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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「ねぇ君、星に興味ない?」
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新歓祭にて(6)

人の良さそうな笑顔とは対照的に物騒な言葉を慧さんが言った途端、室内にいた何人かの肩がびくついた。

どうやら慧さんはその名の通り、本当に聡い人らしい。


「やめとけやめとけ、慧。お前が動くと、ほんとろくなことがないから」


何か心当たりがあるような表情をしながら、クマさんは溜息を吐いた。

「あはは、そうだね」と慧さんも笑う。

冗談だと思って笑うようにしたが、恐らく敵にしてはいけない先輩と親しくなったようだった。



結局、行くところもなかった私はそのまま新歓祭が終わるまでサークル室に居座っていた。

その間にも何人かの新入生が勧誘役の先輩と共に訪れ、新歓祭が終わる頃には十人程度の入会希望者が集まっていた。


「よしっ、焼肉行くぞ! もちろん新入生はタダだからどんどん来なー」


三年生が道案内役と決められているようで、慧さんとクマさんの先導で近くの焼肉チェーン店に向かった。

席は学年がバラバラになるようにくじ引きで決められており、四人テーブルで偶然慧さんと一緒だった。

残り二席は空席で、片付けをしている二年生が後から来るようだ。


「本当無愛想だよね、あいつ」


少し会話をした後、慧さんはクマさんを指す。

クマさんは一年生が二人いるテーブルで、殆ど口を開くことなく黙ったままだった。

結局、隣同士の一年生二人で話が盛り上がっている。


「こういう時は先輩が気ぃ回すのにね」

「えーと……確かに不器用な人かもしれませんが、悪い人ではないと思います」


どう反応していいか分からなかったが、サークル室でのやり取りで受けたクマさんの印象を述べる。

すると、慧さんは少し驚いているような目でこちらを見てきた。


「へぇ……クマのことをそんな風に言う子、初めて見た」


慧さんが何を考えているかよく分からなかったが、その表情から本当に感心しているようだった。

 

焼肉店を出ると会長らしき二年生が食事会とカラオケを後日行うことを案内していた。

費用は先輩持ちだが、参加出来るのは入会を決めた人のみだそうだ。

参加者は挙手を求められて少し迷っていると、隣にいた慧さんが声をかけてくれた。


「亜梨子ちゃんは最初に入会してくれたんだし来てよ」

「何迷ってんだ。お前は参加しろよ」


定位置らしく慧さんの隣にいたクマさんさえも、そんな風に声をかけてくれて嬉しかった。

結局、先輩達の好意に甘え、迷っていた手を挙げた。



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