世界の果て。過去その2。
何も無い。
世界の果て、とは、一体どのような光景だろうか。
ヴェルグも、この地を訪れた多くの者らと同じく、他愛もない想像を繰り広げて来た。
見た事もないような大瀑布が世界の終わりのように流れ落ちる様だとか、金塊や宝石で埋め尽くされたキンキラの世界だとか。食べきれぬ桃やミカンやリンゴであふれる楽園だとか。
だが、そのどれとも、違った。
さて。
果て、とはなんだろう。
それは、終わりという意味。
世界の果て、とは、つまる所、世界の終わる所。
クオォォォ
「なるほど」
ヴェルグは、「輝く川」を越え、更なる頂に上った所で、世界の果てとやらを、その目でしっかと見届けた。
オ!
ヴェルグは背の剣を引き抜き、最高速度で真正面に振った!
ヴァ、ア
炎を断ち切った。
目前の竜から放たれた炎を。
世界の果てには、闇そのものが広がっていた。
山を越えるまで、そこにはまだまだ空が伸びていたはずなのに。川も輝いてはおらず、世界の果てと言っても、何も変わらないと思っていたのに。
山を上りきった瞬間、世界は一変した。
前も後ろも、全ては暗黒に包まれ、手元さえおぼつかない。
進むも戻るも難儀しそうな場所で、ヴェルグは、当然のように攻撃を躱す。
いかなる地であろうと、いかなる攻撃であろうと。
対応出来ぬなら、戦士ではない。
最低限、おれは戦士だ。ヴェルグは、そう思っていた。
「おれは、ヴェルグ。邪魔をしたかな?」
今まさに殺されかけた相手に対し、先のローネの人間らに対した態度と全く同じ声色で相対するヴェルグ。
竜に届くように、意を込めて発した声に、自負以外は入っていない。
残念な事に。
ヴェルグは、竜の機嫌の取り方を知らぬ。
竜は、漆黒の皮膚を持ち、ヴェルグが本気で剣を振る必要を認めた強敵。体長、不明。ヴェルグから見て、どこまでの大きさなのやら、分からないほど大きい。
最低でも、数キロメートルほどか。
頭部だけで、山ほどデカい。
数百メートルの距離をおいて相対しているのに、見上げる大きさ。
その巨体が、闇に溶けるようにして横たわっている。同じ闇色であっても、竜は暗黒の輝きを放っているため、なんとか、およその輪郭ぐらいは見える。
スガモに魔法強化をしてもらった黒鋼の剣でなければ、危うかったか。
ヴェルグは、剣を握り直し、相手を見定めた。
天風「見切り」
相手の実力のおおよそを見極め、己より強いか弱いかが正確に分かる天風。相手を見るだけで使えるので、最も使いやすい天風の1つだ。もちろん、自分にも相手にも一切の影響を及ぼさないので、実力を知っているなら、何の役にも立たない。
結論。
この竜。
おれより、弱い。
ヴェルグは、自分の中の熱が引いて行くのを感じた。
弱い奴とは、戦いたくない。
「おれはこの地に、武器を探しに来た。いずれ来る魔王との戦いで使う武器を。知らないなら、帰る。だから教えて欲しい」
答えは、炎だった。
「知らない、か」
ヴェルグはまたも剣閃一振りで炎を振り切り、竜の攻撃をしてもその場を動く必要は無かった。
「じゃあな」
剣をしまい、背を向ける。
武器を手に入れる。その目的の一人旅だったが。どうやら、空振り。
メイストームやスガモ、ヤヨイらと別れて、各個人でのレベルアップ時間。
魔王を倒すのに、現時点でのおれ達では、力量不足。
ゆえに、国が持ちこたえられるギリギリまで修練を積む予定だった。
だが、おれだけ時間を無駄にしてしまったか。
ヴェルグは、ちょっと落ち込んでいた。
しかし。
ゴ オ
竜の炎を背に感じる。
ブン!
