玩具たち
城の上層階から響き渡った巨大な轟音が結界内に響き渡り、一瞬城の窓から閃光が射す。
逃げる道も失い魔神の出現を警戒し続けるヴェントたちがびくりと肩を強張らせた。
「何だよ………」
「一足早く…戦闘が始まったみたいだな。あの魔法はウェルギリウス殿か」
クロノスが長剣を引き抜き呟いた。
「ジイさんが一人で始めたってのかよ!!」
「全員剣を抜け!! 覚悟しろ! いずれこちらにも来るぞ!!!」
そう指示を飛ばすとクロノスはコンデュイールに目を移した。
「結界がもし解ける事があればお前は友人を守り、いち早く退避しろ」
生唾を飲み込み警団の少年は大きく頷いた。
巨大な轟の後に訪れる静寂。
城の上部では一体何が起こっているのだろうか……
しばらくしておぞましい雄叫びが大きく響き渡った。
「うわっ何だコレ!!」
思わずヴェントとオランジュが耳を塞いだ。
今まで何度か魔神の不気味な声を聞いたが今回のこれは普通の声では無い。亡者の怨念が渦巻いたかのような唸りが漆黒の結界をも震わせていた。
「何したんだよジィさん……アカトリエルさんは……」
いつの間にか目が闇に慣れ、うっすらと周囲の状況が見えてきた。
荒れ果てた庭がずっと広がっている。ふと、その時視野の片隅の城壁で何かが動いた気がし、ヴェントはオランジュを背に庇う。
「どうしたんだい?」
「何か…見えなかったか?」
「え?」
その時である後ろから嫌な音が響き渡った。
クロノスを筆頭にした双剣徒たちが音の方を振り向き一斉にランプを掲げる。
淡い光に照らされた闇の中に白いローブを着た男の足がぶら下がっていた。
灯りを徐々に上に掲げていく
…足、膝…そして腰を照らした時…
白いローブの上半身が真っ赤に染まっていた。
「!!!!!!」
その双剣徒の頭の位置にあったのは人の顔ではなかった。
赤く光る無数の瞳…男の頭はすでに魔神の口の中に収まっていた。