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どちらが王妃?  作者: kanaria
第1章 人間の大陸編
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3 美羽の決断

美羽は舞の困った表情を見た後、一度周りを見渡してから再び王太子を見た。


「もし私が王太子妃にならなかったらどうするのですか?」


それに対して王太子は眉間にしわを寄せる。

そして第2王子は何となく辛そうに美羽から視線をそらした。


「もし君がならなかったら私はこの国の貴族の女性を正妃に迎えるだろう。」


「貴族の女性ですか……。」


「そうだ。元々は貴族の女性を正妃にする予定だったのだが、それが嫌で無理を言ってこの召喚をした。それが駄目だったとなれば周りの言う事を聞くしかない。」


「そうですか……。王太子殿下は貴族の女性が嫌だったんですね。ですが、私ももしかしたら王太子殿下がお嫌いな貴族の女性と同じかもしれませんよ?」


「いや、そんな事は無いだろう。私が嫌なのは王太子妃という地位に執着し、その地位を得るためなら何でもするような女性だ。今までの感じから君はそんな事をしないと予想した。」


……媚を売ってくるのが嫌いとかここで言って大丈夫なのか?

ここに居る貴族の中にはそういうことをやっている奴もいるだろうに。

ほら、現に顔を真っ赤にしてる奴らも多く居る。

まあ、私が心配する事でもないし良いか。

それに、国王も自己中心的のようだから大丈夫なのかもしれない。


舞は王太子の発言に疑問を覚えるが、受け流すことにした。


美羽の結婚相手になるかもしれないという意味ではしっかりとどういう人物か見ておかなければいけないのだろうが、美羽なら何とかなりそうな気がする。


「たしかにそうですが、私も裕福な家の生まれなので貴族の方々とそこまで変わらないかもしれません。」


「ふむ、そうだとしても私は君の事が気になっている。さきほど舞が言ったようにな。ひとめ惚れというやつだろう。」


「そ、そうなんですか?」


美羽はその一言ひとことで真っ赤になった。


あともう少しで落ちるな。

王太子殿下って女性を落とすのが上手いんじゃないか?

これで後一言言ったら美羽は絶対に結婚するって言うだろう。

恐ろしすぎるぞ、この威力。

顔が整っているぶん一般人よりさらに威力が上がっているのかもしれない。


「そうだ。そして、この召喚には少し条件を付けてもらっていてな。私と性格や顔などの相性がいい人物が召喚されるようになっている。私も初めは半分疑っていたが初対面にして気になる人物がいた。君はどうだ?私では嫌か?もし嫌でなければ私の正妃となって欲しい。」


「…………。私で良ければ正妃にならせていただきます。」


先ほどよりも真っ赤になった美羽がそう言うと、貴族の方からはあまり歓迎しないような空気がこぼれた。

しかし国王は当然といった表情になり、第2王子は安堵の表情を浮かべている。


これは、これからが大変そうだな。

まあ、美羽なら何とかなるだろう。

頭も悪くないし。

顔もいいから私なんかが正妃になるよりよっぽど良いだろう。

本人も言っていた通りにメイドや執事もいるような金持ちの家だしな。

人を使うのにも慣れているだろう。


舞がそんな事を考えていると王太子が貴族たちを見た。


「では、これで決まりだな。私の正妃はミウとする。良いな。」


「「「御意。」」」


美羽が正妃になると言ったときに歓迎しないようだった貴族たちも、美羽が正妃になるのを認めた。

中にはあからさまに顔を歪めている人物もいたが、どうやら表だって反対はしないようだ。


この召喚をする前から正妃に対して何か決まっていたのだろうか?

そうでなければ嫌そうな貴族たちは普通に反対しただろう。

となると王太子殿下の頭が悪くないのかもしれない。

それならばこの国の未来も想像したよりはなんとかなるのかもしれない。

いや、この国の未来を考える前に私はどうすればいいのだろうか?