右手一閃。右腕のみで剣を振り抜き、炎を払う。
並みの竜をはるかにしのぐ火勢だが。
世界の果てで期せるレベルでは、ない。
こんな程度なら、要らない。
「邪魔をして、悪かったな」
形だけでも謝罪をして去る。
こいつが過去にどれだけの人間を殺していようと。
おれの敵でないなら、戦う必要は。
「持っているぞ」
竜の方向から、人の言葉が。
上位の魔獣。それも、かなりの高位なら、人語くらいは解するだろうが。
この黒竜、そこまでのモノか?
「魔王にも通じる、何者をも絶命せしめる剣。おれは持っているぞ」
「ほう」
ヴェルグは、納得した。
これが、こいつの手口か。この口車に乗せられて、ここまで来た勇士達も、惑わされ、死んだのか。
「ローネの民を殺せ!さすれば」
ザン!
山ほどもある黒竜の頭部を、ヴェルグは一撃で刎ねた。
ドオオオオオ・・・
流石に、ひどい音だ。直径数百メートルはあろうかという頭が転がり落ちるのだから、無理はないが。
ザコと思えばこそ生死にも興味が無かったのだ。
ヴェルグの意思を操るタイプの魔法を使おうとしたのだろう黒竜を、それでも生かしておくほど優しくはなかった。
が。
「若い者は、いかなる時も、気が早くていかんな」
ヴェルグは、黒竜の落ちた頭が喋っているのを見て。
世界の果ての真価を、やっと理解出来始めた。
「不死身か」
ヴェルグは、本気を出す事を決めた。
「さて。世界の創世から生きておるがよ。不死身と言えるかどうかは、分からぬなあ」
竜の頭は、元に戻るでなく、しかし苦しそうな表情にもならず、淡々とヴェルグと会話を続ける。
これが、頭部が擬似的なものであれば、不思議ではないのだが。
竜の口は開き、喋るたびに、こちらに吐息が来る。フェイクではない。
頭部だけでも独立して動けるのか?
「落ち着きのない若人に、もう一度言おう。ローネの民を殺せ。それで、世界を救う事も適う名剣は、そなたの物よ」
「目的を聞こう」
「そんなのはどうでもいいじゃろ」
ギ
ヴェルグは、本気で剣を握り、飛んだ。
頭部を失ったにも関わらず、竜の体が動く!
両手の鉤爪が空にあるヴェルグを正確に襲う!!
だが、ヴェルグは、もうそこには居ない!!!
オン!
ヴェルグは、竜の胴体を正面からぶった斬った!!!!
「これで生きてるなら、助けを呼ばないと不味いか」
頭部を失った首から真正面真っ二つ。竜の開きを作ってみた。
「ひどいの」
だが、竜の声は、震えもしていない。
ヴェルグは、一瞬、スガモかメイストームを呼ぼうかと考えた。
幻覚を見せられている?否。
「見切り」が効いている以上、間違いなく本体もここにある。
闇が、うごめく。
「わしを斬ろうなどと。そのような酔狂な真似をせず、さっさと人を斬れい。それが楽な道。確実な道ぞ」
「なるほど」
ヴェルグは、剣を収めた。
これが、収穫か。
「世話になったな」
「何。たかが剣じゃ。たやすい事よ」
「そうじゃあ、ないさ」
ヴェルグは微笑み、言った。
「おれは。弱い。それに気付けた。ありがとう」
最初、竜を見た時、竜にすがり付いた。武器が欲しくて。
次に竜の強さを見て、弱いと分かると放置しようとした。メイストームの手をわずらわせる可能性はあったのに。
そして、ちょっと手こずりそうだと見るや、スガモの手を借りようとした。
これで、おれは戦士を名乗っているのか。
笑い草だ。
天風「百戦錬磨」発動。
「さあ。続きだ」
「・・・?」
黒竜は、身体に走る違和感に気付いた。
常時より、力が溢れ、魔力がみなぎる。
「何を、した?」
初めて、黒竜が、戸惑いを見せた。
「天風、百戦錬磨。敵と認めた相手を、おれと同じレベルまで引き上げる天風。おれ自身が、お前との戦いから得られる経験、知識も同じように増加される。修練用の天風だ」
ヴェルグには無い魔力も、ヴェルグ級、つまり、スガモの1割程度の魔力を獲得するに至る。腕力などは当然、ヴェルグと同等。攻撃のキレも、ヴェルグと全く同じ。
正直、この状態で勝てるかどうかは、ヴェルグにも確信がない。
リスクが高すぎて、仲間の居ない状況では使いたくない天風だ。
そう。
この天風は、メイストームかスガモがそばに居て、初めて活用出来る。
使用者は。臆病者だ。
その臆病者、ヴェルグは、初陣の時のような高ぶりと恐怖を味わっていた。
黒竜は、確かに戸惑っていた。
こちらを強化するバカには、初めて出会った。
どうしよう・・・。いや、今まで通りにすれば良いのだが。
今まで通り。
世界の果てとしての役割を全うするのみ。
「貴様、油断をしたな。我の攻撃も、こうなればお主に直撃させられようぞ」
竜は威に満ちた声でヴェルグを圧すると、先ほどまでとは比較にならない強烈な炎の吐息を発した!
