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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「そっか、自分の力で気付けたんだね」
23/31

カフェにて(1)

*****


新歓合宿の後、今まで以上にサークル棟に近付かなくなってしまった。

慧さんから合宿の謝罪と共に、天体観測や飲み会にメールで何度か誘われたが、私はそれを全て断ってしまっていた。

たとえあの時にクマさんが強く言ってくれたとしても、陰では事実が歪曲した形で噂になっているに違いないと思っていた。

私が悪いのに、サークルにいたらクマさんに迷惑をかけてしまう。

いや、本当は現実と向き合いたくないだけだった。

どちらにしても、私は二人の姿が遠くから見えると別の道を通ったりして前よりもっと避けてしまっていた。


六月になると生ぬるい梅雨独特の風が吹き、曇り空と雨の日が続くようになった。

部屋の窓から外を見ていると、カラオケからの帰り道や合宿の夜に見たあの星空と同じ空だとは思えない。

むしろ、あんな美しい空を見れることはもう二度とないのではないかと考えたりもした。


慧さんと偶然会ったのは、そんな長い雨が続く頃だった。

避けていたつもりが少し油断していて、夕方近くになって講義が終わって帰ろうとしていた時に後ろから不意に話しかけられた。


「亜梨子ちゃん、久しぶりだね」


いきなりで上手く対応出来ず、俯いたまま「はい」と言ったり頷いたりすることで精一杯だった。


「ずっと会いたかったんだよ。この後の授業がないなら、この前のお詫びにお茶付き合ってくれるかな」


それは慧さん独特のあの有無を言わせない笑顔だった。

本人も分かっているらしく、私の返事を待たないまま歩き始めた。

しぶしぶ慧さんの後を付いていく。


生協のカフェテリアは雨のせいか少し混み合っていた。

慧さんに聞かれて私が紅茶と答えると、紅茶とメロンクリームソーダを店員に注文した。

渡された物を持って席に着く。

慧さんは窓際で、隣のテーブルが空いている二人用の席を選んだ。


「合宿の日さ、飲ませすぎちゃってごめんね。あの日、クマと何話してたか分からないけど……」


当たり障りのない話をしながら紅茶にミルクと砂糖を入れていると、慧さんはそう言って話を切り出してきた。


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