青い微睡み
ゆらりゆらり、と揺りかごにいるような曖昧なふわふわとした微睡みが好きだ。
このまま目覚めなくてもいいのに、そう思うほどに曖昧なそれが好きなのだ。
さぁさぁ、ざぁざぁ、とどこからか雨の音が聞こえて来て、あぁ、今日は雨なんだ、と少しだけ気分が落ち込む。
晴れた日にぽかぽかと体を温めるような日差しを受けて、柔らかな匂いに包まれて眠るのが好きなのに。
……さぁさぁ、ざぁざぁ、と雨の音だけが耳に届く。
まぁ、こんな日も悪くはないと微睡んだ。
うっすらと瞳が開いてしまって嫌悪。
それでも見える世界は揺らぐ青でほんの少しだけ、また微睡みが戻って来る。
カーテンはなるべく薄いもので、外からの光を通せるような物を選んだ。
壁の色もこだわって自分で選んだ。
自分が眠りに落ちるためのベッドも、母体にいるように感じられる天蓋付きを選んだ。
部屋の明かりも最小限で優しい物を選んだ。
全部全部、自分のため。
薄いぼんやりとして揺れる青い部屋。
それが自分の世界であることは重々承知していて、それが狭い世界なのも理解していた。
それでもこの心地良さを手放すことが出来ずに、こうして甘えるように微睡みに落ちる。
青は優しい。
冷たいという人もいるけれど、自分にとっては何よりも優しい色なのだ。
まるで海のように柔らかく飲み込んでくれて、まるで空のように大きく包み込んでくれる。
自分にはそれが必要なのだ。
開いてしまった瞳は閉じる。
重い瞼が微睡みから抜け出すことを拒絶した。
その本能に従うように、自分の意識もまた微睡みへと落ちて行き、ゆらゆらと夢現になる。
それから別の部屋から香ってくる香ばしい匂い。
ぐぅ、とお腹が鳴った。
嫌だなぁ、折角の微睡みが消えちゃう。
それでも私の意志に関係なく、体は、お腹はぐぅぐぅと空腹を主張した。
サクサクと音が聞こえてきそうな香ばしい匂い。
とろとろと溶けちゃいそうな甘い匂い。
コトコトとお鍋の音がご飯の時間を教えた。
ぐぅぐぅと空腹を主張したお腹。
微睡みと食欲の攻防の始まり。
トタトタ、足音が聞こえた。
パタパタ、こちらへ向かってる。
コンコン、とノックの音。
ガチャリ、と返事も聞かずに開くドア。
「朝ご飯、出来たよ」
透き通った青い水のような声が、朝を告げた。