オオオ!!!
己の剣圧そのままの業火が、ヴェルグの眼前全てから来る!!
この状態では、剣技で防ぐは能わず!!ヴェルグの両腕の腕力に対し、敵は超巨体からそのままのパワー!!ケタが違いすぎる!!
ならばあ!!
「オオ!!!!」
天風「果敢」
一瞬、あるいは数十秒間、己の力を倍加する天風。より少ない時間を設定すれば、より強力な攻撃力を得られる。
今は、1秒間を設定。
常時の、千倍の力で、炎と黒竜の全てを斬り払った。
黒竜は、意識を失いかけていた。
かろうじて残った一部が生きているから、まだ消滅まではすまい。
しかし、それも風前の灯と言った所か。
闇が、足りぬ。
ヴェルグは、全身全霊を一瞬に凝縮し、放出。
現在、体力の1割も残ってはいない。竜に余力があれば、死ぬしかない。
「・・・戦士よ。道を戻るが良かろう」
「?」
ヴェルグには、意味が分からなかった。
この道を戻れた人間は、居ないはず。これが罠なのか。
罠と言えば罠。しかし、現在の黒竜は、己の維持に手一杯で、通りすがりの暇人の相手などしていられなかった。
なんとか、ヴェルグを追い返さなければならない。
「現世では、魔族がお主の来た道を追いかけ、ローネの地を焼いておるぞ」
「なに・・・」
言っては何だが、ローネに戦略的価値は、存在しない。もし魔族がここを占領出来たとして、その後どうやって維持するのだ。獣も鳥すらも居ない、人間の数も少なすぎる土地では、魔族も干からびるのみ。
そこまで頑張って得た地でも、王都まであまりにも遠すぎる。素直に魔族領から侵攻した方がはるかにマシだろう。いや、比べ物にもならない。
今代の魔王は、そんな間抜けではないはずだが。
「お主1人に、軍勢を出したようじゃな。そして、魔軍がお主に壊滅させられる事まで想定済み。そこを、四天王が討つ、らしい」
「ほう」
なんだ、このサービスの良さは。
魔軍の思い切りの良さはともかく。
「優しいんだな」
「わしは、闇の化身。闇は、誰をも平等に包み込むものよ」
笑った、のか。
ヴェルグは、黒竜の声色から温かみを感じた。
「決着は、また今度だな。おれは魔族を殺さねばならん」
「達者でな」
ヴェルグは、今度こそ、剣を収めると、去った。
誰も帰った事のない、世界の果てから。
黒竜は、その身を闇に沈めつつ、思った。
今度会ったなら。あの者を闇に溶けさせられるか。それとも、この世界の果てが、消されるのか。
闇は光に消される。誰もが知っている事だ。
戦士ヴェルグは、光になれるか。
ヴェルグは、山を下りる。
先の見えぬ闇を抜けると、元の世界が広がっていた。
良かった。既に死んでいて、今までの出来事は死後の世界の話だったとかでなくて。ヴェルグは、心から安堵した。
「そう、ゆっくりもしてられないか」
火事。
山という山、谷という谷、崖という崖。
全てに火が放たれていた。
最も火から遠いはずのヴェルグの位置でさえ、既に息苦しさを覚えている。
とりあえず、キャンプ地に戻る。魔物避けが施されているから、四天王クラスが直に来ない限り、大丈夫だろうが。
大丈夫のようだ。
「生きているか」
テントの中に呼びかける。もし家族なりを助けに飛び出ていたら死んでいるだろうが。どうしようもない。
「・・・・」
少年は居てくれた。
怯えた表情だが、外傷はないようだ。
