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エピソード11 みんなの気持ち(知ってた)

「おはよう太一。昨日はカフェに来なかったんだね」

「珍しいな。昨日は何もなかっただろう」

「おはよう太一君」


登校していきなり3人に捕まる。


カフェの2階にただ集まっているだけなので、部活でもない。だから特に中心になっている人がいるわけでもない。


鍵も特定の鍵は持たずに、1番最初に到着した人が、カフェのオーナーから鍵を貰って入っていく形になる。


だから誰が最初についたとしても、待ちぼうけをくらうことはない。


いくら部活をしていないとしても、皆に都合はあるからこの措置を変える予定は無い。


とはいっても俺と杏里はけっこういる頻度が高い。だからいないと珍しいのだろう。


昨日だって京と会わなければ、カフェに少しは顔を出しただろうし。


「ちょっと用事があってな」


「ふーん、まぁいいけど。今日は来てくれるよね」


「大丈夫大丈夫」


杏里は特に俺の言ったことに疑問を持つことはなく、席に戻っていく。




そして授業後。


「おい聞いたか?」


すると急に拓也が話しかけてくる。


「何をだ?」


「例の評判の1年生の名前が分かったんだ。写真も手に入ったが予想以上だ。是非俺達も狙いに行きたいから、お前は手を出すなよ」


「ちなみに聞くが名前は?」


ちょっとやな予感を持ちつつ、聞いてみる。


「高津京っていう名前だな」


あ~あ、やっぱりか。あんな子が2人もいるわけないもんな。


「たっくんいる~?」


「あ、どうも先輩」


先輩が教室に顔を出しに来る。


いつの間にか教室の外には人だかりができていた。


先輩の噂は学校全体で有名だが、3年生である彼女が頻繁に2年生のところまで来るわけはない。普段顔を見れるのは生徒会として壇上に立つときくらいなので、近くで見ようと人が集まってきている。