いくら結婚する気がなかったとはいえ、王太子殿下との縁談を断ったのだからここに私の居場所はないだろうし……。

ふむ、どうするべきか。


「あの、私は正妃になるとしても、舞はどうなるんですか?」


舞の疑問をいち早く察した美羽が、王太子に尋ねた。

その言葉を聞いて、ここに居る全員が舞の存在を思い出したようだ。

王太子が再び舞を見る。


「本来は1人だけ召喚して正妃になってもらう予定だったから決まってないが、ここに呼び出したのは私たちだから、衣食住は保障しよう。さすがにミウと同じに扱うのは無理だが、出来るだけ配慮しよう。それでいいですよね、父上。」


「こんな奴にそこまでする必要はない。今すぐ追い出すべきだ。」


「そうですか……。」


王太子は国王の言葉で、舞をどうするかを考え直しているようだ。


これはやばいかもしれない。

ここの知識も無いままに追い出されたらさっき考えたように野垂れ死ぬだろう。

だが正妃の話を断ったのは私だしな。

どうしようもないか。


舞も諦めかけている中で思わぬところから、助け舟が出てきた。


「わたくしは王太子様の意見に賛成いたします。呼び出したのはこちらなのですから責任を持つべきです。」


「そうですな。わたしも突然知らない場所で生きていけと言われたくはないですし。」


「いや、私は反対だ。素性も分からない奴を王宮に入れるべきではない。」


「そうだ、ヴィルカイン王国はこの大陸で一番力を持っている国だぞ。その王宮に身元の知れない奴を入れるなど許されるはずがない。」


「違いますね。一番力を持っているヴィルカイン王国だからこそ呼び出しといてそのまま追い出しては国の名折れになります。」


「若造はだまっとれ。お前の意見なんぞ聞いてない。」


「若者を舐めるなよ。伯爵。」


「これは侯爵失礼いたしました。ですが、あの若者は王太子の意見に賛成したんですよ!」


「ふん、私も王太子の意見に賛成だぞ。」


「な、なぜですか!?」


「もし、彼女を放り出せば他の国に貴重な異世界の技術などをとられる可能性があるではないか。」


「もう1人の方がいればいいのでは?」


「貴殿では話しにならん。」


……。

これは、すごいな。

私を追い出すかどうかというだけでここまで白熱した言い争いになるとは。

しかもここに居る貴族の四分の三ぐらいが争ってるようだし。

それにしてもこの様子だと私の面倒を国が見るべきだという人の方が多いようだ。

とはいえ、うるさいな。


討論の原因である舞でさえうんざりしていると、ついに導火線の短そうな国王が激怒した。


「静かにしろ!!余は五月蠅うるさいのが嫌いなんだぞ!」


国王のその言葉であたりは静まり返る。

本来はここで王の決定を告げるのだろうが、国王は静かになった事に満足するだけで次の言葉を告げようとはしなかった。

そのため、王太子が王の代わりに告げる。


「貴公らの言い分は分かった。では多数決をとりたいと思う。選択肢は2つだ。マイを王宮に置くか追い出すか。どちらかに挙手をしろ。まずは、追い出した方が良いと思う者。」


貴族たちの中の3分の1ぐらいが手を挙げた。

それを第2王子が正確に数えていく。


「挙手した者が12人です。」


「では、王宮に置いた方が良いと思う者。」


今度もまた第2王子が数を数えていく。

そして、数えている途中に周りを見、負けた事を悟った貴族たちが顔を歪めた。


「挙手した者が19人です。また、挙手しなかった者は4人となっています。」


「王宮に置くという意見が多かったため、マイは王宮に置いておく事にする。王宮に置いておく理由も王太子妃候補の片割れだった者だからではなく王太子妃の身内だからとすれば問題はないだろう。」


「「「御意。」」」


その後は反論も特になく、舞が王宮に居る事に決まった。


まさか、この国での決め方は多数決なのか?

中世っぽいと思ったのだが意外過ぎる。

国王は反対していたというのに国王の意見よりも多数決だとは。

もしかして議会とかも存在するのだろうか。


舞の中には強い驚きが残った。

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