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どちらが王妃?  作者: kanaria
第1章 人間の大陸編
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6 夕食は豪華

……い…………ください。


まいさま……ください。


「マイ様、お目覚めになってください。」


ん、だれだ?

聞いたことがない声だな。

しかも私を様付けで呼ぶなんて……。


舞はまぶたを閉じたまま、あまり活動していない頭で考えた。

しかし睡魔にはかなわず再び眠ろうとしたところで次の言葉が聞こえてきた。


「マイ様、お目覚めになってください。お夕食の準備が整いました。」


舞はその言葉を聞いてまぶたをを開いた。


はっ、思い出した。

この声はミシェナの声だ。

ってことはやはり異世界トリップをしたのは夢じゃなかったのか……。

まあ、夢にしてはずいぶんとリアルだったしな。


微かに痛む頭を押さえながら上半身を起こす。


「ゆ、うしょく?」


「はい。ですが、それよりもマイ様の顔色がお悪いようですが具合がお悪いのですか?」


顔色が悪い?

ああ、夢のせいか。

あの夢を見ると決まっておかしくなる。

最近は見てなかったというのについてない。

おそらく美羽の金持ち発言の影響だろう。

美羽のああいった所は好きではないし、過去を思い出すきっかけになったんだろうな。


「いや、具合は悪くない。そんなにひどい顔色をしているのか?」


「はい、顔が真っ青になっておられます。本当に大丈夫ですか?」


ミシェナが心配そうに見つめてくる。


「それは嫌な夢を見たからだ。だから具合が悪いわけじゃない。そんなに心配しなくても大丈夫だ。」


「そうですか……、わかりました。ですが、もし具合がお悪いのでしたら遠慮なくおっしゃってください。」


「ああ、わかった。だが、そんなことよりも夕食ができているのだろう?」


ミシェナがなおも心配そうに私を見てくるので話を変えることにした。

いささか無理矢理かもしれないがこれはミシェナの気をそらすのに有効だったらしい。

ミシェナは少し微笑んで答えてくれた。


「はい。あちらの机の上に準備が整っております。」


ミシェナが示す方向を見ると、夕食が置いてあった。

とても美味しそうな匂いがする。

舞はその匂いにつられるように机の前に行き、驚いた。


「夕食ってこれ全部か?みんなで一緒に食べるのか?」


机の上には1人で食べきることができないほどの量の料理が並んでいる。


これを1人で食べきるのは無理だ。

でも残すのはもったいないし……。

それに、こんなに豪華な料理が私一人のために並ぶはずがない。

やっぱり何人かが一緒に夕食をたべるのだろう。


舞がそう結論を出した時、ミシェナが少し驚きながら教えてくれた。


「いえ、そのお料理はすべてマイ様のためのものでございます。」


「これ全部だと!?どう考えても多くないか?」


「ですが、太子妃様は普通にお召し上がりになったそうなのですが……。」


「は?美羽が普通に食べた?」


知らなかった。

美羽の胃袋は化け物並みに大きいのだな。

私ではこの量を食べきることはできないだろう。

ぜひともその胃袋を分けてほしい。


「はい、ですからマイ様たちの世界でもこれくらい出てくるのが普通なのではないですか?」


「いや……、私一人でこの量は無理だ。食べきれる気がしない。」


舞は力なくそう言い、自分のおなかに手をあてた。

そしてミシェナはそれを聞いてミシェナは目を丸くした。


「まさかこの量すべてを召し上がるおつもりだったのですか!?」


「美羽は普通に食べたのだろう?」


「い、いえ、そういう意味ではなく……。」


ミシェナは言葉をにごした。

その様子を見て、ようやく私とミシェナの考えていることが食い違っているのに気がついた。


普通に食べるって、好きな分だけ食べて多い分は残すというもったいない食べ方のことか。

歴史的には王様とかがやっていたらしいが実際に見たのは初めてだ。

そういえば、美羽は小食だったな。

こんなに食べられるはずがない。

ああ、あんなことを考えた私が馬鹿だった。

穴があったら入りたい……。


「すまない。私の考えていることがおかしかった。この量を残さずに食べるはずがないよな。」


顔を真っ赤にしながら舞が言うと、ミシェナはほっとした顔になった。


「いえ、こちらこそ考えが食い違っていることに気づくのが遅れてしまって申し訳ございません。」


「いや、ミシェナは悪くないよ。私もこんな馬鹿をやったのは久しぶりだ。」


ああ、なんでこんな間違いをしてしまったのだろう……。

本当に恥ずかしい。


舞はどことなくほんわりした空気のなか食卓についた。

そして料理を見まわす。


へー、こっちの世界の料理はヨーロッパの方の料理と似ているんだな。

よくわからないものもあるから、ひとえには言えないけど……。

それにしてもいちいち高級感が漂ってる気がする。

少なくとも日本で私が食べていた料理よりも数段豪華だ。

まあ、ここが王宮だから当り前なのかもかもしれないが。

それに種類も多く皿が所狭しと並べられている。


「これは、こちらの世界で一般的な食事の仕方です。チキュウでは種類別に持ってくると窺ったのですが、そうした方がよろしかったですか?」


恐る恐るといったその様子から美羽がこのやり方を気に入らなかったのだろうということが、なんとなく分かった。

美羽はお嬢様だからな。

気に入らなくてもおかしくはない。

私は食べられればいいのでそんなことを気にするつもりはないけど。

それに単なる居候だしな。

居候にまでこんなにすごい料理を出してくれることに感謝をしても、怒ることなんてまずありえない。


舞はミシェナを安心させるために微笑んだ。


「いや、このやり方で大丈夫だ。ただ、私はこの世界の食事のマナーを知らないのでおかしかったら言って欲しい。」


「わかりました。間違えておられたらお教えいたします。」


ふわりと微笑んだミシェナを見て舞は安堵した。

あらためて料理を見まわし、見たこともない料理を手に取った。

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