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2015年/短編まとめ

青い微睡み

作者: 文崎 美生

ゆらりゆらり、と揺りかごにいるような曖昧なふわふわとした微睡みが好きだ。

このまま目覚めなくてもいいのに、そう思うほどに曖昧なそれが好きなのだ。


さぁさぁ、ざぁざぁ、とどこからか雨の音が聞こえて来て、あぁ、今日は雨なんだ、と少しだけ気分が落ち込む。

晴れた日にぽかぽかと体を温めるような日差しを受けて、柔らかな匂いに包まれて眠るのが好きなのに。

……さぁさぁ、ざぁざぁ、と雨の音だけが耳に届く。

まぁ、こんな日も悪くはないと微睡んだ。


うっすらと瞳が開いてしまって嫌悪。

それでも見える世界は揺らぐ青でほんの少しだけ、また微睡みが戻って来る。


カーテンはなるべく薄いもので、外からの光を通せるような物を選んだ。

壁の色もこだわって自分で選んだ。

自分が眠りに落ちるためのベッドも、母体にいるように感じられる天蓋付きを選んだ。

部屋の明かりも最小限で優しい物を選んだ。

全部全部、自分のため。


薄いぼんやりとして揺れる青い部屋。

それが自分の世界であることは重々承知していて、それが狭い世界なのも理解していた。

それでもこの心地良さを手放すことが出来ずに、こうして甘えるように微睡みに落ちる。


青は優しい。

冷たいという人もいるけれど、自分にとっては何よりも優しい色なのだ。

まるで海のように柔らかく飲み込んでくれて、まるで空のように大きく包み込んでくれる。

自分にはそれが必要なのだ。


開いてしまった瞳は閉じる。

重い瞼が微睡みから抜け出すことを拒絶した。

その本能に従うように、自分の意識もまた微睡みへと落ちて行き、ゆらゆらと夢現になる。


それから別の部屋から香ってくる香ばしい匂い。

ぐぅ、とお腹が鳴った。

嫌だなぁ、折角の微睡みが消えちゃう。

それでも私の意志に関係なく、体は、お腹はぐぅぐぅと空腹を主張した。


サクサクと音が聞こえてきそうな香ばしい匂い。

とろとろと溶けちゃいそうな甘い匂い。

コトコトとお鍋の音がご飯の時間を教えた。

ぐぅぐぅと空腹を主張したお腹。

微睡みと食欲の攻防の始まり。


トタトタ、足音が聞こえた。

パタパタ、こちらへ向かってる。

コンコン、とノックの音。

ガチャリ、と返事も聞かずに開くドア。


「朝ご飯、出来たよ」


透き通った青い水のような声が、朝を告げた。

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― 新着の感想 ―
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