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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「今日だけ、素直になりなさい」
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七夕コンパにて(2)

グラスを掲げて乾杯した後、ビールもほどほどにカクテルに変えてもらう。

久しぶりに二年生の先輩や、初めてお会いしたOBの先輩と歓談していた時、少し赤くなった顔をした会長の声がマイク越しに響いた。


「皆さーん! ついに七コン恒例、『天の川渡り』の時間になりました! 今年、あの輝く織姫星と彦星になれるのは誰でしょうか? 今から紙を配布しまーす」


何のことだか全く分からず、二年生の先輩から渡された紙を見る。

そこには私の名前と一緒に、ハート型に囲まれた中に、『先輩後輩関係なし! 年に一度だけ! 呼び出したい異性は誰なのかを書こう!』とあった。

驚いて私は近くにいた二年生に説明を請う。

どうやら、気になったりする人の名前を書き、それが両思いだった場合は半ば強制的に二人きりで散歩に行かせられるらしい。

「二年以上は自由参加で事前に書いてるんだけど、一年生は絶対参加なんだよ。ま、誰もが通った道だから頑張って」と言われてしまった。


ほろ酔いの頭に今一番話したい人が思い浮かんだ途端、酔いが回ってしまうぐらいに私は頭を振る。

異性ではないけど慧さんの名前を書いてしまおうかと思った時、視線を感じて顔を上げた。

少し離れた方から慧さんがじっと私を見ている。

口の形から、や、く、そ、く、と言っているようだった。

私は乾杯前の慧さんとの会話を思い出して気付く。

『素直になりなさい』とは、こういう意味だったのかもしれない。

それに気付くと、何だか今までずっと慧さんの手のひらに転がされていた気がしてくる。

何だか悔しくて、名前を記入する代わりに走り書きで絵を描いた。

──森の中を闊歩かっぽする大きな熊を。

そんなことしたって些細な抵抗にしかならないが、描いた紙を四つ折にして箱に投げ入れる。

こんな騒ぎに参加すること自体、今までの私らしくない。

大勢の先輩や同期の前で恥をかく姿がさっきからずっと脳裏に浮かんでいる。

けれども、もう、どうにでもなってしまえ。


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