新たな加勢
ガドリールの力で作られた杖を持ってしてもこの体があの力を受け止めるのにはあまりにも脆すぎたらしい。
(どうしよう…もう避けられない………)
抵抗する力を一気に使い果たした妻の姿を見て、ガドリールの瞳がニッ…と笑みに歪んだ。
不意に臨戦態勢を解いた彼の姿にベアトリーチェが目を見開く。
(何? ………)
額から流れる汗が目元に流れ込み、瞬きをした瞬間………目の前にいた夫の巨躯が消えていた。
「えっ?」
慌てて周囲を見渡す。
……彼が居ない……
「何処に………」
その時彼女は自分の立っている床を見て身体を強張らせた。自分の中心に広がる漆黒の影………
(いけないっ!!!!!)
そう思った時にはもう遅かった。汚水のような漆黒の影はベアトリーチェの身体を生き物のように這い登って来るとその華奢な身をきつく締め上げ始めた。
「ガドリール!!!」
締め上げていた漆黒の影の中から手枷を付けた白い腕が現れベアトリーチェの視野いっぱいに刺青を施した身体が飛び込む。足が高く浮き、手から離れた杖が床に転がった。
《ベアトリーチェ………》
見上げたすぐそこに漆黒の髪を垂らした夫の顔があった。首の口から伸びてきた舌がベアトリーチェの頬から唇にかけてをねっとりと這う。
「ガドリ…………っ!!!!」
背中に回された腕が徐々に圧力をかけてきていた。ガドリールは折れそうなほど細い妻の身体を抱きしめたまま両腕を少しずつ狭めていく。
ミシッ……骨が鳴った。
どんなにもがいても彼はびくともしない。そのうちに圧迫されていく肺に酸素が取り込めなくなってきた。必死で息をしようと口を大きく開いても酸素が身体に入って来ない。
目が霞み、ベアトリーチェの意識が遠のき始めたその時………身体を締め付けていたガドリールの腕から突然夥しい血液が吹き出し彼女の体は床に転がった。
「……?……」
手枷を付けた白い腕が転がっている………酸素を夢中で取り込みながら体勢を立て直した彼女の前に白いローブの男の後姿が飛び込んで来た。




