プロローグ
「太一にはじめに目をつけたのは私よ」
「先輩は私のこと見捨てたりしませんよね」
「私の秘密を知っても逃げないでいてくれる人は貴重だからね。簡単には渡せないわ」
「私と一緒にいて、ずっと支えてほしいな~」」
「ご、5番目でいいから見捨てないで……」
5人の女子が俺に向かって話しかけてくる。
この5人の女子は1年生と3年生が1人ずつ、2年生が3人で、2年生である俺には先輩、同級生、後輩がいるのだが、全員が歩けばふと振り返ってしまう美人である。
しかし彼女たちにはなぜか彼氏が1人もいなかった。
そんな彼女達が何を思ったか、俺を気に入ってくれて、それをきっかけに彼女達のちょっとした秘密や事情を知ることになった。
別に知ったからと言って問題は俺としてはなかったのだが、彼女たちにとってそれは気にしていることであったらしく、それを知っても対応を変えなかったことで、素を俺の前では見せていた。
見た感じは非常にモテモテのリア充まっさかりと言えるし、俺もあながち間違っていないとは思う。
そしてここは部活を行っているわけでもないのに、俺達6人しかいない部屋が用意されていて、誰も周りにはいないので何があっても助けは来ない。
「まぁでも京が先でいいよ。私は最後でいいから」
「いえいえ、それよりも佐々木先輩がお先に。私が最後でいいので」
「ここは後輩に譲るわ。水城が先でいいわよ」
「私は最後でいいもーん。由美ちゃんでいいんじゃないかな?」
「わ、私が初めなんて……、申し訳ないか……ら、杏里がはじめに行くべきだと思う」
今度は何かを譲り合いしている。俺の話なのに、俺の意思が一切介在していないのがものすごく気になる。
この中で初めに知り合ったのは、杏里という少女だが、その彼女も出会ったのは2年生になったばかりで、長い付き合いではない。
そんな彼女達と出会ってすごす日常。でもつまらなくはないからいいとも思っている。
「おい太一! お前はどうなんだ?」
「はいはい」
平凡だった日常が劇的に変わった2年生になりたてのこと。彼女達の喧騒を聞きながら、ふと彼女達との出会いを思い出していた。