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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「そういうところがガキなんだよ、お前。お子様は素直にこれでも飲んでろ」
17/31

飲み会にて

*****


全体での天体観測が落ち着くとバンガローに戻り、飲み会が開始された。

さっきの空のビール瓶とはまた別のビールがケースで大広間に置かれる。

『星を見ながら酒を囲もう』と言っているだけあって、先輩はみんな酒好きのようだった。

乾杯の際に注がれたビールを一口飲んだが、その苦さは口に合わない。

私が渋い表情でいると、丁度斜めに座っていたクマさんが面白そうに笑う。


「子どもにはまだ早かっただろ」


クレーターの件から、クマさんは私を子ども扱いしたままだ。

身長が若干低いのもあり、今までにも幾度かそういう扱いをされていた。

不満を表すために、ビールが入ったグラスを持ったままクマさんとは反対方向を向く。


「そういうところがガキなんだよ、お前。お子様は素直にこれでも飲んでろ。こいつも酒だから」


そう言ってクマさんは私のコップを奪い、代わりに『カシスオレンジ』と書かれた缶を差し出してきた。

その言い方に少々ムカっと来たが、好奇心に負けて缶に手を伸ばそうとする。

するとクマさんは「注いでやるよ」と言って、私のコップに入っていたビールを一気に飲み干した。

あっ。そう言いかけて、ぐっと堪える。

ここで、『間接キス』だなんて騒ぎ始めたら、ますます子供扱いされるに違いない。

私と違って、どこまでも大人なクマさん。

勧められたカシスオレンジはビールとは違い、甘酸っぱい爽やかな風味だった。これからは、カシスオレンジを注文しようと決めた。


クマさんと入れ替えに、今度は慧さんが私のいるテーブルに来た。

慧さんは瓶に入った茶色い液体と牛乳を混ぜた飲み物を差し出してくる。

名前を聞くと、『カルーアミルク』という名のカクテルらしい。

それを一口だけ飲むと、卒業して就職してもこれが飲めるなら毎日仕事していいとさえ思えるくらい美味だった。

一気に飲み干すと、その飲みっぷりを喜んだ慧さんはコップに茶色に輝く液体を再び注ぐ。

そのまま慧さんと楽しく様々なカクテルを飲み続けていた。

一年生はその場で次々と眠ってしまい、先輩に布団に連れていかれる中でも私は飲み続けていた。


やがて生き残る一年が私一人になり、慧さんに勧められるがままに今度は日本酒を口にしたが、今まで感じなかった熱い何かが体に注がれる心地がした。


「亜梨子ちゃんって日本酒飲んでも、全然顔色も変わってないけど、結構強いんだねー!」


顔が少し赤い慧さんは本当に感心しているようだった。


「そうなんですかー? 私、小さい頃に父のビールを一口飲んだ以来、お酒飲んだことなくて強いとか分からないんですけどー」


お酒が入っているせいか、少し語尾が伸び口調になってしまったが、慧さんは驚いた顔つきだった。


「うっそ、亜梨子ちゃんって今まで飲み会とか行ったことなかったんだ?! じゃあ限界とか知らないっしょ? 大丈夫?」

「全然大丈夫ですー。あ、ちょっとトイレ行って来ます」


そう言って立ち上がろうとした時、少しよろめいた。

それから何とか歩き出したが、「大丈夫―? 付いていこっか?」という慧さんの声が背後から聞こえる。

けれどもトイレに行くだけだからと思い、「大丈夫ですよ~」と返して一人で向かった。


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