カフェにて(4)
「え?」と私は疑問の声を漏らす。
スターゲイザーの活動にもう参加するつもりはなかったのもあり、そう言われて戸惑いを隠せなかった。
つい渋った顔でいると、慧さんはそれを察したようで私の手を取る。
「二年と三年の間に生じた歪みのせいで一年生が犠牲になるのはおかしいと思うから、彼氏がいることを含めて二年生には私の方から説明するよ。亜梨子ちゃんに被害が出ないようにするって約束する。だって……私だよ?」
慧さんのその不気味な笑みに、私さえ身震いがしてしまった。
「あの……ずっと聞きたかったんですが、どうして慧さんって二年生から……恐れられているのですか?」
「いやぁ、三年から見て一年は孫みたいでかわいいもんなんだけどね。私もクマも元々運動部出身で、役職就いてた時に問題が起きたりすると体育会系のノリでやってたから……ね。ちょっと厳しかったな、と今は反省してるよ。だけど、後悔はしてないかな」
確かに、文化系が集まりやすいこのサークルでそのやり方は反感が生まれそうだ。
「それで、もし七コンに出てもうちのサークルが嫌になったなら辞めていいから。でもこんな形で仲良くなった後輩がいなくなっちゃうの嫌だからさ。勝手でごめん」
「謝らないでください、慧さんは何にも悪くないですから。七夕コンパ、行きます」
慧さんを悲しませたくてサークルに行かないようにしていた訳じゃないのに、結局のところ自分の勝手でこんな顔をさせてしまっていた。
「そう。良かった、ありがと。七コン、楽しみにしてるね。それと──」
言いかけた慧さんは自分の前髪を指した。
「これを機に、そのバリアともお別れしな。一緒に北海道行きたいからさ。うちのも紹介したいし」
慧さんが何のことを言っているのか察すると、ただ頷いた。
いい加減、向き合わないといけないのだ。
日時を聞いた後、私はカフェテリアの前で慧さんと別れた。
七夕コンパに行ったらもっと状況は悪くなるかもしれない。
けれども、今の私はきれい事を言ってこの状況からただ逃げてるだけだった。