぞくとは、なかよくしていたからな。」
「それはなんとかしなくちゃだな!」
イケメンは、おんなのこをたすけようときめました。
「でも、どうしよう?なにか、モンスターをたおすほうほうはないかな…?」
そういって、ズボンのポケットをさがすと…
「!!」
なんと、ようちえんのこうさくのじかんにつくったおりがみのけんがでてきました。
「さすがにこれじゃあモンスターはたおせないよな。」
イケメンがおりがみのけんをズボンのポケットになおそうとすると、きゅうにおりがみのけんから、けむりがたちのぼりました。そして、おりがみのけんは ほんもののけんにかわってしまいました。
「そこのぼうや、あたしにそのけんを見せてもらえんかのう?」
おばあさんがあらわれて、イケメンにいいました。イケメンがけんをわたすと、おばあさんはそのけんをまじまじとみつめていいました。
「こ、これは、まさかでんせつのけんじゃなかろうか?」
「え?でんせつのけん?」
「ああ、そうじゃ。」
「でんせつのけんがあれば、あのやまのうえのいえにいるモンスターもたおせる?」
「ああ。けんには、モンスターをおいだすチカラがあるという。しかし…。」
「ありがとう!おばあさん!」
「あっ!まちなさい!」
イケメンは、うらないしのおばあさんのはなしをさいごまできかずにはしりだしました。
そして、ここはやまのうえのいえ。
「よし!やるぞ!」
イケメンは、でんせつのけんをにぎりしめて、とびらをあけました。
「でてこいモンスター!イケメンがあいてだ!」
すると、いえのおくからでてきたのは…、
たくさんのオバケでした。
「ギャー!オバケ〜!」
イケメンはオバケがだいのにがて。でも、ないているおんなのこのことをかんがえて、にげずにけんをふりまわします。
「ど、どうだ!でんせつのけんだぞ!」
しかし、ふってもふってもオバケはこわがりません。
オバケはいいました。
「そんなもの、なんでもない。」
そして、イケメンめがけてぜんいんでおおいかぶさります。
「ギャー!」
イケメンは、やまのうえのいえから、いのちからがらにげだしました。
「…どうしてでんせつのけんがきかなかったんだろう?」
ボロボロになったイケメンは、つきをみあげていいました。なみだがでてきました。
「それは、あたしのはなしをさいごまできかんからじゃ。」
くさのかげから、おばあさんがでてきていいました。さっき、でんせつのけんのはなしをきいたおばあさんでした。
「こんどこそちゃんときくんじゃぞ。」
おばあさんは、はなしはじめました。
「たしかに、でんせつのけんには、モンスターをおいだすチカラがある。しかしな、でんせつのけんとは、ぼうやのもつけんのことではない。でんせつのけんとは、けん というどうぶつのことじゃ。そして、このせかいには、けん というどうぶつはおらん。しかし、ぼうやのもつけんの つか のぶぶんにあるどうぶつのかざりをみたとき、わしはちょっかんした。それがけんじゃとな。」
「あ!」
イケメンはおもいだします。イケメンは、おりがみのけんの つか にイヌのえをかいていました。そして、けんがほんものにかわったとき、イヌの絵はイヌのかざりにかわったのでしょう。しかし、おばあさんは、なぜイヌのことをけんというのでしょうか?
「けん…、けん、ケン、KEN……ワン!」
イケメンはきづきました。
「イヌは、かんじでかくと犬。犬ってかんじは、けんともよむんだ!」
「…かんじというものはしらんが、そのイヌというどうぶつが、けん にまちがいない!あたしのまほうで、そのかざりをいきものにかえましょう!」
おばあさんはそういうと、けんの つか のイヌのかざりに、まほうをかけました。
すると、けむりがたちのぼり、けんの つか から、イヌにつばさがはえたどうぶつがあらわれました。
「これでどうじゃ?」
おばあさんは、じしんまんまんにいいました。
「ほんもののイヌにはつばさはないんだけど…。ま、いいか。ペガサスみたいなイヌだから、おまえはペガワンだ!」
タケルはいいました。ペガワンは、うれしそうにワンとなきました。
「さぁ、はやくペガワンをつれてあのいえにいくんじゃ!」
「ありがとうおばあさん。いってくる!」
そういって、イケメンはふたたびやまのうえのいえへむかいました。
イケメンは、ガクガクブルブルふるえるあしで、とびらへむかいます。
そして、おそるおそるとびらをひらきました。
ギィー。
「…。」
おばけたちはでてきません。
「あれ?」
イケメンは、いえへはいりました。
バタンッ!
急にとびらがしまります。
そして、いえのなかのすべてのくらやみからオバケがぞろぞろとでてきました。
「うわ!うわっ!うわーっ!!」
イケメンは、こわくてゆかにすわりこんでしまいます。そして、すわりこむイケメンにオバケたちがおおいかぶさろうとしたそのとき…!
「ワンッ!」
ペガワンがほえました。すると、オバケたちがザワザワしはじめます。
「イヌ?このせかいにイヌはいないはずだよな?」
「じゃあ、あのなきごえはなんだ?」
「あのいきものはなんだ?」
オバケのひとりがペガワンをゆびさします。
オバケたちがこえをあわせてさけびました。
「いぬだーっ!!」
そして、オバケたちは、いちもくさんに、いっぴきのこらず、やまのうえのいえからにげさったのでした。
「やった…、のかな?」
なみだをがまんするイケメンのてを、ペガワンがペロペロとなめて、「ク〜ン」とあまえたこえでなきました。
次の日、まちではイケメンのオバケたいじがわだいになっていました。
やまのうえのいえには、おんなのことおとうさんとおかあさんの、3にんのえがおがかえってきました。
「ゆうしゃイケメンにおれいをいいたいわ。」
おんなのこがいいました。
しかし、イケメンは、すでにとびらをとおってもとのせかいにかえってしまっていました。
「おれいなんていらねーぜ。おんなのこのえがおが、おれにとってはきんぎんざいほうなのさ。それと…」
「ワンッ!」
イケメンのうしろからペガワンが顔をだす。
ペガワンのせなかには、つばさがない。
「ペガワンもいっしょにこっちにつれてきたんだ。だけど、みてのとおり、ふつうのいぬになっちまった。
でも…、
まんげつのよるにだけは、つばさをみせてくれるんだぜ!」