『たっくん?』『あの転校生は佐々木先輩とどういう関係?』『しかもすごく親しそう~?』


外ではクラスメイトではない人も騒いでいる。


「おい! いつの間に佐々木先輩まで手にかけた?」

「しかもたっくんだと、うらやましい!」

「お前な! 何でお前ばかりうまくいくんだ」

「これは裁判すれば勝てるよな」


クラス内も先輩のファンの男子が声をあげていた。


「水城ちゃん知ってた?」

「うん、もう私達も仲良くさせてもらってるよ。杏里ちゃんと由美ちゃんも一緒に遊んだりしてるし」


「またさわがしくなってる」

「仕方ない。カリスマだからな」


杏里、由美は落ち着いて2人で話している。水城は友人に質問されていたが、杏里と由美が同時に俺に話しかけたときほどの騒動ではない。


当人が騒いでいないのももちろんだし、先輩が3年生で、杏里達よりも身近ではなかったことも要因であろう。


「拓也は落ち着いてるな」


「佐々木先輩は好みだがさすがにレベルが高すぎる。今は高津さんを狙うから俺は冷静だぞ」


後に冷静にならなくなるんじゃないかと心配になる。


「あらあら? どうしたのかしら?」

「分かってて言わないでください。先輩自分の立ち位置知ってるでしょう。教室まで来るのは初めてですね。何か用事ですか?」


先輩とはあえて会う用事はなかったし、先輩も基本的には忙しい人なのでどちらかがどちらかの教室に来るのはこれがはじめてであったので、用事があるに決まっているはずだ。


「うーんと、私じゃなくて、あなたに用事がある人を連れてきただけよ」


「ああ、そうなんですか。お忙しいのにすいません。で誰ですか?」


「この子ね。ほら、用事があるんでしょ」


先輩の後ろから1人の少女が顔を出す。


今日はポニーテールではなくて、サイドにゆるく流していたが間違いなく俺の知っている1年生であった。


「先輩! 急に来てすいません」


「京か、どうしたんだ?」


俺は頭をちょっと抱えつつ答える。


トスッ。


俺の肩に手が置かれる。


「おい親友よ。同学年だけじゃなく、先輩や後輩にまで手を出すとはどういうことだ?」


そこにはいつものさわやかな笑顔で鬼を背景にした空気を感じた。


「えーとな、京と会ったのは偶然で、この前スーパーであったその子が京だったんだよ」


「なるほど、またお前の謎の出会いスキルが発動したというわけか。しかも佐々木先輩まで手を出しやがって」


「おい、さっき佐々木先輩はいいって言っただろう」


「それは高津さんのことがまだ分からなかったからだ。元々あのスタイルの先輩を俺が好んでないわけないだろう。うらやましすぎてそろそろ何も言えなくなるぞ」


「結構ペラペラしゃべってるけどな」


「うるさいな。くっそ、でもそういう空気を読めない突っ込みは嫌いじゃないんだよな~。モテる秘訣教えてくれよ。それに太一と親友でいれば、女の子に縁ができそうだから仲良くはするぜ」


拓也はひがんでいてもさわやかであった。


拓也も佐々木先輩ほどではないが、2年生の中ではそこそこカリスマを持っているので、彼を敵に回さないことは大事である。


「な、なんか騒がしくなってすいません。先輩今忙しいんですか?」


「いや、大丈夫、こっちの話だ。で、何だ」


「用事というか……、この前家まで送ってもらったお礼に何か出来ないかと思ったんですけど、先輩の教室とか分からなくて、そしたら偶然副会長さんに会ったので教えてもらったんです」


「なるほど」


「これからお帰りですか?」


「いや、少しカフェに行こうかと」


「ご一緒していいですか?」


「もちろんだ。杏里、由美、水城もいけるようなら行くぞ」


「「「はーい」」」


そうしてざわめき収まらぬ教室から離れていった。




「わぁ、こんなところがあったんですね」


京もカフェの2階に案内した。


「京って普段部活はしてないのか?」


「月に1回か2回くらい調理部の活動に呼ばれるくらいですね。後は家の用事がある時は早めに帰りますけど」


「そっか、もしよかったら京もここを使ってくれて構わないぞ」


「いいんですか?」


京が笑顔になる。


今日は杏里、由美、水城、先輩もいるので全員ここに来れるメンバーは揃っていることになる。6人いるとほどよく部屋がいい大きさになる。


「でも素敵な場所ですけど、ちょっと散らかってますね……。誰ですかこんなに汚したの」


京がゲームや本や小物で散らかっている部屋を見て、腰に手を当てて呆れている。


「主に先輩で、残りは杏里と水城です」


俺は告発する。


「これじゃ駄目ですよ。日本の女子たるもの掃除もできないんじゃお嫁さんになれませんよ。とりあえず片付けますから出ててください」


そして俺達は5人とも外に出される。


「なぁ、私はお嫁さんになれないのかな? もらってくれないの?」

「私のような人が結婚できるとは思えないが、やはりそうなのか?」

「あの状態ってそんなに駄目なの?」

「私はものが多いだけで整理してるわよ。それなのにたっくんてば私が原因みたいな言い方をしたでしょ」



先輩はこのままでいい気がする。

水城はこのままでもいい気がする。配置のセンスはあまりない。スペースの使い方が下手。

由美は家事以前の意識の問題だな。

杏里にはコメントしづらい。言い方が切実すぎるわ。なれるともなれんとも言えん。


「それぞれの魅力を磨けば大丈夫だと思うよ」


無難な意見を言っておいた。



~30分後~


「皆さん、お待たせしました~」


京がドアを開けて顔を出す。どこから出したのかエプロンと三角巾を装着していた。


「わぁ……」

「なんか明るくなったぞ」

「綺麗……」

「巻数も完璧にそろえてあるし、ゲームがなぜか私の好みに並んでいるわ……」


俺は中庭や1-3を見ているからまだ驚きが少なかったが、京の家事スキルの高さに4人とも驚いていた。


女子力が4人合わせても1人前もないが、京が1人で5人前くらいあるので、まったく問題にならない。

いや全くではないが。


京をこのグループに呼べたのは大きいと思う。そのつもりで呼んだ訳ではないけど。


これまでも4人で遊んだりして、不足していることを補い合っていたが、京がこの4人を補える要素はかなり大きい。


京も逆にこの集まりでいい刺激を受けてもらえるといいと思う。京が好きでやっているとはいえ、家事ばかりしているのは、ちょっと今後の人生に不足することが多くなりそうだしな。


