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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「今日だけ、素直になりなさい」
27/31

七夕コンパにて(1)

*****


七夕コンパの当日に会場である河川敷に行くと、多くの人が集まっている。

屋外でやるコンパのため、車のライトを頼りに準備をしているようだ。

恐る恐るその集団に近寄ると、「アリコちゃん、久しぶり!」「来てくれたんだ、嬉しい」と何人かの先輩が声をかけてくれた。

中には前髪を切ったことで「そっちの方がいいよ、かわいい」と言ってくれたり、新歓合宿の件を謝ってくれたりする先輩方もいる。

みんな私が思っていたよりも優しくて、内心安堵する。


だが、少し離れたところにクマさんの姿を見付けると、すぐに目をそらしてしまった。

クマさんも私の方を見たが、以前のように私に話しかけることはせずに背を向ける。

自分も目をそらしたくせに、小さな痛みを感じているのは何なのだろう。

そんなことを考えていると、乾杯のビールを私のコップに注ぎながら慧さんが小声で話しかけてきた。


「クマのところには行かないの?」


私はその名前を聞いて焦りながら、ぶんぶんと首を横に振る。

すると慧さんは私の真正面に座り込み、じっと見上げてきた。

髪を切ったのもあり、初めて慧さんと目が合う。

慧さんの目は強く、まっすぐな目をしていた。


「私に言われなければ、今日は来なかったんだよね? うちは参加しない人を咎めたりしないから、今後も来る気がなければ、クマに会えるのは今日で最後なんだよ」


それは考えてみれば当然のことなのに、慧さんの口から聞くと改めて実感が湧いた。

そうだ、クマさんと会うのはあの合宿の日で最後だったはずだったし、私が望まなければ今後も直接話すことはない人だった。


「亜梨子ちゃん。今日だけ、素直になりなさい」


慧さんは私の両腕を掴み、訴えかけるように私に告げる。

少し迷ったが、今日この機会があるのは慧さんのお陰だ。

「では乾杯しましょう」という会長の声が聞こえた時、私は慧さんの目を見ながらゆっくりと頷いた。


「ん。亜梨子ちゃん、いいこ。私は亜梨子ちゃんのこと、信じたよ」


そう言って慧さんはクマさんの隣に戻っていく。

それまでクマさんはじっと私たちの方を見ていたようで、一瞬だけ目が合った気がした。


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