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8/12

 少し過去に戻ってしまうのだが、私は入院する前にシーネ固定していた腕をとある子供にじっと見つめられたことがある。

(これに関する幾つかの活動報告は閉じてしまったのだが……)


 よく病院にくる子供は、私の左手の包帯をみて「いたいの、よくなってね」「はやくなおってね」とちいさいおててを重ねてくれた。

 子供が私に心を開いてくれるようになったのは、私が仕事に対する向き合い方を変えたからだ。


 十一月に入ってから私は子供にも大人にも、笑顔の魔法を作り出勤。それから昔のように人から慕われるようになったと思う。

 子供は嘘をつかない、よく小児科の先生がそう言うのだが、それはそうだ。いくら心無い事を言われてもそれは純真な気持ちから出る言葉。

 私は入院生活の中で、早く治して仕事に戻りたいと思っていた。



 手術が終わり二日目となれば、飲み薬も効いて痛みなんて殆ど我慢できるものだ。

 暇な入院生活で、私は自由だったので抗生剤の時間以外は病院を散歩していた。二度ほど迷子になり困ったのはいい思い出だ(つぎはぎ病院なんだよ)


 しかしこの日は嬉しいことに、東京で初めて働いていた病院の仲間が私の見舞いに来てくれた。

 なにしてんの(笑)と言いながら近況を語り合い、午後には事務長が面会に来てくれたり、さらに夕食の時には私が教えたコも来てくれた。

 結構私は厳しい先輩だったのに、彼女は私をずっと慕ってくれて、わざわざ見舞いまで来てくれたり…

 ひとの優しさってありがたいなと本気で染みた。

 東京の人間は冷たいと思っていたものが、彼女達の存在のお陰で、やっと私の作り上げた心の壁が破壊出来たような気がしていた。

 狭い閉鎖空間から、ほんの少し視野が広がると心のあり方も変わってくる。私は彼女達が「来てくれた」だけで嬉しかったのだ。

 身近に誰もいないと思っていたものが、こうして手を差し伸べてくれる。

 結局は、ひととの繋がりは自分から隔絶しなければ何らかの形で繋がっていくものなのだと思う。


 けれども、私はまだこの転落に至るまでの重い記憶を処理なんて出来ない。そしてまたネットで何か起きた時にまた同じことを繰り返すのではないかという恐怖。


 じゃあ【なろう】やめたら?一年くらいほっといてもユーザーは待っててくれるよ。と淋しい現実を突きつけられた。

 私は看護師に元々なりたかったわけではなく、親のレールに乗って今ここにいるので、ある意味一番宙ぶらりんな状態だ。


 四日の入院生活を経て私は元気に退院。

 しかし、骨折によって失ったものは、私が『絵を描くこと』『漫画を描くこと』『色を塗ること』だ。

 これはいつか時が解決すると思っていたのだが、いざ左手が震えて自分の名前すら書けない時は涙が止まらなかった。これでは何も出来ない。

 おまけに、クリスマス…年末…

 世間は楽しいイベントが山のようにあるのに、私はなんて時に骨折したんだろうと笑うしかなかった。

 毎年ひっそり楽しみに購入しているケーキも食べられない。

 ペットボトルが開けられない。

 洗剤の蓋が開かなくて20分くらい洗濯機の前で奮闘。

 お風呂を洗うのはもはや浴槽に身体をべったりつけて握力の弱い右手でやるしかない。

 勿論、生活全般不便で、退院なんてしたくなかった。

 ジーパンのチャックあげるのもしんどくて、ボタンをしめるのは命がけ。

 スカートにしても、ストッキングが履けない、シーネ固定のせいでコートが着れない。

 おいおい、この寒い時期にポンチョかよ、と自分を笑うしかなかったが、ダウンを持っていなかったのだから仕方がない。

 幸い、それでも風邪を引かなかったのは北国生まれの抵抗力があるからだろう。


 しかし、不幸なことばかりではなく、私が入院生活を送ってしんどい時に沢山支えてくれたのもまた【なろう】の仲間である。

 退院前にレビューをくれたり、感想をくれたり、時に暖かいメールや叱咤をくれる相棒と、仲間達にはもう頭が上がらない。


 そして退院した後も携帯でのメモ更新のやり方を教えてくれた「もう一人の仲間」

 この方はコメントを全て消して引退されたが、私にとってこの数名のメンバーが私に生きるっていいこともあるなと光を与えてくれたのだ。


 心無いメッセージは何度かその後もあったが、気にしない事にした。

 私には、私の作品を待っててくれる人がいる。

 そもそも、そうやって一人でも見てくれる人がいるから! という意気込みで書いていたのに、顔も知らない、ただの中傷してくる存在に一喜一憂しても仕方がない。

 …とはいえ、私がここまでポジティブに考えられるようになったのは、もう少し先の話になる。

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