魔兵
双剣徒の魔兵たちは目の前のターゲットを見つけると凄まじい勢いで彼らに襲い掛かった。
ガドリールが双剣徒たちの身体を、原型を留めた形として残しておいたらしく、戦場のような剣戟音が木霊する。
「やだっ!! 違うよ!! 怖い本で見たゾンビはあんな動きなんてしなかったよ!!!!」
オランジュの言葉通り、双剣徒たちと剣を交える元双剣徒たちはそれとは別格の動きを繰り広げていた。
身体が損傷しているが戦い方は生きていた頃と何の代わりも無い。
………振り下ろされた元仲間の剣を払いクロノスは魔兵の足を蹴りつけた。足を折られた死体がバランスを崩し膝を突く。
「許せ……」
そう呟くと仲間であったその身体の首に剣を滑らせた。
嫌な音と共に鮮血を撒き散らしながら頭が床に転がる。今まで共に在った仲間達を切りつける行為は胸を締め付ける
……だが大人しくやられるつもりも無い。
双剣徒と双剣徒であった者たちの戦いの中一人の死体がふとヴェントたちを振り向いた。
「お、おい……あいつ…こっち向いたぜ………」
案の定その片腕を捥がれた魔兵は裂かれた腹から破れた腸をぶら下げながら彼らの元に走り寄る。
クロノスと他の双剣徒も気付いたが、戦術に長けた元仲間の相手だけでそちらにまで手が回らない。
「逃げろ!!!」
剣を弾き、一人の魔兵の首を刎ねながらクロノスが叫んだ。
死体とは言え相手は双剣徒だ。戦術には歴然たる差がある。
「逃げろったって…あいつ死んでるくせに超足速ぇし!!!」