川岸にて(2)
「お前、酒が入ってるとかわいいなぁ」
そう言われて呆気に取られたが、「お酒入ってないとかわいくないってことですか!」とついこぼしてしまった。
何言っているんだ自分、と後悔して慌てて顔をそらす。
「そうじゃなくて、酒入らないと弱音とか本音とか言ったりしねぇだろ。強がってるお前より、素直なお前の方が好きなだけだ」
その言葉の響きに、どうしても反応してしまう。
僅かな期待を胸に抱きながら振り返る。
クマさんは顔をそらしたままだったが、あまりにも私がじっと見ているので観念したように一瞬だけこちらを向いた。
──その顔は確かに、赤かった。
「クマさん、今のって」
「勘違いするな、俺がお前をどう思ってるかなんて言ってねーよ。それに酒が入ってる限り、俺もお前も言ってることは全て戯言だ」
そう言われ、一瞬脳裏に過ぎった展開は呆気なく掻き消された。
「そろそろ戻るか。長くいるとまた騒がれるだけだし」
クマさんはすぐに立つと、落ち込んで肩を落としている私を待たずに歩き出した。
このままでは、せっかくの慧さんの計らいが無駄になってしまう。
どうすれば取り合ってもらえるのだろうか。
必死に考えていた時、咄嗟にある考えが頭に過ぎった。
そうだ、今言うことが全て戯言ならば、信じて貰えるようにしなきゃダメなのだ。
目にある涙を手で振り払いながら私は立ち上がる。
今、そんなものはいらない。
「今度、お酒が入ってない時に……!」
その言葉と真意が届くように声を上げると、数歩先にいたクマさんの足は止まった。
その場の時間が止まったように、お互い動かないままだ。
やがて、クマさんはこちらを振り返った。
「ああもう! 分かぁったよ、俺の負けだ。急な話で、お前のことまだかわいい後輩としか思えねぇけど……待ってる」
クマさんはそれだけ言うと再び歩き出した。
私は自然に笑みが浮かぶと、追いつけるよう少しだけ駆け足になった。
そしてその背中の一歩後ろを歩く。
──本当は近くにあったのに、遠くばかり見ていたせいで今までの私は何にも気付けずにいた。
けれども今年の夏休みはきっと、満天の星の下でペルセウス座流星群を見ることが出来るのだろう。
以下、本編とは関係のない後書きですので読まなくても展開に支障はありません。そのうちなんか増えたり減ったりしてるかも?
えっと、たぶんどうもはじめまして、瀬戸真朝と申します。
この度は、拙作「星見る人びと」をお読み頂きありがとうございます。
この作品は、2011年5月に某大学文芸部にて発行された「新入生歓迎号」に掲載するために書いた作品です。
大学やサークル独特の雰囲気などがこの作品で少しでも伝わって、新入生の緊張を和らげるものになっていたら嬉しいです。
……ただ、私自身が天文系のサークルに全く入ってないので、天文知識は全然ないですごめんなさい!!
中学の時におもちゃの天体望遠鏡でクレーター観察したり、高校の自然科学部に交って学校の天文台で木星や星雲の観察をしたぐらいです……
実は本格的な野外での観察はしたことなかったり……アリコレベルの知識で執筆しました。THE・突貫工事!!(殴
ということで、この作品は「天文知識を楽しむ小説」というより「クマのツンデレとアリコの天然を楽しむ小説」としてお読みいただけると幸いです……(逃
これ書いた後に前書きに注釈入れとくので勘弁してくださいー!
ちなみに、うちの大学の天文同好会はこんなんじゃないです。ていうか全然知らないです←
今回書いたスターゲイザーの中身は、(児童文化研究会+文芸部+熱気球同好会)÷3+妄想7割で出来てます。よく分からんわwww
フィクションってことでお願いします……
とはいえ、一応ネットとかで調べて書いてはいるのですが、記載していることで間違いがあれば感想とかでつっこんで頂けると作者が喜びます……本当すみません……
既に完成稿が手元にあるのですぐ完結出来るかと思いきや、書き直しとかしたり改行とか入れてたら一ヶ月近くかかってしまいました。
特に、最終話は短いくせに更新がだいぶ遅くなってしまいました。
学内雑誌用のSSの〆切に追われていたのが主な原因でした。申し訳ないです。
では、この作品について簡単に。
構想自体は実は09年の夏には出来上がっていました。ただちょっと展開が違っていたりしますが!
