表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
『それは不快ではなく、心地よいくすぐったさだった』
15/31

天体観測にて(1)

*****

 

「ごめんね。あれ、うちの伝統なんだよ。祝い事がある時はビールかけって決まりなの」


タオルで頭を乾かしながら大広間に行くと、慧さんはそう言って手を合わせてきた。

服は結局、寝る直前に着る気でいた高校時代のダサい緑色のジャージに着替えてある。


「伝統、ですか」


事情が分からず混乱していたのもあり、私は慧さんとこの時は普通に接することが出来ていた。


「そう、うちって変な伝統がいくつかあってね。入会を決めた人に対しての言葉もそう。同好会とはいえ結構歴史があってさ」


我らスターゲイザーの新たな仲間、とは古めかしい言い方だとは思ったが決まり文句らしい。

慧さんが入ってきた年の四年生が既にそう言っていたそうだ。


「伝統と言っても、増えたり減ったりしてるけど。でも、ビールかけはこれから楽しいと思うよ。今日は一方的だったけど、これからはお互いかけあうし」


面白い伝統だと思ったが、これからもあるらしく私はちょっと躊躇した。

かける方が楽しそうとは思ったが、あのノリで自分も他人と騒げるのだろうか。


「まだ怒ってる? お風呂入ってる間に望遠鏡の準備しといたから許してくれると嬉しいな。ほら、月がきれい」


窓の向こうの方を慧さんは指差す。手をついてガラスに少しもたれかけると、まあるい月の眩しい光が目に入ってきた。

振り返ると、慧さんは心配そうに私の顔を覗きこむように見ている。


「怒ってないです。ただちょっと今、考え事してて」

「分かった。俺に出来ることがあったら言ってね」


慧さんは私の頭に手を置く。

『慧さんとクマさんが〝できてる〟って本当ですか』とすぐにでも言ってしまいたかったが、失礼と受け取られても仕方がない質問だ。

「……ありがとうございます」と返すので精一杯だった。



やがて始まった天体観測は、望遠鏡をいくつか使って月のクレーターを見るようだった。


「日程の都合上仕方ないけど、今日は満月だから本当は観測に向かないんだよ。だけどせっかくだし、月の観測が一番初心者向きだから丁度いいかな」


私の横にいた慧さんはそう言って天体望遠鏡を覗かせてくれる。

最初はピントが合わなかったものの、ピントを合わす方法を教えてくれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