テントをのぞき込んだヴェルグに対し、短刀を構えている。
「この辺り一帯が魔族に襲われているようだ。おれが片付けて来る。おれが戻るまで、そのままで居ろよ。メシと飲み物は、ここにあるだけで我慢しとけ」
そう言うとヴェルグは、持って来ていた荷物の中から、回復薬を取り出し、内ポケットにしまった。
世界の果てから出て来た時に、丸薬と飲み薬の両方を1個ずつ使ってしまっているからな。
肉体疲労を全快させる丸薬と、その薬効を促進させ外傷の治りを早める飲み薬。ドラゴンドリンクの10分の1ほどの値段で購入可能だが、それでも10個ずつしか持ち合わせはない。
草木の味わいそのままの、口に入れるだけで気力がゼロになる薬2つ。それでも、効く事は効く。
「良し。じゃあ、行って来る。留守番頼むぜ」
少年がコクリと頷いたのを確認して、ヴェルグは外に出た。
敵主力は、火竜。幸いな事に、炎王などは居ないらしい。アレが居るなら、この地帯全てが既に溶岩の中のはずだ。
「さあ」
ヴェルグは飛んだ。
空を飛べるタイプの小型火竜が相手なら、ヴェルグの剣は一振りでバラバラに解体出来る。真っ二つだなどという悠長な腕力ではない。
火竜を数十体ほど斬った所で、空域に変化が生じた。
散発的な行動を起こしていた竜が、全く寄って来ない。
指揮を取っている奴が居る。
「貴様が、戦士ヴェルグか」
ヴェルグしか居ない世界に、空を飛んで質問を投げかける男。
「いかにも。貴様が指揮官か」
「いかにも。私が魔王軍四天王の1人。魔法将ツメクサ」
「聞いた事のない名前だ」
ツメクサと名乗った男は、かなり小さかった。身長140センチあるかないか。声も、10代前半ぐらいの、若く幼い声色。それがローブを着込んでいるのだから、仮装にしか見えない。
ただ、それでも、魔王の四天王を名乗る以上。
最低でも、ヴェルグと同程度の実力者なのだろうが。
「名を覚える必要は無い。貴様は、ここで死ぬのだから」
オ!
ツメクサの杖から走る波動が、ヴェルグを襲う!
「走行だったか」
ザン!
魔法を斬り落とし、ヴェルグは剣を構え直した。
思ったより、重い。腕に、確かに衝撃が残った。スガモ級ではないが、流石に四天王だけの事はある。
ツメクサの方も、驚愕していた。
魔法強化された剣なのだろうが、それでも、見えないはずの魔法を平気で斬ってのけた。これが、魔王様が警戒する4人の1人。流石に、強い。
走行は、誰でも使えるほど簡単な魔法だが、熟練者が使ったなら、巨岩を直接打ち砕く事も可能。それを避けもせず真正面から受けたヴェルグの度胸もまた賞賛に値する。ツメクサは、無意識にヴェルグへの敬意を持った。
ヴェルグは、作戦を組み立てていた。敵も、走行をあっさりと退けられて、空中で思案の最中だ。
正面であろうと、横からであろうと、最速で向かっても、恐らく結界で阻まれる。
まず、防御結界を斬らねばならない。
だが、その瞬間、ツメクサのカウンター魔法が発動する。
スガモとの訓練の最中、何度もやられたので知っている。
いかなヴェルグであろうと、このクラスの結界を斬るには、全力を注がなければならない。その斬り裂いた一瞬、こちらの力を出し終えた瞬間、敵の溜め終わった全力が来る。
さあて。どうするかな。
だが、ヴェルグの考えのまとまる前に、敵は魔法を撃った!