アリスがクマと一回は付き合ったけれどもすぐ別れていたり(!)、そもそも慧が存在しなかったり……(え
『スターゲイザー』が舞台のままだし大元の筋は変わっていないのですが、新歓号を意識してないのでサークル入門小説というより完全に恋愛ネタに走ってました。
今の形の方が良かったかと思ってます。慧いないとかありえねぇ……
ちなみに、09年夏はこの作品ではなく「飾らずに 君のすべてと」という作品を書くことになり「星見る人びと」は一度ボツになりました。
「飾らずに~」は今回の「星見る人びと」のパラレル版(?)になっているので、よろしかったらサイトに掲載しているものも読んで頂けると嬉しいです。
特に、星見る人びとのクマと、飾らずに~のヒロは同一人物設定だったりします。(ただしパラレルワールドなので魂が一緒なだけ。歩んできた人生が異なる影響で、名字も違っていたりします。まあそれはおいおいで)
飾らず~のヒロはちょっと訳ありでクマと比べてダメ男ですが…………すこし更正したのがクマ、という設定だったりします。
星見る人びとの裏話といえば……
今回の初稿、実は完成版と大きく異なっている箇所がありまして。
完成版
・サークル室の場面で2年生から慧が女の子であること、そしてクマと出来ていることが知らされる
初稿
・サークル室の場面でクマと慧が出来ていることが2年生から伝えられるが、慧=女性だと知るのはカフェの場面
えー つまりですね。
アリコ、2年生に言われた時に♂×♂想像しちゃってます。
(2年生はアリコがまさかそんな想像してると思ってません。勝手にアリコが勘違いしただけ)
なんという腐女子設定wwwwww
初稿読ませた身内の反応は半々でしたが、いきなり腐ってる展開はさすがに違和感ありありなので今回の流れに変更しました。なんで腐ってるのか説明入れられないしね……
ちなみにそんな誤解をした原因は、慧=女だということをアリコは知っていると2年生は思ってしまったからです……ああアリコはほんと鈍感すぎる……(笑
この作品は書いていて面白かったですが、アリコの鈍感ぶりとクマの不器用さには作者でさえ歯がゆい思いをしました……
「アリコいい加減気付け察しろ!!」
「クマお前どうしてここではっきりしない!!」
と突っ込みながら書いておりました。
ほんと、見ているこちらがはらはらするものです……
お前らのせいで全然話が進まねぇ!!と嘆いたことも何度あったか……
これ、部誌換算するとB5の2段組で29枚なのですが、本当は15枚程度で済ますつもりだったのに…………
そんな物語にとって、慧の存在ははっきり言って神でした。
慧がいないと話が進まない!!慧様々ですよ。
作者に一番似ていたのは実は慧かもしれない……
元々、三角関係を書きたかったのですがどちらに転がるか序盤は分かりにくくしたくて。
慧とクマは友達で、慧はアリコがお気に入りで、でもアリコはクマが好き。
そうなった時に、慧が一人にならないようにするにはどうすればいいかと考えた時、慧女性説が浮き上がりました。
しかも彼氏もいるというから、これなら円満じゃないかと!!←
慧がアリスをかわいがるのもおかしくないですもんね。
クマは……もうね、不器用すぎる。
こういう男性、大好きです!!ツンデレ万歳!
けれども、「なろう」に投稿された作品を最近読み漁っていると……クマ、全然ツンデレじゃない?むしろ糖分低め?
「俺、不器用ですから」とか言いかねない(でも言わない)奴ですが、少しでも萌えて頂ければ光栄です。
アリスは……ね。萌えとか考えてなかったけどどうですかね?
どっかのキャリーの人よりはいいヒロインだと思いますが(笑)
さて、この作品はこれで終わりです。
と、私も思っていました。←
いや、これマジですよ。実際、新歓号の原稿が刷り上った時は「無事に終わってよかった」と安心したものですよ。
一話完結として載せた作品ですし。
ただですね……新歓号を発行してからも、この3人がどうも脳内でまだ騒いでまして。
その上、『4人目』も現れましてね……。
今? あの慧の横にいますとも。会社は休みだそうです。
え……お前ら、本当に北海道行くの?!
マジで?何にも計画してないよ?
ていうか何で作中で北海道にしたって、参考で見てた天文同好会のホームページの大学が北海道にあったってだけだよ?!(実話
あと、広大な土地で寝そべって星見れたらきれいだなぁと思っただけで……私、小学校の時に函館に1回行ったきりなんですが……ああ、ええ、書きます。はい。
てことでこの作品……続編出ます。まだ一文字たりとも書いてませんが!←
ついでに言うと、慧の彼氏さんが慧との馴れ初めまで話してくれたので、番外編も書けそうです。なんてこったい。
私、こんなにこの作品と付き合うとは思ってなかったよ……
とりあえず、七月に公開予定ですのでそれまでお待ち頂けると幸いです。
他にも短編がサイトにあったりするので!!
ではでは、長々とお読み頂きありがとうございました。
もしよろしければ、感想・ポイント・ランキング等、見える形で何かしら反応を残して頂けるともれなく私が喜びます。
↓「飾らずに 君のすべてと」など、短編を公開しています。よろしかったら是非。
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