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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「お前……ほんと、世話が焼ける奴だな……」
18/31

草原にて(1)

トイレから出た後、大広間に戻る途中に玄関があった。

何となく星が見たくなったので、靴を履いてふらっと外に出る。

持ってきた薄い上着を羽織っていたとしても寒かったのに、着替えたジャージだけで外に出たのはこの時既に酔っ払っていたとしか思えない。


望遠鏡は既に片付けてあったが、肉眼でも多くの星が見れた。

それは大学周辺よりも多く感じた。

これで満月だから見にくいというのなら、新月の時は一体どれほど星が見えると言うのだろう。

その場で立ち止まり、言葉で形容しがたい星の輝きを一人で見上げていた。


「おい、そんな格好でいると風邪引くぞ」


玄関の方を振り向くと、何故かクマさんが立っていた。


「クマさんー? どうしたんですかー?」

「どうしたも何も、お前を探しに来たんだよ。トイレ行ってもいないし、多分外だろうからこれ貸して来いって慧に言われた」


差し出されたのは黒い冬物のダウンコートだった。

サイズからして明らかに大柄の男性ものだ。

だが理性を若干失っていた私は、クマさんの口から慧さんの名前が出ただけで何故だかつっかかってしまう。


「これたぶんクマさんのじゃないですかー寒くないし別にいらないですよーだ」

「いいから着ろ。この時期でもここは標高高いし、夜中にそれじゃあ寒すぎるんだよ。これぐらいの防寒はしろ」


もはや感覚が麻痺していて寒さを感じずにいたが、クマさんは少し強引に私の肩の上からコートを被せた。

コートからは私のものではない匂いがする。

きっとこれは、クマさんの匂いだ。

そう気付いて思いがけず安心すると、私は勝手にふらふらと歩きながら空に向かって指差した。


「クマさん見てください、星がいっぱいですよー、見に行きましょーよ」

「お前……ほんと、世話が焼ける奴だな……」


そう言いながらも、歩き始めた私の後ろを付いてきてくれる。

いつもより自由奔放に振舞えて、私の気分はますます高揚した。

わずかな外灯と月の光を頼りに歩いていると、バンガローから少し離れたところにキャンプファイヤーで使うような開けた場所があった。

その草原の真ん中に座ると、クマさんもその横に腰を下ろした。



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