しかし、男が俺1人で問題はないのかなって思うけど、特に全く揉めていないからいいのだろう。





「うふふ、私の夢見た学園生活らしい空間ができた。ありがとう太一」


そう言って俺の真後ろに杏里が立つ。


「私がこんなに幸福なことになるなんて怖い。太一、離れないでくれ。1人だと不安だ」


そして由美が俺の左手側に立つ。


「教室でも私を助けてくれて、ここでも私1人じゃ作れないお友達ができて感謝してるよ~。とっても楽しい」


そんな中、水城が俺の右手側に立つ。


「私の秘密を知っても黙っててくれた上に、新しい居場所を紹介してくれてうれしいわ」


また、先輩が俺の右後ろに立つ。


「私はまだ知り合ったばかりですけど、気遣ってくれる優しい先輩と、面白い皆さんと出会えて楽しいです」


最後に左後ろに京が立つ。


「おい、5人全員が誰1人俺の前に立たないというのはどういうことだ?」


なんか異常なほど目線を感じる……。


「「太一」」「太一君」 「たっくん」 「先輩」


「「「「「好きです!」」」」」


「「「「「……………え?」」」」」


5人の女の子から告白されるというシュツエーションからの5人からの困惑顔。


その時時間は停止した。その時間1秒だったか、1分だったか、それとも1時間か。


「おい由美。まさかお前太一のことを……」


「水城、君はお友達的な感じで見ていると思っていたのだが?」


「美香先輩……。そうだったんですか」


「京ちゃん、あなたは私のお嫁さんじゃなかったの?」


「佐々木先輩、空気を読んでください?」


杏里→由美→水城→先輩→京→先輩の無限ループのようでただの逆戻りがはじまった。


「水城は私のことが好きなんでしょ?」


「人として好きなんですよ~」


いや違う。ただの先輩フリーダムだ。


「私に誰か聞いてくれ!」


自分がかやの外になってしまっている杏里が先輩を中心に盛り上がっている4人の集団に突っ込みをいれる。


おお、基本内気な杏里が突っ込みをいれるのは珍しい。


「え、だって」


「杏里は見れば分かる」

「杏里ちゃんは見れば分かるよ~」

「杏里はもう一目瞭然よ」


「え……」


3人に言われて杏里が固まる。


「私でも分かりましたよ。教室での杏里先輩とここでの杏里先輩を見れば一目瞭然ですから」


さらに、付き合いがまだ短い京にまで言われて二の句が告げなくなる。



「なぁ太一。私そんなに分かりやすかったのか?」


「まぁ、なんとなくそうかなって思ってた」


今となっては全くそう思えないが難攻不落とか言われてた杏里がいきなり俺に話しかけてきて、一緒に過ごすことも多くなり、由美のときにも結構騒いでいたからな。


俺は人一倍敏感というわけではないが、鈍感ではない。余計な荒波を立てたくなかったので突っ込みは入れていなかったが。



「しかし皆たっくんのことが好きとはね~。一応好きって言った私が言うのもなんだけど、ここまで競争率が高くなりそうな気はしないんだけど」


「そんなことない。かっこいい」


「私を美人と褒めてくれる素敵な人だ」


「いつでも助けてくれるヒーローみたい」


「優しくて気遣いも出来る人です」


「まぁありのままの私を受け入れてくれてるから、私も好きなんだけどね~。よし、たっくんに答えを聞いておこう」


俺が聞けたのはそこまで、後は逃げたからこの後どうなったのか知らない。


へタレとでも何とでも言ってくれ。


どういう答えを出すにしても、この場の流れで答えるのは無理だと思うんだ。
















ちょっと今回の話をするのは早いかとも思いましたが、もう分かっていることですから先延ばしにする意味がないと判断したため、この回を書きました。


ヒロインがこの5人で全員参加となりますので、次回からもう少し彼女達を掘り下げる話をしていきます。



また、多くのアクセス、感想、評価、ブックマークありがとうございます。


特に感想では、誤字、脱字、気になるところなど指摘いただき、感謝しております。


書き溜めするタイプではないのでストックはそんなにありませんが、まだお話は続きます。


よろしければ引き続きお付き合いください。

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