表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「〝星見る人〟──そのまんま俺たちのことだな」
12/31

入会式にて(1)

*****


サークル棟前で慧さんと、そのすぐ後ろにいるクマさんの顔を見ても、気分は晴れない。

そんな私の気持ちとは裏腹に空は雲一つない快晴で、絶好の天体観測日和のようだった。

サークル室での出来事から一週間が過ぎ、新歓合宿当日が訪れた。

二人と鉢合わせそうな場所やサークル棟を避けて通っていたため、あれから一度も会っていなかった。


「どうしたの、亜梨子ちゃん? 元気ないね」

「いえ、何でも……」


今までは会う度に嬉しかったはずなのに、今は二人の顔さえ見たくなかった。


「なんだよ、元気ねぇな」


慧さんだけでなく、クマさんまで声をかけてくれた。

だけど私は何も言えずにいる。

二年生の先輩方から二人のことを聞きました、とも。


出発するという会長さんの声が聞こえたのを機に、二人とは離れた列に入って歩いた。

だが、大学の駐車場に着いて発表された私の配車はクマさんの車で、心の中で戸惑いが広がる。

どうしてこんなに二人を避けたくなってしまうのか、自分でも分からない。

二年生は仲の良さを考慮してこの配車にしたのだろうけど、今の私には逆効果のようだった。


「アリコちゃん、助手席乗らないかい?」


あの日いた二年生の男の先輩が声をかけてきた。どうやら同じ配車のようだ。


「あの、えっと……」と口ごもる前に、「頼むよ、アリコちゃんなら大隈さん得意でしょう? 俺、沈黙に耐えられなくて……」と小さな声で手を合わせる。

結局断り切れずに頷くと、先輩は大げさにありがとうと返してきた。

しぶしぶ助手席に座り、運転席に先に乗っていたクマさんに「よろしくお願いします」とお辞儀すると、「おう」とだけ返ってきた。


クマさんの車は車高が高いシルバーのワゴンRで、後部座席に一年生の女の子とさっきの先輩が座っていた。

挨拶は交わしたものの、それからは後ろの二人だけで話が盛り上がっていた。

そういえば慧さんやクマさんたちのような先輩とは話すものの、一年生とは殆ど会話をしていないことに気付く。

二年生もクマさんや慧さんがいる時は私に話しかけてこない。

後ろで楽しそうに話しているのを半分耳に入れていると、早く同期とも仲良くならなくては、という焦りに近い思いがようやく生まれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