押し潰す。下手な小細工をして、奴の姿を見失うのが一番怖い。カウンターを取れるのは、相手を視認出来ている前提あればこそ。
正面から、倒す。
ツメクサの作戦は決まった。
コ オ
今度は、ヴェルグは斬らず、逃げた。全速力でその場を退避、数秒で数百メートルを駆け上がり、距離を取った。
これも、知っているのか。
4種合成魔法、廃滅。
あらゆる魔法を貫き通し、あらゆる物質を貫通する、各属性魔法の頂点に位置する魔法。この魔法は、防げない。勇者のみが使用可能な選剣や、同じ廃滅でより強力な魔力を込めていれば、あるいは、と言った所か。
見た所、ヴェルグの持っている剣は、それなりに高位の魔剣レベル。ツメクサが本気で撃った魔法までは、斬れまい。
しかし、避けられたのでは、話にならない。
先ほどと同じ、正面から迎撃してくれれば、それでヴェルグは胴体部を失って死んでいたはずなのだ。
誰か、廃滅を使える奴が教えたのだ。この魔法の特徴と躱し方を。
・・・あの、スガモか。
ツメクサも名前だけは聞いていた。
人の身でありながら、既に数万年の時を生きている、現在生存している中で最強の魔法使い。歴代の魔王達も代々スカウトに向かったという、伝説中の存在。
スガモの教えを受けているのであれば。
この戦い、長引きそうだ。
ツメクサは、懐のドラゴンドリンクを確認した。4本しか持っていない。
魔法使いらしい魔法使いであるツメクサに、体力は無い。あまり重くなるほどは持ちたくなかったのだ。
それでも、全開での魔法が、最低5回は使える。
十分だ。
焦らず、削り殺そう。
ヴェルグから見て、およそ1キロ弱。直線距離にしてそれだけの距離があるにせよ、2人の戦いは、白熱したままだ。
この距離、スガモなら、余裕で攻撃範囲だ。
そして、アレを比較対象にしても。
このツメクサという奴、見劣りしない。
ずっとおれから目を離さない。魔法も、溜めたままだ。おれの動きの隙を待っている。そしてこちらの集中力が切れた時、撃ち込むのだろう。
知っていたから、廃滅から逃げられただけ。それしか動きを見せていないおれに、全く油断していない。
それに。
クァァ
あちらこちらの山から、飛竜が様子をうかがっている。ツメクサが呼んだのか。
時間稼ぎにも、こちらの体力を削るのにも使える。そして、最も大きい役割は、プレッシャーを与え続ける事。
四方八方に敵が居る状態で、真ん前の敵だけに集中しきれるものではない。精神が先に削り取られ、まともに戦える状態でなくなってしまう。
おれには、関係ないが。
ヴェルグの鎧と相まった防御能力なら、そこらの飛竜の火力程度では、傷も付かない。ただ、火が周囲を覆えば、当然呼吸出来なくなるので、不利には違いない。
そして、邪魔な飛竜を追い払おうとした時、やはり魔法が来るのだろう。
数は、力だ。ヴェルグが一騎当千の強者であろうと、ならば、万の兵を集めれば、勝てるのだ。
だから、その火竜共を無駄に使い潰す事なく控えさせ、威圧させるだけに留めている。恐らく、直接ヴェルグを狙うのは、ツメクサを追い詰めた時だけになるだろう。
こんな時。
スガモが居れば、何も考えず、ヴェルグは飛び込むだけで良い。後のフォローは、全てスガモがお膳立てしてくれる。
メイストームなら。あいつと一緒なら、例え今すぐ魔王と戦っても負ける気はない。
弱い心。
実力の拮抗した相手と見るや、途端に仲間を求める。
慎重と言えば聞こえは良いが。
まるで、乳離れしていない赤子のような弱さだ。
これが、おれか。
ヴェルグの旅は、それなりの成果を得ていた。
それも、ここで死ねば、全てが無に帰すのだが。
ヴェルグは、どのようにツメクサを攻略するのか。
あるいは、ツメクサは、ヴェルグに一矢報いるのか。
次回、乞うご期待!