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エピソード17 彼女達は平等である

全員回です。

2階のカフェの部屋の中の割り振りはなんとなく適当だったが、京が整理をしてみんなのスペースを決めた。


あまりものを置いていない水城と由美は左側。本がたくさんある杏里と、いろいろたくさんある先輩は棚が設置してある右側の方。


京はほとんどものを置かず、俺も置いていないので特に配置は決めていない。


それぞれのスペースには席があるので、ゲームをしたり読書したり、その他のことをするのにもそこを使えばよい。


俺と京にはそのスペースがないので、中心に初めから設置されていた6人がけのテーブルに座っていた。


「京、そういえば先輩が座ってるソファーや机はどこから持ってきたんだ?


京が色の白い家具をいくつか集めてきて模様替えをしてくれたのはいいのだが、費用とかは大丈夫だったのだろうかと思ってふと聞いた。


「あ、これですか? 学校の備品ですよ。いろんな部活の使ってないものを貰ったんです」


「綺麗なのを貰ったな」


「私が綺麗にしたんですよ」


ちょっと自慢げに胸を張る。料理スキルはカフェで垣間見たが、掃除も1-3を見る限りかなりのものである。


「悪いな、京に負担かけて。また今度よかったらいろいろ手伝ってやるからな」


ポン。


俺は何気なく京の頭に手を乗せて撫でる。


全く手に絡まない絹のような髪触りで、全部手から零れ落ちた。


「あふぅ」


「おっと悪い」


「い、いいえ。昔お父さんに撫でてもらったことを思い出しました。嫌じゃないので続けてください」


京が椅子を近づけて、俺の肩の辺りに顔が近づく。


「京っていい香りがするな。香水でもしてるのか?」


京からは髪や制服からフルーティな香りや、石鹸の香りがする。


「いいえ、何もしてませんよ。匂いますか?」


「いいや多分洗剤やシャンプーの香りだと思ったよ。清潔にしてるのと、家事をしてるのがよくわかる香りだな」


そのまま京を撫で続けていたが、なんとなく前を見ると全員がこっちを見ていた。


「た、太一はやはり家庭的な人が好きなのかな?」


「お似合いすぎる。やはり私の入るスペースはない……」


「私もあんな風に褒めてもらいたいな~」


「うふふふ、この展開は読めなかったわ。次号が楽しみね」


約1名はこっちを見ていただけで、こっちに興味は持っていなかったが。


「京、ちょっと距離が近すぎないか? うらやましい……じゃなくてはしたないだろう」


杏里が俺と京の距離を開けようとする。


「なんですか? 私と先輩の仲を引き裂くんですか?」


「皆の気持ちは知っているだろう。ここで抜け駆けをするのはちょっとアンフェアじゃないか?」


「いいえ、フェアです」


「なんで?」


「ここは部活のように目的があるわけではないようですが、皆さんここで自由に満たされた時間を過ごせるのが強いて言うなら目的ですよね」


「まぁ、間違ってはいない」


「杏里先輩は、好奇の目線なくリラックスできる場所、由美先輩は気の許せる人と過ごせる場所、美香先輩は自分の趣味を好きに出来る場所で、水城先輩は美香先輩を筆頭とした優秀な人と過ごせる場所だと思います」


京はここに来てそんなに経っていないが、よく皆を見ているな。年下の兄弟が多いこともあって周りを見る癖がついているのだろう。内容が正しいかどうかは本人に聞かないと分からないが、俺も同じような意見だ。


「そして私は、先輩の横で過ごせるだけで満たされてます。だからアンフェアじゃないですよ」


おおう、そういう理論になるのか。一応当事者がいるので恥ずかしい。


「そ、それを言うなら私だって太一の横にいると満たされる。だから私も横に座る。頭撫でてもらう」


そう言って椅子を横から持ってきて京の反対側にまわって京と同じ姿勢になる。


京より身長は10センチ近く低いのだが、とある部分が大きすぎるので腕にとんでもない感触を感じる。


「先輩? まさか大きいほうがいいんですか?」


京が腕を引っ張って聞いてくる。俺の目線がとある部分にいったのを気づかれたか。


ちなみにとある部分の大きさを並べると、先輩>杏里>>>水城>京>>>>>由美である。


京は決して小さくないのだが、ここの平均値が高すぎる。杏里がとんでもなく大きいのにそれ以上がいるってどういうことだ。


「太一はそんなことない。前私と由美が同じ質問をしたことがあるんだけど、大きさで測れないって言ってたから」


「む~、でも私のときより顔が照れてます」


これは勘弁してほしい。男である以上は特殊な趣味でない限りは大きいことに興奮してしまうものである。


「分かった分かった、揉めるな。杏里も撫でてやるから」


「ふぅ~」


普段の教室の無表情からは想定できないほど腑抜けた顔で杏里が和む。


杏里の髪色は深い黒色のストレートだが、その見た目通りコシが半端ではない。全部手にまとわりつき、指の間に入ってくる。しかし、重力にまったく逆らう様子はなく、手を離すと癖1つなく元に戻る。


