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星見る人びと  作者: 瀬戸真朝
「アリコちゃんって、伊藤さんたちのお気に入りだよね」
10/31

サークル室にて(1)

*****


他学部だったが慧さんのことはキャンパス内でよく見かけた。

私を見かけると、慧さんはヒラヒラと手を振ってくれる。

その仕草はまるで女子の取り巻きがいてもおかしくないくらい手慣れていて優雅だった。


一方で同じ日文にちぶんのはずなのにクマさんと会うことは案外少なかった。

それでも見かけた時に挨拶をすると、クマさんは笑顔こそ見せなかったが重そうに手を上げてくれる。

それだけでその日は少しラッキーに思えた。


クマさんと慧さんは学部が違うのに、二人でいるところも何度か見かけた。

そうやってよく一緒にいるのが見ていて少し羨ましい。

そんな友人なんて、私には昔から一人もいなかった。


サークル室は一人ではなかなか入りにくく空きコマや放課後にサークル棟前をうろうろしていると、慧さんやクマさんによく見付かった。


「うわっ、慧さん! お疲れ様です、では──」

「はいはい、サー室行くの怖くない怖くないー逃げなくていいからねー」


特に慧さんはそう言って、逃げようとする私を引きずって半ば無理矢理にサークル室に連れて行く。

けれども、私にとってはそれが救いだった。

一人では入りづらいが、慧さんやクマさんとなら大丈夫だ。

サークル室で話したりトランプをしたりしていると、二人はたまにご飯に連れて行ってくれる。

そんな風に一緒に過ごせるのが楽しくて、三人でいることに私はすっかり慣れてしまっていた。



新歓祭から二週間経って、新歓合宿の説明がしたいと会長さんから改まって連絡があった。

一年生は他学部が多くて空きコマが合わず、この時間に説明を受けるのは私一人だそうだ。

少し緊張しながらサークル室の扉を開けると、会長さんを中心とした二年生が中にいた。

挨拶の後に聞くと、三年生は毎週この時間に学部共通の就職ガイダンスが入っているそうだ。

二人と話せるのを内心楽しみに来ただけに残念に感じる。

しかし気を切り替え、会長さんたちと楽しく話せた。

やっぱり緊張してしまい、目は合わせられなかったけれど。

会話の流れから名前をもじって『アリコ』と呼ばれるようになったが、そこに悪意は感じられなかった。



やがて本題の新歓合宿の話になり、五月のゴールデンウイークに一泊二日で行うと聞かされた。

ここから少し離れたところにある山奥のバンガローを一軒借り、入会式の後に天体観測をするそうだ。

注意点として、「着替えを多めに持ってくるのと、汚れてもいい服で来るのを忘れないでね」と強く言われた。

理由はよく分からなかったが天体観測をしたことがない私は、観測を行う際に服が汚れたりすることがあるのだろうと結論付ける。


「自己紹介も入会式の時にしてもらうから、何話すか考えて来てね」

「えっ、自己紹介ですか」


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