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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「ねぇ君、星に興味ない?」
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新歓祭にて(5)

俯いたままそう口にすると、周囲から小声だが笑い声が聞こえた。

『変な名前』『顔に似合わないよね』などの声も脳内で響く。

幻聴だと分かっていてもあの時と同じ、明瞭なまま聞こえて来るのだ。

こんなことがもう何度あったか分からない。

このままでは、その後の悲惨な思い出まで脳裏に蘇ってきてしまう。

だが、その幻を打ち破るような声が聞こえてきた。


「ありす! 『子』って『す』って読めるんだね、知らなかった。かわいい名前だよな、なあクマ」

「ああ……いい名前だ」


私は顔を上げ、慧さんとクマさんのことを初めてまじまじと見た。前髪の間からはっきりと二人を捉える。


「……本当、ですか?」


何度、両親を呪ったか分からないその名前を褒めてくれる人がいるなんて。嬉しくて仕方なかった。


「うん! 『森のクマさん』と『不思議の国のアリス』が揃うなんて、今年のうちはメルヘン路線全開だね」

そして「メルヘンコンビ結成だ!」という慧さんの言葉で再び室内に声が響く。

それは今までに経験したのとは違う、温かい笑い声だった。


それから天文同好会〝スターゲイザー〟について慧さんが説明してくれた。

活動方針は『星を見ながら酒を囲もう!』で、天体観測の他にコンパも二ヶ月に一回の頻度であるらしい。

だが、どれも基本的に参加は自由だと付け加えられた。その緩さに安心感を覚える。

熱血、強制などのキーワードと私は長年の間、疎遠でいる。


「良かった。知識とか全然ないし……」

「うちは専門的にやるサークルじゃないから大丈夫。みんな亜梨子ありすちゃんのように、興味があって集まった感じだから。もちろん本格的にやりたいなら何人かは詳しい奴もいるし、サークルの性質上、車持ちばっかだからゲリラ的な観測会は結構やるよ。なぁ、クマ」


「なんで俺にばっか話を振る……」と呟きながらも、クマさんは頷いた。

慧さんもクマさんもそれぞれ車を持っており、季節問わずに星を見に高台に行くという。


常にサークル室に顔を出している人は二十人もいないそうだ。

就活や卒論で四年生は滅多に顔を出さず、サークルの主な運営は二年生が行っているようだ。

慧さんとクマさんは三年生だが、他の三年生はコンパとかにならないと現れないらしい。


「まあ、俺らは元会長と元副会長だから今もちょくちょく顔出してるけどな。もし亜梨子ちゃんが何か言われたら、俺らに言うといいよ。そいつ、しごくから」



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