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十一月に入り、私は月末の面談が無くなった事で精神的な重みから解放されていた。
特に仕事でのミスもなく、200人以上の患者の顔や特徴は大体把握した。昔はもっと覚えられたのに、きらきらネームの子供や、日々成長する子供と母親を覚えるのは骨が折れる。
そして、仕事も軌道に乗り、この時期に私は【なろう】で一つの作品を区切る事にした。
実は私が仕事でうだうだしていた時に書いていたのが、『妹が可愛すぎて困ってます』だ。最初はもっとパンチの効いた名前にしようと思って『俺の妹がこんなに◯◯なわけがないっ!』という題名だったが、よく考えたら既存の有名作品があったし、内容が全く違ってもパクリだと思われるのは心外だったので慌てて題名を変えた。
八月に仕事が落ち着かないせいでメンタルが落ちていたので更新も途絶えた作品だったが、二ヶ月放置しても待っていてくれる人がいてくれて、何とか(無理やり)作品を完結させた。
それから少しずつまたネットで交流が取れるようになり、仕事であまり仕事の仲間と交わす会話がない(働く場所が違うので本当に挨拶以外会話ないことも……)その孤独を癒す為に家ではパソコンに向かいあう機会が増えた。
ある意味充実していたと思う。仕事もそこそこ順調、趣味の小説も楽しく出来る、作家を目指す仲間達とも少しずつ交流が取れるようになっていった。
あんなにもブックマークの無かった妹可愛い〜がこの頃からパタパタとアクセスが増え(ジャンルをコメディからその他に変えた)
そうやってやってきた結果が数字に出て若干気が緩んでいた。
そんな時に私に事件が起きた。仕事の事ではなく、ごくプライベートな内容だ。
看護師を目指す人に、これだけは告げておきたい。
私達は、白衣を着たら仕事に集中しないと身を滅ぼす。
それだけは、伝えておきたい。
やはり、病院の頃は仕事中に携帯なんて一切触らなかった(電波も無かったし、機械が壊れるので禁止とされている)頃が一番平和だったのだ。
この頃から私はとある事が気になって、昼休憩を削ってとある事に錯綜していた。
とある事、と酷く抽象的な内容なのはまだ語れる程私が強くないことと、これは一種の逃げでもある。
この、とある動向が気になってしまい、実際この頃から仕事に集中出来なくなっていた。
……とはいえ、業務上ではプロとして仕事をしていたので一切支障はなく、私に支障を来したのは『睡眠』と『言葉のナイフ』だ。
私は昔から個人的に心理学と精神看護学を極めたくて、そちらの分野を多少独学でかじっていた。
けれども甘かったのだ。私が昔同じ悩みを抱えた子達に送った言葉と、私が気にしていたとある事に対する対応では、全く歯が立たなかった。
少しずつ色々なものが拗れるが、あくまでそれはネット内での問題。
私は仕事(現実)においてはその話は一切しないし、表面上では全く変わった様子も見せなかった。
それでいい、仕事とネットは完全に分離する。それが当たり前であり、必然なのだから。
十一月が終わり、いよいよ年末が近づいてきた。私はいつものように小説を書きながらも沢山企画を考えたり、クリスマスに前の職場の仲間と遊べるかな、なんて楽しい日々を夢見ていた。
十二月五日ーー
私は、不眠ととある精神的ストレスに知らぬ間に侵食されていたらしい。
今思えば、毎日夜中に不安で目がさめるなんて異常だったと思う。
日付が変わる前に眠るものの、とある事が気になってメールを開く。
熟眠感がない。そんな中で仕事をしていたらヘマをするに決まっていたのだ。
その日、私は『転落』した。