「2人とも揉めないでくれ。2人が揉めたら、私の好きな空間がなくなってしまう」


少し火花を散らしはじめた2人を由美が止める。


「わ、悪かった」


「ご、ごめんなさい」


何度も言うが由美は俺よりも大きい。しかも一見すると大人びた厳しそうな美人であり、そんな彼女が座っている俺達を見下ろして注意すると妙な迫力がある。


由美と仲のいい杏里はすぐに申し訳ない表情になり、京も申し訳なさそうな表情になる。


そして2人は俺から離れてくれる。京は一旦お手洗いに行くと外に出て、杏里は自分のポジションに戻る。


「ありがとうな由美。ちょっと困ってたから助かった」


由美はこういうところでの気遣いができる。自信がないだけで発言はけっこうしてくれるから意外とここの潤滑油になる。


「わ、私は5番目でいいから……」


そして由美が俺の横に座り始める。由美は足が長いので座ると俺よりほんのわずかだけ小さくなる。


杏里や京と違って顔がほとんど俺の顔のところに来るから吐息が顔にかかってどきどきする。


「由美も一緒か」


直接的に撫でて来いとは言わないところが奥ゆかしいというか、利他的というか。


それくらい察してやらないといけないかな。


「あ…………」


由美の髪は太ももの辺りまで伸びる長い髪。座っていると髪が地面につきそうになる。


俺が撫でやすいように腕を交差させてその上に顔を乗せている。よく教室で寝ている人がやっている格好だが、それをやると本当に地面と髪がぎりぎりになる。


それではいけないと思い、下から掬って机に上げる。


色は杏里ほどではないが黒色で、なめらかでしっとりとしている。少し光が反射して光っている部分もある。


何よりボリュームが多い。触っていると髪がどんどんずれていって前にどんどんいってしまう。戻そうとするとまたどんどんずれていって、最終的に。


「ま、前が見えない……」


前面に髪が垂れてしまい、どこが前か分からなくなってしまった。


「大変だね~。私が直してあげるよ」


俺が困っていると、水城が由美の髪をいじり始める。


「あ、ああ助かった」


水城は天然でドジな面が多いが、髪はきちんとしている。


お嬢様結びなのだが、これは本当にしっかりやってきていて、寝癖1つない。これが出来てなぜ学校行事ができないのかというレベルでしっかりやってくる。


女子が良く持っている小物入れから、櫛を出して軽く鋤いて、ゴムで全部まとめて高いポニーテールにした。


太ももまで届いていた髪は、背中の真ん中くらいになった。


「あ、あっ」


前髪も少し後ろにまとめられたため、いつも隠れていた顔がすごく見えるようになった。


そのせいでものすごく恥ずかしがっていた。


「いいじゃん。似合ってるよ」


「あ、ああ」


顔を真っ赤にして自分のスペースに逃げていった。顔は喜んでいたからまぁいいだろう。



「水城はこれができるならもっといろいろ出来そうなのにな」


「違うんだよね。昔からずっと好きでやってたことだからできるんだよ~」


もっともだな。この理論なら皆勉強できなきゃおかしいからな。


「じゃあはい」


水城が俺に頭を向ける。


「何だこれ?」


「こういう流れじゃん。私も撫でてよ~」


「水城は髪にこだわってるだろ。俺が触ったら乱れないか?」


「いいよ。優しくやってくれれば」


そう言うのでそっと触る。


とても柔らかく髪を優しく押すと跳ね返される。


きちんとケアをしていることがよくわかる弾力を感じた。


「ふふ、昔お父さんに撫でられるのとは違う感じ。優しくて気持ちいいね。じゃあ後は……」


「はぁ~、面白かった! あれ? 皆どうしたの?」


杏里が反省し、由美が椅子に顔をうずめ、京はいなくて、俺の横に水城がいるという状態でも先輩はいつもの感じであった。


「美香先輩、今みんなで太一君に頭を撫でてもらってたんです。先輩もどうですか?」


「えー、全然ケアしてないから私のことは触らない方がいいと思うけどなー」


「美香先輩ケアしてないんですか? それでその髪とかずるいですよ~」


「あ、くしゃくしゃになっちゃうでしょー」


水城が先輩の髪をいじる。水城は先輩をものすごく尊敬して、それは今も変わらないのだが、先輩がかなりラフで素の姿を見せていたので、2人の距離感が近くなっていた。

仲がいいのはいいことだ。


「はい。で、先輩はどうします?」


「私もお願いするわ。たっくん、いいよ」


先輩も俺の隣に座って頭を差し出してくる」


「どうしたのかしら? やっぱり年上の私だと恥ずかしい?」


「いえ、1番恥ずかしくないです。もういろいろ先輩のこと知っちゃったんで」


そして雑に先輩の頭を撫でる。


「わわ……」


まったくノンケアとは思えないふわっふわな髪と、他の4人とは大きく異なるくせっ毛は触り心地が特殊だった。


「な、なんか恥ずかしいわね……」


先輩が大人しくなって俺になすがままにされていた。


「先輩、お待たせしました、って何美香先輩の頭撫でてるんですか! 他の人はそしてどうしたんです?」


京が戻ってきて突っ込みが入り、皆がわれに帰った。


なんかいろいろカオスなことになり、結局俺が全員の頭をもう1度撫でて終わった。


俺の手を洗わずにこの話をしたら、何人から握手を求められるかもしれないな。


洗うまでは俺の手にかなりの価値があるということなる。











髪回でした。


感想ありがとうございます。


いろいろご指摘ありましたので、時々修正していきます。

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