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血
女は死体を見つめていた。
血のついたナイフを握りしめ、ただただ死体を見つめていた。
眼をくり貫かれ腹部をメッタ刺しにされた犬の横に、喉を切り裂かれた幼児の死体。
二つの亡骸を見据え女は小さく呟いた。
「途切れたのね」
女は患っていた。子供の頃近所のペットなどを捕まえては虐待し、あげく虐殺していた。
成長するに至って暴力の対象は人間へと移っていく。
女は交際相手を殺していた。目の前に横たわる幼児の父親を衝動から殺していた。
「この子には私の血が……これで良かったのよね」
幼児の手には犬の血と共に目玉が握られていた。